第一話 最初で最後の親子げんか
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―アウラン王国郊外の比較的大きな街トワナムにある小さな魔装具屋で一人の少年が13歳を迎えた。誠に喜ばしいことである。しかしどういう訳か店の居住スペースには剣呑な空気が漂っていた。
「どうして僕が冒険者になることを認めてくれない!」
少年は半泣きで訴えた。
「何度言えばわかる、メラン。お前には冒険者としての資格が無い」
男は続けて厳かに告げる。
「冒険者になるには優れた肉体や能力といった才覚を持った人間である必要がある。お前は何一つ持ち合わせていない」
「そんなことやってみないと分からないじゃないか。今まで練習の機会すら奪ってきたのは父さんだろ!」
メランと呼ばれた少年は叫ぶ。メランはこれまでの人生13年間にて、野に出て剣を振るう、ギルドを訪ね魔法の適性を調べる、といった冒険者になるために必要な過程を悉く禁止されてきたのだ。
メランに厳しい態度を取る男、アズル・エリュトロンが過剰なまでの冒険者嫌いである理由は、冒険者であった妻、つまりメランの母親がメランの幼少期に任務の失敗から死亡し、遺体すら残らなかったという経験にあるらしい。アズルはメランが10歳になった時に冒険者の危険性を教えるためにこの話をしたようだが、かえって逆効果となりメランは母親のような優れた冒険者になることを熱望するようになったのだ。
「分かってくれ、お前に危険な目に遭って欲しくないんだ」
アズルは一転、優しげにメランを説得しようとする。これまでのメランであればその言葉を聞き入れただろうが、今の彼には全く響かない。彼は知ってしまったのだ。
「嘘ばっかり。父さんは僕を手放したくないだけでしょ」
アズルの顔が引きつった。メランは続ける。
「僕について街の大人たちが話していたんだ。みんな僕を哀れんで、引いていたよ」
「よそはよそ、うちはうちだろ」
「僕がいなくなると父さんは日常生活すら立ちいかなくなる。違う?」
「ぐっ」
アズルは言葉を詰まらせた。魔装具師として店を開いているアズルは雑用や家事などをほとんどメランに押しつけているのだ。その甲斐あってメランは年不相応の生活力を手にしているが、その分失った物も多い。言うまでも無く、「夢のために使う時間」や「将来への希望」といった形の無い、しかし年頃の少年にとっては何よりも重要な物である。
「確かにそのような面があったのは事実かもしれない。それでもお前を心配して」
「もういいよ!」
メランは遮った。
「僕はもう13歳だ!自分で人生を決めることができる!もうあんたなんて父親じゃない!」
そう言い放つと呆然としているアズルを尻目に家を飛び出した。初めての反抗に虚を衝かれ家出を許してしまったアズルだが、すぐに酷薄とした笑みを浮かべた。
「冒険者になるには家族の承認が必要だ。あいつが冒険者になれることは決して無い」
臆病な人間に拾われた子犬は、強固な首輪の締め付けによる痛みから自らに鋭い牙を持つという事実を忘れた。それでも反逆の爪だけは守り通して育った犬は、遂に絶好の機会を得て、首輪を断ち切り森へ逃げた。その先に待つものとは…
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