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異世界の大魔王様、乙女ゲーの悪役令嬢に転生す  作者: ハーメルンホイッスル
3/3

チャート2

 落馬して頭に怪我を負った日から数日後、エメロード(ドヴァー)は脆弱で貧弱な体を鍛えるべく、屋敷の庭に出ていた。


「まずは走り込み、筋トレしてから剣の素振りと魔力量の増加訓練だな」


 動きやすい服を着たエメロードは、軽く柔軟した後、屋敷の周りを走り始めた。

 エメロードが済んでいる公爵家はかなり広く、400mトラックのグラウンド場よりも一回り大きい土地なので、走るにはもってこいの場所であった。


「ダッシュ!‥‥スロー‥‥ダッシュ!‥‥スロー」


 全力走りとゆっくりした走りを交互に繰り返し、疲れたら歩きながら休むという行為を挟んで、屋敷の周りを走っていると、屋敷の入り口に一人の男の子が立っていた。


「エメ?何してるの?」


「ルイ兄様?見ての通り走っております」


 エメロードは、入り口にいた男の子次男のルイの前で、膝を交互に90度に上げる歩法をしながら会話し始めた。


「え?いや、何のために?」


「え?体を鍛える為ですけど?」


「そうじゃなくって…うーん…なんていえばいいのか‥‥あ、こう言えばいいのか!なんで鍛える必要が?」


「‥‥‥美しい体を手に入れる為です!」


 質問されたエメロードは、少しの間をおいてルイに嘘を吐いた。

 何故嘘を吐いたのかと言うと、この世界の貴族女性が戦場に出る事は、禁忌とされていたからであった。

 エメロードの記憶を確認して知った事だったが、この世界の貴族女性は読み書き、計算、縫い物そして家庭管理の勉強等をするものであり、城壁の外に出て剣を振り回す事などもってのほかだった。

 勿論、全ての貴族女性がそうであるとは言えないが、武器を持って何かをするというのは冒険者や傭兵の低階級の者達だけだった。

 そんな世界だから、エメロードは「大罪武器を取りに行く為、鍛えてるんです!」とは言えず、美の為にと嘘を吐いたのだった。


「なるほど!未来の為に頑張っているんだね!エメはすごいなぁ!そんな年で未来を見据えているなんて!」


「ルイ兄様もどうですか?」


「いや、僕は運動が苦手だからいいよ」


「そうですか。では、失礼します」


「気をつけてね」


 会話を終えたエメロードは、ルイに見送られながら走り込みを再開し、4周した所で走り込みを終了した。

 走り込みが終った後、次にエメロードは手に木剣を持ち、素振りを始めた。

 剣道の素振りの様に、丹田(へその下3センチ)に力を入れ、振り上げた木剣を息を吐きながら振り下ろした。

 又、一歩進んで下がると言う歩法もしながら木剣を振り続けた。


「あら?エメロード?今度は何をしているの?」


 木剣で素振りをし続けていたエメロードに、声を掛ける物が現れると、エメロード内心「またか」と思いながら声のした方に視線を向けた。

 そして、その視線を向けた先にいたのは母親のローズだった。


「素振りをしています」


「え?素振り?女の子がなんで?」


「今から体を鍛えて将来綺麗な体になる様にしています。母様もどうですか?二の腕がタプタプしなくなりますよ?」


「え?そうなの?!私も…ああ、ダメだわ。この後用事があるのだったわ…次にしておくわね」


「そうですか、分かりました」


「怪我には気をつけるのよ?」


「はい」


 何処かに向かって行ったローズを視線で送った後、今度はメイドのリリーがエメロードに近づいて来た。


「エメロードお嬢様、お水です」


「ああ、リリーありがとう」


 最後に全力で木剣を振り下ろし、息を整えた後、リリーが持って来た水を飲んだ。


「フゥー…」


「エメロードお嬢様、お風呂の準備が整っておりますので、どうぞ」


「ありがとう」


「はい、ではお風呂場へ向かいましょう」


 リリーと一緒にお風呂場へと向かい、脱衣所でリリーに服を脱がされたエメロードは、半身浴と言っていいほどの水量が入った石造りの風呂に浸かった。


「あ゛あ゛あぁぁぁぁ・・・」


「お嬢様?はしたないですよ?」


「つい出ちゃったわ…」


 エメロードが湯に入ると、まるでおっさんが湯船につかった時に出すような声を出してしまい、その声を聞いたリリーは、驚いた表情をしながらも、エメロードに「はしたない」と窘めた。


