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第65話: バッカニア市、他…忘れてたわけじゃないよ

 

 -…-…-…-…;


 斑尾のキャラバンは、延々と繰り返す砂の丘を2日移動して、疎らな灌木と大きな岩が点在する荒地に入った。


 やがて、ポツポツと岩を積み重ねた目印が現れ、突然、平原の先に輝く海を遥かに眺める高台に出た。


 広い滑り台の様な斜面は、砂漠からこぼれ落ちた砂で覆われているものの、海からの風で砂が吹き戻されている。連結された砂船は、滑り落ちない様に上手に折り返しながら草原地帯に入って行った。


 平地を進んで翌日、牧場の囲いやシリカ材を組み合わせたヤグラが見え始め、たまに牛の群れや大柄で長い毛に覆われたヴェーダヤクにもすれ違い始める。


「こんな南の方でヤクを見るニャンて、珍しいニャー。」


 ゲ*ルググ*太守が、ツトメテ涼しい顔で居室の甲板から辺りを眺めている。


 シルキー達は、太守の様子が気になっていたので、今日は朝からグ*スタ*フの甲板で辺りを見物していたが、日も高くなってから、「おはよーニャー」とか言いながら、ひとつ目の化け猫太守が部屋から出てきた。


 昨日もずっと巣ごもりで現れなかった太守は、何もなかったかのフリで爽やかに振舞っているが…まだ、そっとあるいている。


「そういえば、バッカニャアは肉祭りだったにゃー。ウチらも間に合って良かったニャ。」


 ミケ猫隊長が、後ろで言った。太守について部屋から出てきて、海の方を目を細めて見ている。望遠鏡を取り出すと、何か探して…見つけた様だ。


「ウチらで五番手と言ったトコかにゃ、まあまあ良いタイミングだにゃー。」


 海沿いに広がる街が霞んで見え始めた。このキャラバンと同じようなピラミッドの群れが、町外れに固まっている。大小合わせて20もないだろう。


 だんだん近づくと、吹き流しのような三角の旗が大きなピラミッドのポールになびいているのが見え始めた。数えると、色とりどりで4本ある。


 マウザー達が太守の居室の上階にポールを組み立てて、緑地に金の輪が入った吹き流しを揚げている。


 斑尾キャラバンは、馬鹿でかい平らな道を、町外れの陸港目指してゆっくり進んで行く。


 高い櫓が見えてきて、オレンジと黒で体の左右半々を分けた衣装の人間の男が大きな両手旗を振っている。


 いつの間にか先頭のドー*ラ*のテッペンで、黒っぽい隊長服に着替えた白猫シ*グ*さんが自らショッキングなピンクとイエローの両手旗で幾つもの形を作って、ヤグラの手旗に応えていた。


 マスターキーの自動翻訳も流石にケットシーの手旗信号には、対応してなかった。なんで、通信しないで、こんな事してるかね?


「商売上の慣習にゃ。自由市場の場所も順序も先取りし過ぎるとカドがタツにゃ。クリノイドも来るし、こうして皆が見えるヨウに公正に始めるニャ。」


 ミケ隊長が解説してくれた。よく分からんけど、市場のセリみたいなもんかね。


 海辺の町バッカニア郊外に到着した斑尾キャラバンは、白猫隊長の誘導ですごく広い陸港の一角に着底した。


 ******


 太守は下の階に移動すると言うが、そのまま上の甲板から見物させてもらった。


 ミミックさんは、物理投影のテーブルセットをバラが絡まる垣根のテクチャーで囲って、更にワザと金ピカな日除けテントを甲板の一画に出現させた。テクチャーの中からバッチリ周囲が見渡せる。


 突然現れた住居甲板の庭園など、外から見れば怪しいに間違いない。ミケ猫隊長の提案だが、考えがあるようだ。


 市場の役人が帰ると、ポツポツと周囲の砂船からの客が集まり始める。


 お客の対応は、ウ*ージイさんたち勝負服の隊長猫がしているが、普段着の太守も非公式な感じで知り合いとだけ会うらしい。…今日は最初の腹の探り合い…、お互いに見られているのだから、不思議な客の存在を太守のプライベート階層にナゾ出しして牽制するらしい。


