チャート1
ドヴァーが大魔王になるより以前、魔王時代それも魔王として襲名した日に、四天王の一人である死霊術士のドリエルが魔王襲名の祝いにと、献上品をドヴァーに見せた時から話は始まった。
「魔王ドヴァー様、この度の魔王襲名おめでとうございます。この度お祝いの品をご用意いたしまたので、どうぞお納めください」
「これは?」
「異世界の漂流物でございます。この品は、我らが召喚魔法を研究している時に偶然発見した物で、我らと異なる世界、更に言えば我らの世界よりも遥か文明や技術が発達している世界から流れて来たと思われる物です」
「‥‥なるほど、この世界より文明が発達した世界からね…で?それはどう使うのだ?」
「それが…その…わかりません…」
「は?」
ドリエルはドヴァーの不興を買ってしまったと思い込み、慌てて頭を下げ跪いた。
「お許しください!何分我らの持つ技術より遥か高度の技術で出来ている為、動かし方がわからないのです」
「ほう?つまり貴様は、動かし方が分からない尚且つ何の役に立つか分からないゴミを、魔王様に献上するというのか?」
四天王の一人、獣人達を束ねる獣王ダンテがドリエルを睨みながら言うと、滝のような汗を流し始めたドリエルが、跪く姿勢から土下座の姿勢になった。
「いえ!決してそのような事は!ただ、これは異世界が存在しているという確かな証明の品なのです!なので、途轍もない価値があり、これを詳しく解明できれば我れら魔王軍の力が上が「これはぁぁぁぁぁ!」…え?」
必死に弁明を述べるドリエルの後ろで、献上された品を近くで見ていた四天王の一人妖魔女ササリア・ミウが、薄くて半透明の青い箱に絵が書かれている物を頭上に掲げていた。
「これは、死にげーで有名な隻腕!ああ!こっちは、超有名なファンタジーのXVI!さらには、ドラゴン依頼11spに固有ジャンル名があるRPG!他にもいろいろ!え?!こ!これはぁぁぁ!「ラヴァーズ・トゥ・フィールド」!!‥‥ハ!………」
その場にいた全員が、ミウの上げた言葉やテンションが上がった行動に驚き、目を大きくしてミウを見つめると、我に返ったミウは、青い箱を元の場所に置いて定位置へ戻ると、何事起きなかった様な雰囲気を出し始めた。
「…フハハハハハハ!どうやらミウは、それの事をよく知っている様だ。ドリエルよ!ミウと協力してそれを完全に使える様にして見せろ!」
「は‥‥は!必ず!ご期待に応えて見せます!」
ドリエルは、ドヴァーに深く頭を下げた後、後ろへと下がり、定位置に戻った。
「ふん、ミウに救われたな…その事心に刻んで置くといい…」
「ああ…そうだな…」
定位置のダンテの横に戻って来たドリエルに、ダンテが呟く様に言うと、ドリエルは深く頷いた。
その頷きを横目で確認したダンテは、一歩前に出るとダンテの配下の獣人メイドが鎧と剣を乗せた台車を押して来た。
「次は私から。この度魔王襲名真におめでとうございます!私が用意したのは鎧と剣でございます。魔王様の2性同一体の御身合ったデザインに仕上げました」‥‥
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そして、残りの四天王から祝いの品を受け取った後、各部族から送られてきた祝いの品を紹介されて行くと夜となって行き、ドヴァーは自室に戻った。
「あ゛あ゛あぁぁぁ…疲れたぁぁぁ…」
自分のベッドに倒れる様にして横になった後、仕事で疲れたおっさんの様な声を出してゴロゴロし始めた。
ドヴァーはしばらくベッドでゴロゴロしていると、自室の扉をノックする音が聞こえた。
「入れ」
「失礼します」
ドヴァーの自室に入って来たのは、煽情的な格好をしたミウだった。
「ドヴァー様、ゲーム機の準備が出来ましたのでお持ちいたしました」
「…ゲーム機?」
「はい、ドリエルが献上した物でございます」
「ああ、あれね。もう使い方が分かったの?早いね?」
「ええ、これら必要なのは電気…つまり雷魔法なので、サンダースライムにこのプラグをブスッとすればいいとドリエルに教えた所、見事起動しました。更には、空間魔法と先月ドリエルが考案した映像装置をかけ合わせてモニター…新たな映像装置の開発に成功したのです」
「あ~なんか言っていたね。この映像装置が完成すれば遠くにいる物と顔を合わせて会話できる~とかなんとか…よく分からんが…よく出来たもんだな」
「私が、案を出したらすぐに取り掛かって完成させましたよ。まったく、脅威の技術力と言うしかありませんね。では、魔王様私が背もたれ役をするのでこちらに来ていただけますか?」
「んあ?何するんだ?」
「まず最初に私がプレイするので、魔王様は私に寄りかかりながら画面を見ていてください。魔王様もきっと気に入るはずですよ」
「ふ~ん…お前がそういうなら従ってみるのも一興か…どれ…」
ドヴァーは、ミウの前に座った後、頭をミウの胸に預けると、ミウはドヴァーを後ろから抱きしめる様に手を前に出した。
「それでは、始めます」
ミウは、コントローラーの中心にある謎のマークを押すと、ゲーム機が起動し映像装置に何かが映り始めた。
「おお!これは美しいな…」
「ふふっ…そうですね。(はぁ~魔王様のにほひ…クンカクンカ…はぁーたまらん!視線を下に下げれば…おっほ!豊満なお胸!パネェな!この大きさ!揉みしだきてぇ…我がままボディすぎでしょ!ああぁぁぁぁシュキシュキ魔王様!こんなドスケベボディしてながら、ふたなユリッ〇スで妊娠させたりできるなんて最高でしょ!今すぐ押し倒したいわぁ…っは!ダメダメ!だめよミウ!魔王様を立派なゲーマーにするんだから!そして「ラヴァーズ・トゥ・フィールド」を熱く深く語り合うの…だから我慢よ!ミウ!)
