7. 耕造おじさんの料理
7. 耕造おじさんの料理
佳代子達は、耕造おじさんの家に戻ると、
夕食までの間、きりの部屋ですごす。
きりは裁縫が得意で、彼女が縫製した『作品』の説明を聞きながら、
時間をつぶすと、夕食との声が女中からかかる。
きりと佳代子は、女中に案内され、小料理屋の一室に入ると、
すでに料理が配膳されていた。
2人で座って待っていると、鉄二、ちよ、亮一が部屋に入ってくる。
鉄二が、
「耕造の料理はうまいからな。良い思い出になるぞ。」
という。
やがて、耕造が部屋に入ってくる。
耕造は、
「久しぶりに鉄二達が来てくれたので、腕をふるって作るから、楽しみにしてくれ。」
といい、また調理場に戻っていく。
料理は照子も手伝っているとのこと。
鉄二の、
「ではいただこう。」
という合図と共に、料理に箸をつける。
料理は前菜の木の芽のクルミ和えや、キスのつみれ汁、コチの天ぷら等、
様々な料理が次々と出てくる。
鉄二はこれら料理を見て、
「まるで小料理屋ではなくて、料亭レベルだな。
あいつがこんな料理を作れるなんて、驚いた。」
と失礼なことをいう。
ちよは、
「こんな素晴らしい料理を提供してくれて感謝しなければ行けないわよ。」
という。
料理は、その後も次々と部屋に運ばれ、
最後にわらび餅とお茶が運ばれた時点で、
耕造と照子が部屋にやってくる。
耕造は、
「どうだった、今日の料理は?」
と聞かれる。
鉄二が何かを話そうとするのを、ちよは遮り、
「どれも素晴らしい料理で、私たちに提供していただいて、本当にありがとう。」
とお礼を言う。
それに対し、
「ちよちゃんは、礼儀正しいからな。
鉄二兄が言うことは、大体想像できる。」
と、耕造が言う。
「そんなことないわよ、鉄二義兄さんは、素直に感謝してくれていると思うわよ。」
と、照子おばさんは言う。
佳代子は、鉄二を見ると、
少し気まずそうな顔をしていた。
その後佳代子も、耕造おじさんと照子おばさんにお礼を言う。
その後、亮一兄さんの一言がまずかった。
「鉄二おじさんにしては、努力して作っていたと思う。」
当然、ちよに激しく怒られていた。
料理が終わり、30分位、
耕造さん、照子さん、順三、きりちゃんと歓談した時点で、夜9時をまわっていた。
「こりゃいかん。谷の町への最終電車の時間だ。」
と鉄二が時間を確認し、慌てる。
「たしか、最終電車は9時40分だったな。
今日は訪ねてきてくれてありがとう。
電車が開通し、いつでもすぐに来れる様になったので、
また遊びに来てくれ。」
と、耕造おじさんが言う。
佳代子たちは、耕造たちにお礼を言い、
港町にある駅に向かう。
駅の改札を入り、ホームに出ると、
谷の町行き最終2両編成の電車に乗る。
電車の中で、父が、
「また、耕造の家に遊びに行こう。」
といった一言が、なぜか佳代子の中で、
印象に残った。