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トキシックマン  作者: 最近、眠い。
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ラッキースケベ

日に日に長くなる陽光が、間近に迫る夏の訪れを知らせる。

田舎では田に張られた水が朱い陽を反射して燃えるように光っていた。


I県立海野うんの高校は、辺り一面を田園に囲まれている。

 

校門に通ずる唯一の道も両側を田に挟まれていて、近くにあるものといえば送電用の大きな四角鉄塔、トタンの日除けがかかった腐りかけの木製ベンチと、その傍にポツンと置かれた小さなバス停だけ。


そんな一本道を歩く少年がいた。

少年はつい先日行われた「海野高校6月中間試験」にて、学校始まって以来の全教科最低点記録を叩き出し、学校中に名を轟かせたのだ。


無論、試験終了後は補修のオンパレード。

すべての補修を終える頃には夏休みが目前に迫っており、バカ真面目に参加した少年以外の生徒はほぼ全員、街に遊びに出ていた。


「ハァ〜〜ァァ〜〜ッ・・・」


少年の口から大きなため息が出る。


「結局、何一つわからんナァ・・・」


少年はここ数日かけて復習した座学を何一つ理解っていなかった。


2023年の梅雨はすでに明けたが、空気はまだ湿り気を帯びて、肌にまとわりつくような暑さだ。

大粒の汗を流しながら、朱い陽差しに当てられて歩く少年の足元には大きな影ができていた。


「(同じクラスの人…?)」


ふと前を見ると、数メートル先のバス停には少年と同じクラスの少女が立っていた。

補修をするほど悪い点は取っていないはずだから、部活か何かで帰りが遅れたのだろう。

汗で制服のシャツが透けており、少しブラが見えている。

少女は赤みがかった綺麗な長い髪を靡かせて、大きな胸を揺らし、暑そうに手で顔を煽ぎながらバスを待っていた。


クラスでの少女は社交的で友達も多いらしく、頭脳明晰で常に成績は学年トップ。

水泳部では1年にしてレギュラーになるなど目覚ましい活躍ぶりだが、少年はそれ以上のことを知らなかった。


ぼーっと少女を見ながらーーー特に大きく揺れる胸を見ながらーーー歩いていると、少女もこちらの視線に気がついたようでチラリとこちらを見た。

少年は思わず立ち止まり、微かに顔を赤くして俯く。


「(おっぱい好きの変態だと思われたくない…ッ)」


少年は少し気まずくなり、何事もなかったことにして歩き去ろうとした瞬間・・・


「うぉわッ!」


少年の背中に、下から巻き上げるような熱く湿った突風が当たった。

驚く暇もなく、風は目の前の少女の方に向かっていき…


「ひゃっあッ!」


刹那、少女の方を向いた少年の眼前には、見たこともないほど小さなリボンがついた水玉の布地が広がった。


舞い上がったスカートを咄嗟に押さえる少女は滑稽であったが、「七年目の浮気」のモンローのように可憐でもあった。

少女のあっけに取られた顔は見る見るうちに羞恥と焦りに変わり、大きな目を潤ませて少年の方を見る。


少年はというと、最初こそ初めて見る母親以外の下着に理解が追いつかなかったが、しばらくすると茫然自失となり、顔を赤らめたまま少女をじっと見つめた。


二人の中に流れる時間が、いつもより少しだけ長く感じられた。

その時間には、普段の少女からは想像できないような声や表情、雰囲気があって・・・



この日、少年・碇矢シキトは、少女・志村ミコに、恋をした。


我らのトキシックマンを狙う悪き神が送り込んだ最初の使者は、恐怖・ベースボールマン!

恐るべき暴力性を撒き散らして迫る奇人・ベースボールマン!!

白昼の街を揺らすトキシックマンの活躍は・・・


次回トキシックマン「TOXIC BOY」に御期待下さい。

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