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モラトリアムの檻  作者: ナナイ
2月25日(木)
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第11話 2月25日(金)③

 それから、瀬川くんの家、朝井さんも住んでいるマンションへ向かって歩く二十分程度の間、話をした。「高校では同じクラスにならなかったね」と言われて、「そうだね」と返す。そんなたわいもない話をする機会すらなかったのも事実だった。


 そんな中、朝井さんがおもむろに突っ込んだ話を入れてくる。


「泰樹くんさ、最近、いっちゃんと会ってないんだって?」


 いっちゃん――市川さんのことだ。


 朝井さんと市川さんはとても仲の良い友人だった。学校の中でも、二人が一緒にいるのを何度も見かけた。


「いっちゃんから聞いててね、泰樹くんと付き合ってるってこと。最近会ってないんだってことも」


 朝井さんが、じっとこちらを見る。


「うん、まあ……」


 つくり笑いで視線を逸らす。


「そっか、まあ野暮なことだよね。ごめんね、気にしないで。ただ、いっちゃんを見てると、あたしたちにみたいに喧嘩したわけじゃないみたいだし、どうしたのかなって思ったから」


 お節介、と言う言葉が頭に浮かんだ。朝井さんは、市川さんが僕にメールするだろうと見越した上で、市川さんから僕の携帯の番号を聞いたのかもしれない。そこから話が広がればいいとも思って。だけど、市川さんからのメールは、本当にただの伝言でしかなかった。


 ふと、昔のことを思い出す。小学校に上がったばかりのころ、雷が断続的に鳴り響く、荒れたある夕立の日だった。朝井井さんには三つ離れた弟がいて、雷に泣いていたその弟をうちに連れて来たことがあった。お互いの家の両親が不在だったのもあるし「みんなでいれば怖くないでしょ」と、弟にそう言っていた。さらには隣の部屋の瀬川くんまでも呼んできた。


 そのとき一人でおびえていた僕は、朝井さんを頼もしいなと感じた。同時に、自分の情けなさも。ただ、後になって考えると、朝井さん本人も雷を怖がっていたはずだった。中学の頃、一緒に下校して夕立に振られたとき、泣きそうな表情で「雷は嫌い」と言ったのだ。


 自分のこと以上に周りのことを考える朝井さんは、今も変わっていないのだろう。

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