百日草
日常は変化するもの。
それは成長を促すものなのか、遮るものなのか。
目紛るしい変化の中、立ち止まる事を許さない毎日に答えを見つけれる人になりたいと感じ書いてみました。
百日草、読み終わってから花言葉をお調べ下さい。
いつも決まって夏が来ると君はこう言った。
「夏の空って何でこんなに近く感じるんだろうね」
「入道雲とか、夏は雲が大きくなるからそんな風に見えるんじゃない?」
「私はロマンを求めているんだよ!」
「分からないことに理想を押し付けるのは良くないよ」
「もう!いつも言うんだから!そんなこと言わないの!!」
僕はコミュニケーションをとるのが苦手だ。
他愛のない会話に花を咲かせることは僕にはできない。結論を急いでしまうのは僕の悪い癖だ。
ただ、この日常は嫌いではなかった。
彼女は変な所に疑問を持つ。
いつも決まって冬が来ると君はこう言った。
「冬の空って何でこんなに遠く感じるんだろうね」
「夏にも似たようなこと言ってたね。そんなに気になるのかい?」
「冬の空を見たら寂しくなるんだもん」
「空の上から見れば分かったりするのかなぁ」
「科学で証明されてるんじゃないの?気の所為かもしれないし、空の上からだとわかんないと思うよ」
「貴方はどうせ分からないと思うから、分かったら特別に教えてあげる!」
「知った所で何も生まないでしょ」
なんて、似たような話題でも、僕はいつまで経っても花を咲かせることが出来ない。結論を急いでしまうのが僕の悪い癖だ。
彼女は変な所に疑問を持ち続ける。
・・・・・
そんなこんなで5年が経った。
僕の周りには花が咲いている。
「今更なんだけどさ、私の事面倒だと思ってない?」
他愛の無いことを言われ続けて気にもとめなかったけど、今となっては君の気持ちがわからないこともないな
「気になり続けたら自分で考えるのが面白くてキリがないんだよ!私っていつもそう」
最初のうちは面白味すらも感じなかったけどね
「い、一方的ってのも案外悪くないのかもね!そういえばね、ずっと話してた空の距離が違うように見える理由がわかったよ」
ついに分かったんだ。是非教えて欲しいな
「でも、まだ言えない」
どうして?
「どうしても」
珍しく勿体ぶってどうしたの
「…ッ!心の準備が出来たらまた言うから、その時まで待ってて!!!!」
・・・・・・
一週間が過ぎた。君はいつものように疑問を持ち続ける。
僕の周りの花は少し元気が無いみたいだ。
「久しぶりだね!最近は少し忙しくて…」
いいんだ。こんな僕に構ってくれる物好きも君だけだよ。
「人間関係って複雑だよね、どうやったら円滑に行くんだろ〜」
物事が円滑に進んだら、逆に怖くないかい?
「お星様は沢山あるのに何故あんなに遠くにしか見えないんだろう〜月みたいにもっと近くてもいいのにね」
それ、人間関係と何か関係あるの?
「…」
黙らないでくれよ。
・・・・・
元々話す間隔は3日程度だったが今となっては半年程度だ。
彼女も忙しいのであろう。
周りの花は既に枯れていた。
そして、この日、彼女は疑問を持っていなかった。
何かあったのかい。
「懺悔するつもり」
らしくないね。
「もう大人だからさ」
そうなんだ。寂しくなるね。
「雲の距離の話覚えてる?」
勿論、ずっと待ってたよ。
「中学生の頃ずっと一緒に帰ってたよね。周りに茶化されてさ」
「貴方はずっと私の事心配してくれてた。あの時もずっと疑問を投げかけては、君は嫌な顔一つせずに全部答えてくれてたよね」
…
「私がさ、あの時、空を見てあんな疑問を投げかけなければ…さ……」
泣かないでくれよ。もう覚えてないんだから。
「君は事故で記憶喪失にならなかったんだ…」
…
「私は毎日病院に通って貴方に話しかけたけど、貴方は何も覚えてなくて…」
「それでもいつもと変わらず、ずっと嫌な顔せず応え続けてくれた」
そうだね。嫌ではなかったよ。
「私が1部の女子に酷く虐められたの知っててずっと気にかけてくれた…」
「記憶喪失の貴方でも私を受け入れてくれた…」
「でも…でも…」
………
……
…
確かに僕はもう死んでいる。
最後はもしかしたら記憶が戻ってくるかと思って散歩していたところを、事故率の高いらしいただの道ではねられた。
「私ね、天気予報士になったの」
「雲の距離って変わらないんだって…」
「人間の錯覚なんだって…」
「だから、ここに居ればあなたとの距離も昔と変わらないとずっと思ってたの…」
「でも、貴方は言ってたよね。分からないことに理想を押し付けるのは良くないよ、って」
「だから、私頑張るよ」
「あなたには疑問を聞いてもらってばっかりだったから、今度は私が貴方に色々と『答え』を教えてあげたいと思ってるんだ」
それは嬉しいね。
「それじゃあ行くね、落ち着いたら沢山お話をもってくるから」
うん。また、楽しみにしてるよ。
彼女はいつ来てくれるのだろうか。
次は墓前にいつも添えてくれる花の言葉の意味を教えてもらおう。
僕の周りには綺麗な百日草が添えられている。
この話はハッピーエンドなのか、バッドエンドなのか。
決めるのは彼ら次第でしょう。
彼女は帰省した時にお墓に行っているみたいです。
日々の答えを見つける事は難しい。
私自身も日々の生活に自分に納得できる答えを見つけられれば成長することが出来るのかなと夜に考えています。