 他所の砂船を眺めながらお茶してると、忙しいケットシー達に代わってマウザーが何人か来てくれた。砂船が停泊して余裕ができた操船チームの年長者で、例の「柚子胡椒事件」のリーダー達だ。


 お詫びの挨拶から入ったが、精神的にシ*グ*隊長に支配された分体みたいなものだから直ぐに打ち解けた。


 バッカニアの祝市祭は、2週間後に始まって十日ほど続くとの事。姉とフーの事があるけれど、何かの形で私のシルキーマーレ・ホームカンパニーもイベントに参加したいものである。


 そして…この先、みんながうまく収まる方法がないか考えてみよう。


 先ずは、情報収集ですね。



 *******



 探検船サザンクロス号の船長ミモザは、ニューヨーク宙港を見下ろす広場で連れのおじさん2人を振り返った。


「今日の夜は、BBと予定が取れてるで。突然の連絡やったけど…泊めてもらえるコトになったから、屋敷で歓待してくれるそうや。」


 舗装された白い広場は駐車場で、ニューマンハッタン市街を背景に、内地に向かう大型トレーラーからターミナルへ人を送るプラットフォームまで、大小の車がバラバラと出入りしていた。輸送船の専用ポートは、遠くに見える海側に固まっているので、宙港のこちら側には統一性がなく閑散とした感じだ。


 ボサボサの髪をバンダナでまとめたミモザ船長は、ピッチリした薄手の与圧服に擦り切れたレンジャージャケット。宇宙気流救助隊の放出品で個人船長達に人気のジャケットだ。


 隣のズングリしたスミス会長は、地上風に布の服。アステロイド鉱夫のようなバックパックを背負って、もう先に歩き始めている。


「そりゃ、楽しみだ。ダンジョン産は、ここでなくちゃ食えんからな。」


「中部丘陵のヴェーダワインをいくつか手土産に用意した。奴の好物が変わってないといいがね。」


 おじさんのキッチリした方、背の高いケント教授は、片手下げのトランクケースひとつ。ワインは、先に三人が目指す先のトレーラーハウスに収まっている。


「あと半日あるから、モビーを街の反対側に持って行って改めて街に入ろ。久々のニューマンハッタンやし…チョット行動、見せつけとこやないか。」


「まだ、ついてきてるのかね。そうは思えんが。」


「宙港からは、無いと思う。一応や。」


 昨夜からの補給を終えたサザンクロス号が、船体から小さな翼を広げて静かに浮上しゆっくり回転している。三連ブースターの重粒子閃光は、流石に見えない。


 習慣でアーサー・ケント教授が、サザンクロス号の外観を目視で検査している。


「海底調査を船長不在でやるようだが、ミモザはそれでいいのかい。珍しい操船になるだろうに。」


 船尾の大きく特徴的なブースターが、こちらに向いて微かなジェット音が響いて来る。そのまま静かに地平に広がる荒野の向こうへ消えて行った。


 宙港の管制にしたがって、回り込んで海側に出る。そのまま大陸沿岸の調査に向かうことになる。飛行計画は、先週ニューヨーク管制に提出済みだ。


「適材適所や、調査飛行は副長が上手。それに毎日何か落ちて来るヴェーダと違って、水源クレーターとかに直に降りると流石に目立つでしょ。個人船主としては、途中、羽を伸ば…流行の調査とか必要やん。寄りたいとこあるし。」


「公団艦隊も哨戒艦隊も、宙港の管制監査どころじゃない様子だったな。デネブの行方と本当のところ…結果を早く知りたいが、昨日の夜に何かあったな。ハルモニアもカラーも動きが、かなりおかしい。」


「教授…こんな開けたとこで、そんな話しせんでよー。」


「誰も聴いてないんだろ、それにこの位は、撒き餌のレベルだ。」


「上で見てた知り合いによると、石炭袋から来た2隻が艦隊を離れたそうだ。アルデのボディが宇宙気流へ、アンの方はアース太陽をギリギリ周回し始めた。固有時間の調整だろうから、カラー艦隊の補給か…カラー自身がもっと深刻かもしれん。」


