見えぬ危機
死亡フラグ回。
死亡フラグってなかなか立っているのが分からないらしい。
それは本人不在の時だって起こり得るのだから。本日も絶好調に死亡フラグはたっていた。
「おいおいおい。聞いてないっすよ? あっしも参加しなくちゃいけないんっすか?」
「任されたんだ。仕事はサッと終わらすぞ。」
「分かりやした。やりゃあ良いんすよね!? あっしは最高の芸術家。圧勝で勝って見せますよ!」
「いや。ゲスト出演なんだから、別に勝ってくれなくても良いぞ。」
「何なんすか!? 最初から負ける気持ちでいたら、勝てるもんも勝てないっす!」
「テミスさんの話し私と一緒に聞いていたよな・・・。」
はあ。思わずため息が漏れてしまう。テミスさん、一筋縄ではいかないですよ。やはり芸術家って話すの疲れるな。
選考時間が始まったので、阿修羅のような顔をしたアラクネを送り出す。
「え~。本日ご来館頂きました、来賓客のみな様方並びに・・・」
開会式のセレモニーと共に、オリンポス財団の芸術祭が開幕した。
今回の芸術祭では、なかなかの収入が見込める。世界各地から王やら大商人を招いているからな。
うん。芸術って良く分からんもんだな。
どれもみんな上手く見えるし、みんなにぞれぞれ興奮と、歓喜、悲哀などを会場の皆様へお届けしていた。絵とか、彫刻とか。
しかし、中でもひと際だった群衆の渦がある。
うむ。流石だな。誰もが認める美しい芸術作品をやつ、アラクネは生み出していたのだ。
「どうっすか? この溢れる芸術性は!」
そこには虹色に彩られた、サンゴ礁の群生と海底に差し込む光のカーテン、そして色とりどりの熱帯魚。
「コンセプトは花より団子向けの芸術っすね! これ飴細工なんで、食えるんす!」
「何て綺麗なんだ!」
「素晴らしいぞ! 私はこれまでこんな凄い芸術を見たことないんだ。凄すぎて、視界が・・・。ぅうう。」
「と、とても人間業でない。神の所業だ・・・。」
あ、なんかすみませんっした・・・。
人々から大絶賛を受け、堂々たる受賞を飾り、大いに芸術祭を盛り上げたのだが、大作を売ろうとはせずに、皆さんに試食してもらう流れとなった。
そして大赤字で迎えた閉会式。アラクネは最高にハッピーだった。
幕裏で事態のまずさにやっと気付いたメデューサさん。顔面蒼白でもはや万策尽き、天を仰いでいた。
「もう、全てが終わりましたよ。サトゥーさん。(涙)」
「あ、どーも。お疲れっす!」
「ああ。明日から冥界生活か。」
「何でっすか? 人々みんな喜んでいて、大成功っすよね?」
「せめて、牢獄は一緒にしてもらえるよう頼もう。(全てを諦めた顔)」
「アラクネ。短い期間だが、世界は楽しかったなあ・・・。」
「そ、そんなあ。メデューサさん。そんなあ!」
「そんなの嫌っす~!!!(大泣き)」
「お邪魔してもいいかしら・・・。」
「ダメっす! 今お取込み中っす!」
「お、お前は。貴様よくも・・・。」
そこには因縁の相手、知将の女神がいた。
「条件を飲むのなら、今回の件私から援助させて頂きます。」
「最高神に試練を設けたいの。協力してくれるかしら?」
「その話、詳しく聞こうか。」
「ダ、ダメっす! こいつは信用ならないっす!」
銀髪の釣り目の女神の赤い目が妖しく輝いていた。
登場人物紹介♪
アラクネ(元凄腕の織職人):あっしが一人称。砕けた口調が素のよう。
メデューサ(元女王):姉御肌のクール美女。
エコー(元こだまニンフ):片言で喋る。癒し系美少女。
テミス(正義の女神):最近では頼もしいディスリ女神になっている
新キャラ♪
アテナ(智将の女神):アラクネを蜘蛛にした元凶。世界で一番信仰されている、美しい女神。




