夢から始まる地獄
「……し、もしも~し」
「……ん? 誰だ?」
誰かに声をかけられた少年は、真っ白な世界で目を
覚ます。
「あ、気づいたね~、始めまして~」
「お前名前は?」
「まぁまぁ……俺はお前らが呼ぶ神? いや、世界が違うだけだからただの人間なのか、いや……」
「話が終わったなら寝て良い? 俺眠いんだけど」
あからさまに不機嫌になった少年に、声の主は少々
焦り気味に話を続ける。
「あ……すまないすまない、なら手短に行こう、君に
素晴らしいギフトをあげるよ、まぁ半分呪……」
「何か言ったか?」
「いや、こっちの話だ、それじゃお休み~」
男の声を聞き眠りにつく。
少年が目を覚ますと、部屋にある天井が見えた。
「……夢か」
「ハラス~おきなさい、今日から3年生でしょ」
「はーい」
母親の声で思い目蓋を開くと、ベッド近くにある机を持って起き上がる。
机にかかっているランドセルを見ながらリビングへ向かう。
「おはよ~」
「おうハラス、おはよ~」
リビングで椅子に座ると、ハラスの父親が笑顔で挨拶をする。
「そうだ、今日寿司食べに行くか?」
「良いの?」
「あぁ、今日はお前が3年生になった記念だ、好きな
だけ食え~」
「やった~」
頭を撫でられて笑顔のハラスに、母親が朝食を出す。
「はい、今日は入学式なんだから早く食べなさい、もう7時よ」
母親の言葉を聞くと、ハラスと父親が急いで朝食を
食べる。
「ふふ、2人共急いで食べてね」
急いで食べると2人は玄関に向かう。
「7時15分、まだ間に合う」
父親がドアに手をかけるとけたたましいサイレンが
鳴る。
サイレンを聞いた父親はハラスをリビングに
連れ戻す。
「あなた、何が――」
「とりあえず携帯食料と水だ、買いだめが何処かにあったはず」
「じゃあ俺も取ってくる」
3人が家中の携帯食料を集めていると、外から大量の悲鳴が聞こえてくる。
「え……何が」
「俺が外を見てくる、お前はハラスを守ってくれ」
父親が釘バットを手に取ると、息を殺して玄関の方へ歩いていく。
「ハラス……大丈夫だか――」
「逃げろー!!」
母親が慰める途中で、父親の悲鳴混じりの命令が
聞こえる。
「化け物がいる!! 早く逃げ――」
「ハラス、早く逃げ――」
父親の声が消えて少しすると、後ろにいた母親の声も消える。
恐る恐る振り返ると全身を黒い装甲に覆われた蛇が
母親を頭から丸呑みにしていた。
「母さん……父さん……何が」
そう呟いているハラスの元に、父親を食ったであろう蛇が近付いてくる。
「く……来るな、来ないでく――」
ハラスの叫びも虚しく、蛇に頭から食われてしまう。
(最悪だ……今日は楽しい1日になるはずだったのに)
そう考えながら蛇の中で死を受け入れると、ベッドに寝ているような感触が背中に現れる。
目を開けると、ハラスは自分の部屋にいた。
「へ?」