第67話: 商人の祭りに参加しよう
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バッカニア祝市祭は、大規模見本市だ。何となく宗教や歴史的な記念日に合わせて市が開くのかと思っていたら、市を開く事自体が目的のフェスティバルらしい。
それだって歴史といえば歴史なんだけど、アトランティスの調査団が、たまたまここで行われていたケットシーとクリノイドの交易に出くわした。ヴェーダに本格的な植民が始まるより前の事だ。慎重な人類より遥かに積極的な相手に押し切られるように、ありあわせの物資で交易が始まった。
アトランティスは、そのまま海岸に観測所を設けて常駐し、ケットシーとクリノイドの商人達は、交易地が便利になって喜んだ。
観測所が街になり税が定まると、それらの制約を嫌い種族間の交易地がその時々で動いたが、場所のメリットもあって主な市場が定着していった。今でも適当な海岸で当事者同士が取引しているが、問題ない。それ以上に、人類の都市で行われる大規模な見本市は、魅力的だった。
第一にお祭りは、楽しみだ。ヴェーダの住人は、どんな姿をしていようが目新しい物や華やかな催しが大好きだった。
バッカニア祝市祭は、地溝帯の内海を取り巻く50程の都市国家を背景に、交易に特化した4都市で持ち回りに開かれる交易者の祭典。そのひとつがもうすぐ、ここで始まるのだ。
・・・
グ*ス*タフの倉庫では、お伽話のエ*ル*メス玉にマウザーのチームが4交代で張り付いて作業を突貫している。天井からコアだけのこうもりサーバが数体ぶら下がって観察中。まだ、テスト期間だからね。
私もたまに覗きに行くけど、作業台の高さとか錬成速度の調整くらいでうまく回ってる。ミケさんによると、明日から夜の作業をお休みにするそうだ。ひと通り、配送先に行き渡ったと言うことかね。
シルキーは、ミミックさんと砂船を繋ぐ太いロープを渡りながら周囲を見渡した。ノボリを掲げたピラミッドがさらに増えて、海に向かう大通りと広場がお祭りっぽくなってきた。
キャラバン最後尾の砂船小屋には、舟番のマウザーが居るだけ。小屋の中に円錐テントが張ってある。テッペンの監督が小さな作業肢を上げて挨拶してくれた。こっちに監督のマリオネットをもってきてあげたいトコだけど、今は難しいかな。まあ、相似連結のボディが小さなドローンだから余り必要がないかも知れない。
テントと言うより、これは大きな竪穴式住居の輪郭だね…材質モダンだけどね。テントの下は板張りの長方形。デッキの端が下にカーブして落ち込み、固定された船底に続いている。
テントに入ると雑然と風水機関部が並び、ポッカリ空いたスペースにポットさんのバーが置かれていた。
「お帰りなさいませ、お嬢様。何か召し上がりますか?」
…今は、パス。大通り会場の端、海側に出店の場所を貰ったわ。端だけど、そこそこの広さがある…お客のメインは人間ね…。
シルキーが背の高いスツールによじ登ると、ミミックさんが後ろに立って支えてくれた。マスターのポットさんが、温かい紅茶をカウンターに置く。
「カフェインを抜いてあります。」…ソーサーを差し出すと同時にカップにミルクを垂らしてクマを描いた。
…お子ちゃまレシピの紅茶…、椅子によじ登るのを苦労する幼児だからね。でも、雰囲気ボスっぽい。‥葉巻を咥えるとスッと火が差し出される感じかな…
…港の映像があるかしら…。私の茶会で確認したいわ…
頭の中の場面が切り替わった。
シルキーの自分会議室は、何もない白い空間だ。
常駐する仮シルキーのタスクが手を振ってくれる。その向こうに公園の風景が浮かんでいる。実際の公園に、こんな白い広場はないし、あれは見た目だけの壁紙だけど、現在の公園の様子を映している。
続いて現れたポットさんとミミックさんは、いつもの姿。ポットさんは、修復がすすんで普通のおじさまに見える。ミミックさん、…本体はどーなってるんだろう。コアだけにしては、能力が釣り合わないような気がする。
チーフサーバ4人組に続いて、こないだ店長ロイドと遭遇したミスティルテインさんも現れて控えめにポットさんの後ろに立った。
ミスティルテインさん…見惚れちゃう、できる女は個性が際立つね。
