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モラトリアムの檻  作者: ナナイ
2月26日(土)
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第20話 2月26日(土)⑦

 朝井さんと市川さんの待っているレーンへ戻ると、瀬川くんと朝井さんは目を合わせ、お互い何か言おうとしているようではあったが、何も言わず視線を逸らしてしまった。


 席に座ると、朝井さんが隣で「ごめんね」と小声でささやいた。そして直後、何かに気付いたように、


「ていうか、この臭い……」


 タバコの臭いに気付いたのだろう。すかさず瀬川くんを睨むように見た。


「まさか……」

「そんなに気にするようなことじゃねぇよ」


 瀬川くんは朝井さんと目を合わせるも、またすっと視線をそらした。


「……泰樹くんを巻き込まないでよ?」

「大丈夫だよ。なあ」

「うん、まぁ」


 あっけらかんとした瀬川くんとは違い、朝井さんは冗談めかした表情ではない。当然だ。僕がなんとなく受け入れてしまったのは、やっぱりちょっと違うのだ。


 とはいえ、ここでその問題を追及することにはならなかった。しかし当たり前だが、さっきまでのことなかったことになるわけではない。


 どうするべきなのか。もしかしたら、このまま何も触れずに過ごしても時間が解決する可能性があるかもしれない。だけど、また同じことが繰り返される可能性だってある。今回の場合は、どうなのか。


「じゃあ二ゲーム目やろうぜ、香澄からだぞ」


 瀬川くんが言った。

 市川さんは少し不安な表情をしている。瀬川くんの態度が腑に落ちない朝井さんへ、何か声をかけようとしていたみたいだが、


「ん、やろっか。あたし投げるよ」


 朝井さんは笑顔をつくって立ち上がった。市川さんに気を遣わせまいと思っただと感じた。


 そうしてゲームは進んだ。瀬川くんは普段通りといった感じで、気軽に話しかけてくる。僕と市川さんはそれに合わせるように、ちょっとぎくしゃくしながら返す。


 一方で朝井さんも、普通に話を返していた。さすがに進路の話題を出すことはなかったが、スコアを見ながらゲームの流れだったり、雑談だったり。ちょっと表情が硬いと思わなくもないが、それは、僕や市川さんがいるから感情を押し隠している部分なのだろうと思う。


 そうして、それ以上の問題が起きることはなく合計二ゲーム目が終わった。


「じゃあ、ここまでにしようか」


 そう言ったのは朝井さんだった。


「この後はどうする? 香澄ちゃん」


 市川さんが朝井さんへ訪ねる。


「うん、ご飯でも食べて帰ろうか」


 カラオケはやめるようだった。まぁ、そうなるのだろう。それよりも、落ち着いて話ができる場を考えたのだろう。少し怖くもあるが、本当にちゃんと話せれば良い。心からそう思う。

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