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クラークの初恋 2

クラーク視点続きます。

 僕とマーガレットの婚約は、お互いに行き来して良い関係を築くための時間が、きっと少ないんだろうというのはすぐに気付いた。

 同じ貴族の令息達と話をしていると、婚約者がいる友人もいたから、自分との比較も容易に出来たからだ。

僕達の場合は、互いの屋敷を行き来することが少し難しい面があった。

マーガレットは元々男爵家の令嬢だという。今は伯爵家に引き取られているけど、本来ならオキシペタラム伯爵家と婚約出来るわけもない。でも、アイビー伯爵家の血縁ということもあるし、伯爵家で上位貴族として学んでいるところだというから、婚約出来たわけだ。

 それもあって、上位貴族としての勉強を今詰め込むようにして学んでいる途中だという話だ。だから、ある程度の目処が立たない限りは、自由にはさせられないということだった。

その為にこちらからももっと会いたいとも言えないでいる。将来僕と結婚する時に、ちゃんと伯爵家の夫人として振舞えるようにと学んでいるところだと言われてしまえば、僕だってもっと勉強をがんばるしかなくなってしまって、マーガレットに会えないことがとても淋しくて仕方ないという状況なのだった。


 そんな僕達ではあったけど、マーガレットに対する悪い感情を向けてくる令嬢達から守る為にマーガレットと一緒に出掛けるお茶会は相変わらず少ないままだった。

マーガレットがいないお茶会では相変わらず僕に周囲には令嬢達が多く集まってくる。中でもマーガレットを悪く言う例の女はまるで自分が本当の僕の婚約者だという態度で僕に付き纏っていた。正直うんざりしていた。だから、ちょっとした悪戯心だった。でもその結果については、悪意しかなかった。

 相変わらず僕に寄りかかる様に近付いてくるから、距離を取るために手を取っているだけなのに、その女は僕にしな垂れかかってくる。本当に邪魔で仕方ない。

そんな本音は決して見せることなく、僕はいつものようににこやかな笑顔の仮面を見せる。


「ねぇ、そんなに僕のことが好きなの? だったら、庭に出て僕達だけになる?」


 そんなことをその女だけに聞こえるように耳打ちした。見る間に頬を染めて、こちらを上目遣いで見つめ返してくる。気持ち悪い。そんなことを思いながら、僕はお茶会の会場となっている屋敷の庭園の奥へと女を連れて行く。

 何度となく招待されていることもあって、人があまり来ない場所も知っている。今お茶会の会場となっているのはこの屋敷内にあるサロンだ。だから二人きりになれる。

 僕はガゼボを通り過ごした先にある小さな池まで来た。ちょうどそこには二人で座るのにピッタリなベンチがある。そこに並んで座る。

女は何を期待しているのか、まだ頬を染めたままだ。本当気持ち悪い。


 僕はゆっくりと女のほうに手をのばし、頬に手を優しく添えた。すると、女は何を思ったのか、すっと目を閉じた。

 何を期待したのか理解出来たから、当然のようにそれに応えてみせた。ただし、僕が触れるのは唇じゃない。頬に添えていない手を軽く握っては開き握っては開き、を繰り返してから中指と薬指の指先を揃えて女の額にゆっくりと軽く触れた。もちろん僕は顔を近付けてはいたけどね。指を額から離す時、前髪を少し払う。埃を払うように。

 女がウットリとした表情でゆっくりと目を開けた。その瞬間、僕は微笑んだ。


「イケナイコト、する?」

「え?」


 この女にも実は婚約者がいる、というのを知っている。この女はそれを僕に隠しているけど。なのに、マーガレットのことを貶めるだけ貶めしておきながら、自分は他の男に熱を上げている。やはりマーガレットと比べようもないくらいに、格下の女じゃないか。マーガレットはずっと清楚で愛らしいままだ。

 お前なんかと雲泥の差なんだよ。そう言ってやりたいのをぐっと堪えて、ただ笑ってみせる。それからその女の腕を掴み僕に覆いかぶさるように引いてやる。丁度いいタイミングで足音が聞こえてくる。

僕達のいるベンチを視界に入るくらいの場所に人が来たのが見えた。女の方はその事に気付いていないようだ。

 僕に覆いかぶさっているようにしか見えない状況で、しかも誰かがこちらを見ている状況になった。別に誰が見ていてもいいんだが。で、肝心なこの女は顔を更に赤く染め上げながらこちらを見つめている。何を考えているんだか…。

マーガレットだったら、慌てて離れようとするんだろうな、と思ったら口元が少し緩んだ。間違いなく慌てる様子は可愛いだろうし、この女よりも愛らしい顔で頬を染めているのが容易に想像出来た。だから、この女に向けた笑みではなかったが、勘違いは…させただろうと思った。

 そう思った瞬間、女が僕に体を預けるように抱き着いてきた。ああ、足音が大きくなり始めた。


「わっ! 待って! どうしていきなりこんなことするの!?」


 足音の人物は僕が声を上げたことで、予想しているような状況とは違うのを理解したようだ。歩いていたはずが走り始めていた。そして、僕の声に驚いた女が上半身を起こした。それと同時に小さな悲鳴が聞こえた。


