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モラトリアムの檻  作者: ナナイ
エピローグ
64/66

第63話 エピローグ①

 三月五日、土曜日。


 卒業式のあった日の週末、叔母さんの家を訪ねた。


 朝七時に家を出て、電車と新幹線を乗り継ぎ、十時過ぎに目的の駅に着く。大きなターミナル駅で、休日ということもあり、多くの人でごった返していた。駅近にはビルやデパートが並び、住んでいる街よりも都会的な景観だ。


 本来であれば、そこからさらに在来線に乗り換えるのだが、三十分に一本しか出ていないような不便なものだからと、叔母さんが車で迎えに来てくれた。シルバーのコンパクトカーでやって来くると、簡単な挨拶を交わし、車で一時間弱走った。海に面した県ではあるが、車は反対の山道を越えていく。


 向かうところは、人口五万人くらいの市で、辺りに何にもないというわけではないが、田舎だった。電車などの交通面も不便で、叔母さん曰く「車が無いと生活できない場所」らしい。


 道中の車窓からは、視界を遮るような高い建物は見られず、町の背景に溶け込むように、連なった山々が周りを囲っている。山々の上半分は白く、季節を感じさせた。雲のない冬晴れの空がそれをより引き立たせている。


 このあたり住んだことはないが、母も父もこっちが出身で、小さいころから、年に一、二回は来ていた。両親が亡くなった後も、叔母さんが連絡をくれ、一人で来ることもあった。墓参りもする。


 車の中で、卒業式に来てくれたことへのお礼を言うと、おばさんは笑顔で卒業を労ってくれた。「内緒で言ってごめん」とか「香澄ちゃんのお母さんに誘われてね」とも言われた。


 一軒家、二階建ての家に着くと、どうやらお寿司の出前を頼んでくれていたようで、叔母さんと叔父さん、そして従兄弟にあたる小学生と保育園の女の子と一緒に食べた。


 その後、叔母さんと叔父さんは、これからのこととして、お金の話を切り出した。今まで全てを把握していたわけではない。アパートの家賃は払ってくれていたし、学費の扱いも管理してもらっていた。それから、両親が残してくれたお金や、保険についてもだ。細かい話も難しい話もあり、すぐに自分で管理するのは対処しきれなさそうで、とりあえずは、と二人の勧めるままに頷いて、都度相談させてもらうことにした。


 そして、今日は帰ることにする。「泊まって行けばいいのに」と言ってくれるが、申し訳ないと思い断った。


 そして、叔母さんの車に乗り、そのまま駅へは向かわず、両親の墓参りに行った。その墓石を前に、ふと、卒業式での保護者代表の言葉が思い起こされた。


 そのときは瀬川くんのことで頭がいっぱいであり、あまり残る言葉ではなかったけれど「卒業する子供を見れて幸せ」と、そんなことを言っていた。父親も母親も、あの卒業式を目に入れたかったろうか。でも、その前に中学だろうか。そのとき、すでに両親はいなかった。叔母さんは、その思いを少しでも組んで、来てくれたのかもしれない。


 墓参りを終えると、そのまま駅まで送ってもらい、お礼を言って別れた。

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