目がハートになりながらも自制したミウは、ドヴァーを一人前のゲーマーにするべくゲームを進めた。
その次の日も、またその次の日もミウは、ドヴァーを胸に抱いてゲーム進めて行くと、ドヴァーは次第に興味を持ったのか、自らプレイする様になっていった。
「ドヴァー様、その先に白蛇が居るのでそこから飛び降りてアサシネイトしてください」
「ほんとぉ?…そぉい!あ!いた!…ヨッコイショー!」
ミウの教育も順調に進み、ドヴァーはミウの手助けを借りながら、いろいろなゲームを攻略して行った。
「ドヴァー様、その雷獣は弾丸節約のスキル付けて斬裂撃てば簡単に倒せます」
「え?うっそでしょ!大剣でがんばってたわ…」
ドヴァーは、魔王としての役割をこなしながら、時間を見つけてはゲームをプレイし続け、ついに…
「よし!このゲームもトロコンしたぞ!」
「お見事です魔王様!」
立派なトロコンゲーマーへとなった。なってしまったのだった。
そして月日は流れ…
「大魔王様!勇者達がせめてきただ!」
「え?!あいつらが来るのは1週間先じゃなかったのか!?嘘だろ!このゲームまだトロコンしてないのに!?」
魔王から大魔王となってもドヴァーは、一日の役割を終えた時や、魔族側の美姫達の情事後など、時間を見つけてはゲームをプレイし、やり込んでいた。
そして、勇者達が一週間後にこの城に到達するという部下の報告を聞き、その一週間で全てのやり込み要素をクリアしようと、ゲーム機を起動した時だった。
部下の一人が、慌ててドヴァーの自室に入り勇者に関する報告すると、ドヴァーは悔しい顔をしながら名残惜さそうにコントローラーを戻し、魔王の玉座へと向かって言った。
~b~
そして現在、幼女となったドヴァーは、机に向かいながらできる事と出来ない事を確認していた。
「ドヴァー時代の力は…あ、使える!けど、よっわ…なにこれ?種火かよ…」
人差し指を伸ばし、その先から黒い炎が出たが、ろうそくの灯よりも小さなものだった。
「大魔王になった時得た理外の力は…使えt…ごぉぁああぁぁ!…」
世界の理から外れた力を使った時、全身に強烈な痛みが走り、ドヴァーは椅子から転げ落ちて悶え始めた。
しばらく床で悶えていたが、徐々に痛みが引いて行くと、ドヴァーは机の縁に手を掛けて這いずる様に起きあがった。
「この体では、貧弱過ぎて使えないという事か…修練が必要だな…」
肩を上下に揺らす呼吸をしながら、椅子に座り直した後、羽ペンを手に持った。
「次は、イベントの確認だな…」
過去の記憶を頼りに、この後起こるイベントやサブクエスト、そのサブクエストで必要になる物、アイテムが置いてある場所を書いて行った。
しばらく書いていたが、紙一枚では足らなかったので、別の紙を取って書き始めた。
「よし、これでいいか…あ、そういえばあのイベントもあったな。チャートにちゃーんと書いておかなければ…」
ダジャレを言っても、その場に反応する人はいなかった為、少し寂しさを感じたドヴァーは、その後無言で補足事項も書き足して行った。
「完成!我ながら見事なチャートが出来た。でも待てよ…これ、大罪武器を回収するタイミング無いじゃないか!?どうすんだこれ…」
ドヴァーは、見事な計画表だと自画自賛して見返してみると、その計画には穴があった事に気が付き頭を悩ませた。
「大罪武器」とはその名の通り傲慢、憤怒、嫉妬、怠惰、強欲、暴食、色欲の7つの武器でラヴァーズ・トゥ・フィールドにおけるバランスブレイカーと言わしめる最強の武器であった。
更にこの武器は、とあるアイテムを使い浄化するという行為をすると、7つの美徳となり更に強化されるやり込み要素の一つだった。
本来なら何度も周回して武器を獲得し、浄化をするのだが、ドヴァーの場合プレイ回数は一回なのでどうしようもなかった。
「…あーどうしようか‥‥‥‥ん?あ!閃いた!そうだよ!今から物語が始まるまで大分時間があるから、その間に取っておけばいいんじゃないか!こんとんのじょのいこ!フハハハハ!」
高笑いするが、ドヴァーはいまだ気づいていなかった。
人間の体が、元居た世界の人間より弱すぎるという事を…
チャートを書いた紙が、3か月後にとある場所で必要になる、重要な書類だった事に…
ドヴァーの高笑いを聞いて心配した母親に、叱られるまで40秒前だという事に。
ドヴァーは、まったく気づいていなかった。
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