「髪を洗いますので頭をこちらにお願いします」


「はいはーいっと」


 エメロードは、湯船につかりながらリリーに頭を預けると、リリーはエメロードの髪を石鹸を使って洗い始めた。


「では、流しますよ~」


 石鹸の質が悪く、あまり泡立たなかった泡をリリーがキレイに流すと、髪の毛がギチギチになった感覚がありエメロードは、洗われた自分の髪を触りながら眉を顰めた。


「この石鹸…髪に必要な潤いや油分まで洗い流してるね…」


「そうですか?一応、貴族御用達の高級な石鹸なのですが…」


「う~ん、必ずしも高級な物がいいとは限らないよ?」


「えぇ!?そうなんですか!?」


「うん」


 急に大声を出して驚いたリリーに対しエメロードは、その大声を出したリリーに驚きながらも頷いて答えた。


「ずっと使っていたので問題ないと思っていたのですが…あったんですね…」


「う~ん…このままだと禿る可能性もあるね…」


「えぇ!?そこまで!?」


「これは何とかしないとね…」


 エメロードはその後、リリーに体を洗われると湯船で十分温まり、風呂から上がり自室へと戻って来た。


「何とかしないととは言ったけど…石鹸の作り方なんて分からないしなぁ…」


 エメロードは、ベッドに大の字で寝転びながら考えていると、一つ思いつく方法があった。


「理外の力…使うしかないか…」


 理外の力とは、神が設定した「魔王又はそれに類するモノは必ず勇者に倒される」という世界の理(システム)から脱却する為にドヴァーが得た力だった。

 この力を使えば、世界の理から外れた存在[神]を完全に滅ぼせる事ができ「万物を知る」という事も容易くできた。

 ただ、この力を得る為には、多大な犠牲を払う必要があるのだが、それでもドヴァーは、理外の力を得て大魔王になる道を選んだ。


「石鹸の為にあの痛みに耐えなければいけないが…はぁ~…割に合わないけど仕方がない…」


 エメロードは、意を決して理外の力を使うと全身に強烈な痛みが走ったが、エメロードの頭の中に、石鹸についての情報が大量に流れ込んできた。

 ひたすら痛みに耐え続け、石鹸についての情報を知ったエメロードは、理外の力を止めた。


「ハァ…ハァ…これで…シャンプーやリンス、ボディーソープ等の事が分かったぞ…他にも食器用とか衣類用とかあるんだなぁ…」


 洗剤という物を知ったエメロードは、満足しながらも真っ白く燃え尽きたような表情を出し、そのまま気絶した。



 ~b~



「リリー?ちょっと買ってきて欲しい物があるのだけど?」


「はい?なんでしょうか?宝石ですか?ドレスですか?それともお菓子ですか?」


「いや、昨日話した石鹸の事よ。いろいろ調べたから作ってみたいの」


「え?!もうお調べになったのですか!分かりました!大至急買いに行って来ます!」


 翌日、走り込みや素振りの鍛錬を終え、自室に戻って来たエメロードは、リリーに買い出しを頼んだ。


「ここに必要な物を書いたメモがあるから。あと~お金は金貨4枚(銅貨1枚約120円、銅貨24枚で銀貨1枚、銀貨38枚で金貨1枚なので金貨4枚は約43万円)で足りる?余ったらお菓子買ってきて、そのお菓子で一緒にお茶にしましょう」


「えっと…乾燥ハーブ類にナツの実(ココナッツのような実)、イリーブの油(オリーブオイル)、ミツビーの蜜(蜂蜜)、ミツビーの…白蜜?白蜜って何ですか?」


「ローヤルゼリーという物なんだけど、無かったら蜜だけでいいわ」


「分かりました!すぐ行って来ます!」


 リリーは、上機嫌になりながら、その場から消える様に動き、街へと買い出しに向かって行った。


「ぬぅ…あの動き…やはりアサシン…」


 リリーの音を出さずに動く身のこなしを見て、見事な動きだと関心した後、エメロードはシャンプー作りの準備を始めた。


「リリーが帰って来るまでに、この石鹸を削って粉末にしておこう。えっと…包丁と網目の細かいざるが必要ね…厨房に全部あるかしら?」


 エメロードは、他に必要になる物を考えながら、厨房に向かって行った。

理外の力は、大魔王→人間だと使えますが、人間→魔王だと使えません。何故か?と問われれば魂が関係しているとだけ今は言っておきます。それと、この力は肉体に宿るのではなく、魂に辿る物です。




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