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一.その名は茶々

徳田莉音(りのん)、二十五歳。中学生の頃にとある大河ドラマにハマって以来、戦国時代の姫君オタクとなっていた。その中でも彼女が愛したのは、かの有名な『浅井三姉妹』であった。


幼くして二度の落城を経験して両親を失い、男たちの(まつりごと)の間で翻弄され、引き裂かれた悲しくも気高く生きた三人の姫君。

長女・茶々。次女・初。三女・江-―彼女らにすっかり魅了されてから、三人が主軸となったその大河ドラマが終わってからも彼女らが登場するドラマは欠かさずチェックしていた。それくらい大好きだった。

だけどまさか――仕事帰りにトラックにはね飛ばされて、気がついたら『浅井三姉妹』そのものになっているだなんて。そんなの想像できるわけないでしょう!!



茶々。それが今の私の名前だ。家族は一つ下の妹・初と、四つ下の妹・江、そして母の市。そして、母が再婚したことで義理の父となった柴田勝家だ。

ここまで聞けば分かるだろう。私はあの『浅井三姉妹』の長女へと転生した。このままいけば母と義父を失い、仇である豊臣秀吉の側室になる。そして鶴松と秀頼を産んで『淀殿』と呼ばれるようになり、最期は両親と同じように落城して散るのだ。そんなの絶対に嫌

まさか自分がラノベでよくある『転生』を遂げるとは思わなかったけど、前世はたった二十五年の人生だったのだ。結婚どころか交際すらしたことがなく、まだまだやりたいことがたくさんあったのに。転生しても非業の死を遂げるなんて、絶対に嫌だ。今度こそ幸せな結婚をして、布団の上で家族に看取られて死ぬんだ。


さあ、そう決めたならまずは絶対に回避しなきゃいけないことがある。豊臣秀吉の側室になるわけにはいかない。秀吉の側室になって秀頼を産んだことで、茶々は――私は権力の中に巻き込まれていくことになるんだから。

というか、秀吉って茶々を愛してたわけじゃないんじゃない? ドラマで茶々に惹かれてたのだって、結局は母上に似てたからって感じだったし。ってことは母上が生きていれば――そこまで考えて、私はその考えを慌てて打ち消した。だって、それだと母上を身代わりにすることになってしまうから。そもそも母上は父上を死に追いやった秀吉を憎んで嫌っていたし、このままでは側室にされると悲観したのも自害を選んだ理由だった。

この先北ノ庄城(この城)は落ちるはずだ。もしそこで私が母上をうまく説得し、一緒に城から逃れたとしてもおそらくは秀吉の側室にされる。そうなったら私の死亡フラグは回避できるだろうが、母上は地獄のような苦しみを味わうことになるだろう。それを考えると母上はここで自害を選んだほうが幸せなのかもしれない。だけど、そうなれば私は母上の面影を見出した秀吉に目をつけられて側室にされるに決まっている。



――もしかして、けっこう詰んでるんじゃない?



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