 分厚い保護メガネやハーネスが口元を隠して、リチャード・スミスおじさんの表情は、わからない。


「…カノープス卿がハルモニアで亡くなられた…ようだ。公団の緘口令なら間違いなく状況が聞こえてくるのだから、別の理由…普通でない死に方のようだ…。」


 スミス会長は、足元を確かめるようにうつむいてボソっと続けた。


「混乱した情報からするに、言葉にできないことが起こったと思う。司令室に多くの人間がいて、見た事が理解できていないのだ。ハルモニアだけでも理解していれば良いが…アレは地上民にほとんど関心がない。教会が追っているスワンのマスターコードの行方は、ゲオルギスが最有力候補だった。奥方が除外されているので、アレックスに渡っていない場合、最悪、失われたかも知れん。アレクは、アルデと行方不明…少なくとも帝国に捕まっておらん。」


「こんな事は普通あり得ないのだが、帝国は、王家を弱体化し過ぎた。」


 ケント教授の低い声が険しい。


「普通に考えて、補給ならカラー行きはアルデやろ?…あとなんで公団がここまでノルンに執着するかな。魔王城のマスターキーに会うのが怖いわ。グングニルの公園を観測する距離に間に合ったと言っても、チョットゆっくり目に行かへん?ウチら調査中やし。」


「ザイオンでは、魔王城の地球遺物調査が表の目的だろ。あと、ニューマンハッタン沖と水源クレーターの地下遺跡な。…そうだな、順番に行こう。怒ってるブリュンヒルデに会うのは、…得策じゃない。」


 トレーラーハウスのモビーがドアを開いてくれる。運転席に一応ドロイド船員が乗っているけど、モビーだけでも移動できる。


「ターミナルで買った物資モン、積み込んどいてくれた?」


 運転席を見上げるミモザ船長に、透明なアルミ越しにドロイドが拳を握って開いて指サインで答えた。



 *****



 閉鎖半空間アキハバラの上空から、大きな窓を周囲に持つ小型艇が音もなく降下してきた。船底六方に見える半球からMMドライブのシフト艇だとわかり、観光船の窓に数人の女性の姿も見えている。


 長年カノープス公爵領を任されてきたアマルティアは、パイロットと思えない騎士の装い。下方を案内しながら後ろの女性たちと会話しつつ、シフト艇をゆっくり周回させてドームに降下する。


「奥様、お嬢様。見えてきました。…メラクもいますね。中央ドームが皇宮艦デネブの展開ドックです。」


 カノープス公爵夫人アリシア・カノープスは、豪華なプラチナの髪。貨客船アルゲディ備え付けの楽な気密服にモスグリーンの儀礼的な外套を羽織っている。


「雪ばかりと思えば…私にも見えたわ、アレね。まあデネブも大きくなって。」


 夫人が真紅の眼差しで、手を繋ぐ十歳ほどの娘を見下ろした。父親似の明るいブロンドで、母とよく似たデザインの明るい配色の外套を羽織っている。


「囲みの骨組みが元の神槍グングニル、祖地です。再利用してますので、だいぶ片付いてますね。コースマーカーが出ました。デネブが格納扉を解放中、…シールドを切りませんね…警戒しているようですが、問題ありません。本機のシールドを同調融合、デネブに着艦します。」


