1話 田中太郎は普通である モノローグ
こんなの書いたら頭が変になる。
普通について考えようとしただけで一瞬意識が飛ぶ。
僕の名前は田中太郎。
17歳の普通の高校生。
テスト前には普通に勉強し、普通に横道にそれ、普通の成績をおさめる。
普通に毎日運動だってするし、流行りのゲームだって普通にプレイする。
毎日普通の友人と普通に普通な学生生活を楽しんでは、普通の帰り道を普通に真っ直ぐ帰ったり、たまに普通に寄り道したり。
友人との関係は普通に良好で、普通に不仲、つまりは普通ってことだ。
人生の全てを左右するような普通に重大な悩みを普通に打ち明けるほど普通に大切な親友もいなければ
部屋の隅で貯まっていく一粒の埃のように、いてもいなくても気にならないし分からないような普通にどうでもいい友人も普通にいない。
勿論家族も普通だ。
普通の公務員で普通に共働きの両親は、普通に夕方や深夜に帰宅する。
普通の中学生で普通に普通な容姿をしている普通に僕や家族にとってかわいい妹は、普通に流行りの音楽を聞き、普通にカッコイイ俳優に普通に叶わぬ恋を普通にしている。
全てが普通。
家族も友人も学校も、容姿も服のセンスも身長体重も、人間関係や運、貧富、何もかもが普通だ。
これほどまでに普通で普通に素晴らしい普通の人生はあるのだろうか?
いいや、普通にない。
人生普通が一番だ、と言うか普通であるべきだ。
普通に平等で、普通に不平等でなければいけない。
だが、このように普通で普通に素晴らしい普通の人生を普通に邪魔するような普通に普通じゃない人間や動物、現象が普通に存在する。
これらの普通に普通じゃない存在が普通に存在すること自体が普通であると、僕自身が普通に認めることができたのなら、僕は普通に苦しまずにすんだのだろう。
あぁ、何故人は普通に普通じゃないモノを求めるんだ。
普通じゃない幸運、普通じゃない富、普通じゃない名声、普通じゃないほど美しい女。
普通に誰もが心の奥底で普通じゃないそれらを普通に欲している。
これから始まる物語は、普通な僕がただ普通に生きていくだけの普通につまらない普通の話だ。
でも、この世界には普通な僕と違って、普通に哀れで普通に狂った普通に普通じゃないモノが普通にウヨウヨしているのかもしれない。
だから、もしかしたら普通な僕が普通に普通じゃないモノに普通に出会ってしまうことがあるのかも。