表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
帝都にある谷の町の住人  作者: うしねことその身内
7/21

6. 港にあるホテル

6. 港にあるホテル


外国航路の船が数隻停泊している桟橋は広く、

荷物運搬の大きな台車や車、そして荷物自体も桟橋にたくさん置かれていた。


佳代子と順三は、引き続き荷物を眺めていたが、

亮一は船に興味があるようで、1人で船が停泊しているところへ近づいていく。


佳代子は桟橋におかれた木箱や荷物を注意深く眺めて、


「順三さん、この荷物も舶来品なのよね?

どこから来たの?」


と質問をする。


「これは、上海だな、上海。

この町は大陸から来た人が、多く住んでいるんだ。

人が多いということは、そこからの荷物も多くなる。

当然だな。」

と、なぜか自慢げに順三は答える。


その上で、順三は木箱の側面を指さす。


「ほら、ここに書かれている文字は日本語でも、英語でもないだろ?」


「そうね。」


「そしてこっちはサンフランシスコだ。」


「順三さん、英語読めるの?」


順三は自慢げにうなずく。


その時、野太い声で、順三と佳代子に対し、


「おい、そこは危ないぞ。あっちの方へ行け!」


荷物を運搬していた、荷主に雇われていた30代くらいと思われる男が、2人に対し注意する。

2人は、船を眺めていた亮一のところへ行き、

亮一と一緒に、しぶしぶその場を立ち去る。


「少し怖かったわね。」


「こんなこと日常茶飯事だ。」


「怒られたのか?」


距離は離れていたが、かろうじて2人が注意を受けていたことが耳に入っていたらしい。


港から街中へ再び戻ろうとしていた3人は、

順三の提案で、重厚な石作りの5階建ての中庭のきれいなホテルの前に行く。


このホテルは外国人が多くでは入りし、洋式の中庭からは、大きな桟橋が良く見える。


入口のドアのところには、ドアマンがいて、客が入ろうとすると、ドアの開け閉めを行っている。

順三たち3人が入ろうとすると、ドアマンが、


「両親はどこにいるの?ここに宿泊しているの?」

と聞いてくる。


「いや、個々のホテルの庭が美しいので、親戚の子に見せてあげたいんだ。」


ドアマンは黙って、ドアを開け、

「このロビーをまっすぐ行くと、中庭が良く見えるところがある。」

と教えてくれる。


佳代子たちはドアマンにお礼を言い、中に入る。


ドアマンが説明してくれた通り、ロビーを歩いていくと、中庭がある。


中庭は西洋風の生垣と噴水があり、テラスもある。

そのテラスでは、食事を取っている人が見える。


佳代子は、

「まるで、海外に来たみたい。ここで食事をしてみたいわね。」


その言葉に対し、順三は、


「ウチは小料理屋を営んでいるが、俺もそう思うよ。

ここは港町なんだから、日本食だけでなくて、いろいろな料理を食べて、勉強してみたい、というのが本音だ。」


「耕造おじさんは連れて行ってくれないの?」

亮一が質問をする。


「そうだな、『うちは純然たる小料理屋だ。舶来の料理を食べて何になる。』って、よく言っているからな。

その考えは親父に反対だな。いろいろな料理のいいとこどりをすればいいじゃないか、と思う。

そういうところが、親父は頑固なんだよ。」

と順三は言う。


しばらくして、

「今のこと、親父には言うなよ。」

と順三は言い、念押しされた。


3人は、このホテルの中庭を見学した後、小料理屋に戻った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