私の視線に気づいた彼女が、チョット頬を染めてモジモジする。何だこの破壊力。聞いた話じゃ軍属ツンの筈なのに、早速デレた…のか。
振り返ると、監督もマリオネットのイメージで直ぐ後ろにいた。現実では、ミミックさんの立ち位置だが、何か取り決めでもあるのか、茶会で立ち位置が入れ替わる。
茶会空間の足元に、上空から見た街の様子が映し出されズームした。メイン会場の大通りがロータリーを挟んで埠頭に続いている。…会場は、直に埠頭に繋がってないのね。つまり人の流れ的に、メイン会場の外になるのか…。海辺だし、これはチョット考え方を変えた方が良さそうね。
後ろの監督に合図すると、光景が原寸にズームして地上に降りた。現場の眺め…ロータリーから海に出る短い道が倉庫街の入口だ。
これは…、眺めは良さそうだけど…思ったより、狭いね。シルキーの感想から会議が始まった。
斑尾のツテで入れてもらったけど、ドローンが見た景観からすると、実績の無い新参者を良い場所にねじ込むのは、やはり太守でも難しい。
「本来なら、倉庫の壁面に展示するディスプレーのスペースですね。間口はありますが、道までの幅に利用の制限があり、向かい側が海沿いテラスです。」
つまり、看板やモニュメント用のペラペラな壁面スペース。
監督がルールを確認しながら割り振られた場所を赤くマークして表示してくれた。公園を離れて久しぶりの監督マリオネットの声が懐かしい。
「それでもカウンターが置けますし、日中は、道スペースの10%までテーブル席が許可されてますので、持ち帰りカフェとイートコーナーが可能です。壁面をスクリーンに使えば構造的イメージ演出もできそうです。」
そだね。大きな壁は、鏡張りにするだけでも違う。映像で店内ぽく演出してもいいし庭園に開いた窓に見立ててもいい。問題は、飲食にこだわるか雑貨にするか…それに私は拉致されてきた身…ここでどれくらい表に出るべきか?
街中では、荒野と違って錬成の力推しに限界がある。
幸い、砂漠で太守に売った日本酒と醤油は現金取引だ。来月からエ*ル*メス売掛分の支払いが期待できるし、ローザンヌの売り上げもある。
まとまった現金と言うほどの財産じゃないけど、祭りの原資になる。ここは自力で更生して、海に出る手段を手に入れよう。
実のところミミックショップは、5号機まで設計だけ済んでいる。でも、MarkIIの飛行を反省しても運用が別物なのは明白だ。海を舐めたらあかん!…内なるazsaの記憶がささやいている。
まあ、衣食はサポートしてあげるので、姉にはもう少し無人島ライフを楽しんでもらおう。
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(補足)
惑星ヴェーダ:地溝内海:人類領域南端、火山海峡
トーラス開拓建設公団:本部護衛艦隊儀仗部隊ヴァルキュリア小隊:シルビアナ
「こんなに近くて、どうして気づかなかったのかしら。昨夜は絶対無かったわ。」
ミミックショップ3号臨時店長:頭に赤い猫を乗せたパイロットミミック:フー
「ニャ、にゃんごななの、ニャー・・=(そ、夜のうちに…、まあ、動いたな)」
脱走艦長:シルビアナ
「何で珊瑚礁が動くんだ…浮島?…朝起きたら目的地って…もしかして、生物?」
シルキーと魔水晶ぬきで錬成が受信限定のミミックショップ:臨時店長:フー
「ニャナニャン、ニャ・・= 量子通信で連結できる未確認情報体…意思交換可能」
機動甲冑をドローンがメンテ中、義肢に手袋ハイソの開放的な女:シルビアナ
「正体不明ね。でも、敵意はない…クリノイドかしら。早く離れた方が良いのね」
赤いネコと白いパイロットスーツが海に映えるミミック・フー
「ニャー、・・= 回答無い、歓迎されて無い。助けてくれただけ。だから行こう」
ミミックショップ臨時見習い店員のシルビアニャ
「そう…それにしても綺麗な入江ね…滝まであるわ。崖も、登れそうな所がある」
シルキーマーレ・ホームカンパニー:派遣整備チーム、遠隔連結多足ドローン
《砂浜植生の奥、高台に岩穴があります、本機で塞げば海への目印と観測に良好》
海と太陽、日焼けし始めたシルビアナ。火山の孤島に何を思う
「ここの砂州が沈み始めてるわ。島の斥候は私がします…最後まで安全運転でね」
帆を上げろ、シッポをあげた赤いネコ:フー
「ニャー!! ・・= まかせろ!!」




