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プロローグ

 誰も来ないような場所、王立貴学院の旧学舎の裏庭にいる。

無駄に綺麗な顔立ちで、王子様らしい容姿のために、王家の王子殿下達よりも麗しいと言われている婚約者は、そんな場所に私を連れて行く。逃げられないように手首を掴まれて。

逃げ出したい気持ちを堪えるしか出来ない。怖い。私は婚約者のことが嫌い。気持ち悪い。

気付けば小さな丘の上にある大木まで来ていた。婚約者が私に何かを問い掛けて…私がそれに答えて、一体何がしたいのかと私は思いながら、でも…これを切っ掛けにして婚約解消が狙えないかと考える。


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そして大木の手前で右腕を掴まれる。嫌だ。とその手を振り払おうとするけれど、男性の力を振り切れるわけもない。私はあまりに非力だ。


「放してください!」

「どうして僕が嫌いなの?」

「手を放してください!」


 互いに意思の疎通がまるで取れない会話をする。婚約者は右腕を掴んだ手を緩める様子もないまま、気付けば私の腕を大木と彼自身の左手で縫い留めていた。

婚約者から逃げたいだけの私は必死にその場から離れようとするけれど、大木に背を預ける形で婚約者の左手が私の右手を、そして彼の右手が私の左頬に触れる。

一瞬背中にぞわりとした冷たい感覚が走った。


「マーガレット、僕のモノになってよ。もうずっと待ってたんだ。君が僕のところに落ちてくるのを。

嫌と言う程見せてあげたよね? 誰もが僕を特別だと言うのを。だから、マーガレットだけを僕の特別にしてあげる。僕のモノになって」


 意味が分からない。私に貴方と関わらないように言ったのは、貴方自身でしょう?

戸惑いしかない私の頬が婚約者の爪で軽く傷を付けられた気がする。小さく痛みが走った。私は多分血の気が引いていたと思う。それと同時に婚約者の顔が近付いてくる。婚約者から逃げるように顔を背ける。

 痛みを感じた辺りに婚約者が触れたのが分かった。何が触れたのかは分かりたくもなかった。再び背中に走るぞわりとしたものが、今度は強く長く尾を引く。

頬が濡れた。ゆるゆると這う何かが気持ち悪い。


「…はな、して…くださ、い」


婚約者の顔なんて見たくもない。どうせ逃げられない。でも、抗わないのは私の矜持が許さない。


「僕のモノにならないのなら、この手で僕のモノにするだけだよ」


 婚約者の手が私から離れた。でもそれは一瞬のことで、私はまた大木に背中を預けている。彼の短剣がまるで蝶の標本針のように私を縫い留めている。

 私が自身の胸に走った激痛と、熱と、それから肺が血で溺れていく息苦しさと、呆気なく力が抜けてくずおれていくまでは未だ意識はあったけれど、その後急激に熱が体から失われていくのと同時に痛みが分からなくなった辺りで意識が飛んだ。

初めての投稿になります。

色々と至らないこともあると思いますが、よろしくお願いします。


一部台詞を削除しましたが、内容の変化はありません。

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