プロローグ 決戦の前哨戦、それもまた知られざる一つの決戦
初めまして。ゆーきまんです。初の連載作品ということで色々緊張しておりますが付き合って下さると嬉しいです。是非楽しんで下さい!
「今はそんなくだらない私情で時間を使っている余裕は無い!世界の危機なんだぞ!」
少年は目の前の男を睨み、激昂して叫ぶ。その体は強力な毒に蝕まれている。
「世界がどうなったって知ったものか。そんなものの価値など、たかが知れている。それに危機と言っても支配者が変わるだけだろう。今重要なことは俺とお前、親子の問題だ」
男は世界の存亡がかかった瀬戸際であくまで息子の妨害に固執するようだ。
その瞳には紛れもない狂気が宿っている。
「俺が英雄になるのがそんなに嫌なのか?」
少年は嘲笑を含んで問いかける。
力も仲間も手に入れた彼は、以前のように父親に縛られる存在ではない。
少年は続けて言う。
「言っただろ。あんたはもう俺の父親ではない。従う道理はないんだ」
「何という言い草だ! 誰がお前を育てたと思っている! 何度も言うがお前に冒険者の資格など無い!あるはずがないのだ!」
話が通じない。
息子が救世の英雄になるくらいなら世界は滅んだ方が良いと本気で考えているようだ。
(殺すしかないのかっ)
今の少年の魔力では、殺傷を目的としない妨害魔法ですら一般男性一人程度容易に押し潰してしまうだろう。しかし、この空間から抜け出すには目の前の男を最低でも気絶させる必要がある。心優しき少年は逡巡したが、遂に父親を鋭く見据え覚悟を決めた。
(せめて一思いでっ…)
「黒槍乱葬!」
少年の背後に現れた魔方陣から無数の黒い光線が迸り、立ちはだかる男を貫いた。
世界に残された時間は僅かである。
ここまで読んで下さりありがとうございます。補足しておきますと、これは大分終盤の展開を先取りしております。後で来ていただくとこのプロローグの「意味」が分かると思います。もし今後の展開が気になる方がおられましたら、どうか是非とも評価やブックマークをお願いいたします。