「…ひっ! ど、どうして…ノーマン様がいる、の!?」

「それを聞きたいのはこちらだよ。一体これはどういう事なんだい?」


 僕は酷く困惑した顔をして、この女から逃げるように急いでベンチから離れ、唐突に現れた令息の方へと近寄った。すると令息は僕を庇うように女と対峙してくれている。予定通りだった。

 いきなり現れたこの令息は、女の婚約者だ。そして、僕の友人の一人。女と婚約する前からの。つまりは、女との関係よりも僕との信頼関係のほうが勝ったわけだ。

 正直に友人には今の状況を打ち明けていた。相談という名で、友人の婚約者の振舞を晒していたわけだ。政略結婚となる関係だから、幼い頃からの関係は大切なものだ。それを自らダメにしたのは誰なのか、一目瞭然だった。

 女に向ける友人の顔は、酷く強張っていたようにも思う。でも、鋭く射貫くように睨んでいるようにも見えた。だから、女は狼狽えて、どう言い繕うか困っているようで、酷く無様だった。


「僕とクラークが友人なのを君は知っていると思っていた。そして、クラークには最愛の婚約者がいるのも知っていると思っていた」


 友人がそう口火を切る。女の表情が強張った。多分気付いただろう。僕がマーガレットのことを避けているのではないことを。何より…。


「…クラーク…様、の…最愛? あの…田舎者、が?」


 友人は婚約者の女を見るのも嫌だという顔をさせて、軽く顔を背けながら言葉を続けた。それと同時にこちらに視線を向けながら、少し苦笑もしていたが。


「多少は…クラークの言葉足らずなところはあったかもしれないが、ちゃんとクラークとかの御令嬢が一緒のところを見ていれば、クラークの気持ちなんて分かるはずだよ。

それなのに、君は僕の友人の婚約者を貶め続け、もっと言えば僕の友人に懸想し続けた。その結果、僕の友人に不埒な真似をしようとしていたわけだけど、どう言い訳するの?」


 女は咄嗟に言い訳が出てこなかったらしい。僕がこの女を誘い出してこの場所に誘導した。これは間違いない事実だ。だから、それを言うだけでも違うのに、言えない。だって言えば、その後自分が望んだ疚しい気持ちすらも曝け出す必要がある。けど、言わなくても結果は同じ。どうするんだろうね?

 僕がこの女にまるでキスでもしたようなあの行為は、額に虫が止まっていて、それを殺すため、はらうためだと言えば通る話。実際にあの時額に触れたのは手、もっと言えば指。

そして虫を除けたように前髪を払っている。

勘違いしたなら、それはこの女が勝手に願望をそう思い込んだだけのこと。僕のせいじゃない。

 いつまでも言葉の出ない女を前に友人は盛大な溜息を吐いた。


「分かったよ。理由も言えない状況だったわけなんだね。君がどういう気持ちでクラークに付き纏っていたのか僕が知らないとでも?」


 追い詰められるだけの女は友人の冷たく言い放った言葉に、蒼褪めるだけ。


「少なくとも僕は君じゃなく友人のクラークを信じている、とだけ言っておこう。それから、近いうちに婚約は解消ではなく、破棄になると思う。当然有責事項としては、君の今日の行為が原因になるだろうね」


 最初、女は涙を溜めていたが、今はもうその涙が零れ落ちるというのではなく、とめどなく流れ落ちてきていて、正直見苦しいと思える顔になっていた。

友人の側に来た女は、必死に婚約破棄だけは止めて欲しいと懇願していた。解消は受けるから、破棄だけは避けたいと訴えている。そんな様子を見ながら、僕はただただ愚かだな、と思うだけだった。

人を貶めるから、今のような状況になっているのに。それに気付かない愚かさ。


 そうして、僕は自分の側で僕のマーガレットを一番に貶める女を排除することに成功した。この後、この女がお茶会で見ることもなかったし、成人後夜会でも見ることはなかった。

それでも、僕の側にやって来る女は尽きることがない。自分の容姿を正しく理解している僕としては、この後もマーガレットを見下すような女達を排除するために、ただマーガレットを守る為に、動くだけ。

 僕はただ最愛のマーガレットを守る為に、マーガレットとの関係を他の令嬢達に悟られないようにただひたすらに隠していくだけ。

ただマーガレットを傷付けようとする者を排除していくだけ。その為に、今は少しだけ彼女との距離が開いているけど、結婚してしまえば関係ない。だから、今だけだ…。

お読みいただきありがとうございます。


クラークについて言うと、全く書くつもりがなかった人物なので、理解出来ないものを目の前に置かれて、それを見ながら文字変換し続ける感覚しかないです。

本当、理解出来ません…。

クラークの思考回路が本当に理解出来ないまま書いてるので、正直なところ文章としてちゃんと成立しているのか分かりません。

「これどうなのかな」と思うような点が色々あるので、その辺りを説明出来る範囲では書いてますが説明不足になることは理解しながらの作業です。


なんとかクラークがどうしてそういう行動をするのかをちゃんと書くことが出来ればいいな、とは思いますが。

自信がないです...( = =)

分かってるのは、マーガレットのことが大事だということくらいです。

こんな子に育てた覚えはありません! みたいなキャラクターには違いないんですが、明後日の方向に行ってしまうタイプみたいで、作者が付いていけてない現実がツラい。

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