 ・・・


 巨門船長が真っ先に出迎えた。実は艦載機や作業艇が好きなだけだ。


「どこの遊覧船かと思えば…領宰殿か。まだ、船は出せんのか。」


 パイロットも務めるアマルティアが、タラップを降ろしながら先頭で顔を覗かせた。ハッチが跳ね上げ式で、下半分が伸びてタラップになる。


「影の月をいくらかでもダイソン形態にしないと、入港施設から出るのはムリそうです。軸区画を塞いでいる融合船体の解消が先ですね。」


 続いて姿を表した公爵夫人アリシア・カノープスと、ゆったりしたドレスの裾に隠れるような娘のクラヴィア。


「おかしな具合に目詰まりしてるのよねぇ。船長、ご苦労様です。」


 クラヴィア嬢も軽く会釈すると、興味津々、辺りを見回している。茶色の目をクリっとさせた可愛らしいお嬢さんだ。


 30センチ程の立体像が飛んできて、デネブ妖精が目線の空中に止まった。


「奥様、お嬢様。よくぞご無事でお越しくださいました。あちらにコテージがございます。どうぞ。急造の何もない処ですが、先ず、おくつろぎください。」


 ショーの部屋の3倍サイズで現れたデネブ妖精が空中でカーテシーすると、クラヴィアの前をフワフワ案内始してゆく。


「ここ…妖精界アキハバラですが、まだ調査の済んでないエリアがありまして…、セレベンティスの追放者や焼けた帝国の作業艇なども見つかってございます。また、ヴァルハラ高原観測所が巻き込まれている懸念がございますが、発見できておりません。そのため現在も隔壁扉の通過に、中警戒レベルのスキャンを維持してございます。」


 ソファーで囲った円形床が区画の端にある。実は移動用シフトで投影なので格納庫のどこにでも呼び出せるが、決まった場所にあると使いやすい。デネブの先導で座ると加速を感じさせずにかなりの速度で移動した。


 ソファーの周りでは、呼吸などのゆっくりした動きに差はでないが、強く手を振ると空気にわずかに粘っこい抵抗がありフィールド補正ある事がわかる。重力技術で加速を相殺すると大掛かりで高価な装置になるが、ステイシスフィールド等をインバーター分子間力場で擬似的に補助するだけなら、日常加速の範囲内に限られるものの簡単だ。


 クラヴィアが周囲の様子に見入っている間に、アリシアの肩にとまったデネブ妖精が耳元で囁いた。


「若様は健やかにお暮らしです。仮親だった者が、ここに居ります。」




 *******



(補足)

 妖精界アキハバラ:高千穂サイド:富嶽避難所


 自衛団隊長:小林権堂1佐

「風呂を、もう3箇所設置終わりました。農場も明日には再稼働できます。」


 神子:白山 ククリ

「ご苦労様。サクヤ様、小林1佐が大きいお風呂を作ってくれましたよ、1番湯を狙うんでしょ。急ぎませんと、どこかの村人が入ってしまいますよ。」


 神子姫:浅間 サクヤ

「子供みたいな言い方せんでも、ちゃんと神祇のお役目じゃ。悪縁ぶっ飛ばして清めにゆくぞー。」


 ククリ

「そうは言っても先越されるでしょ。だいたいみんな気にしてないから。」


 天文台館長:有栖川妙音

「現人神の信仰心なんてこんなモンじゃろ、アヒルは九院が製造中じゃ。」


 小林権堂1佐

「まー、風呂だけなら各区画にもあるので、娯楽要素が強いですからな。」


 サクヤ

「それ! チアキの奴…人間のいない雪原に店って、何やっとんのじゃ。」


 妙音みょん

「検証じゃ。高千穂も魔力十分じゃで、メラクが移動させれば開店オープンじゃ。」


 ククリ

「助かります。食料や日用品の配給に不足はないでしょうが、買い物を楽しむ程の流通ができません。クウの酒が普通に買えるだけでも楽しみです。」


 サクヤ

「農場と工房の半分は、北斗にあるからのー。月も岩戸が開かん船が使えん。ひとまず北斗のフェクダ船長は、貪狼・破軍と合流して…バビロンに向かうそうじゃ。宇宙気流を通らずに修理しながらの星系離脱じゃ。」


 小林1佐

「互いの無事は喜ばしいですが、七つ星がいないのは寂しいですな。」


 サクヤ

「幸いにも妖精界でエッダと同舟じゃ。桜が無事のようで量子魔法もある。これで、もし皇宮が動き出せば…高千穂のゴハンも文明開花するのじゃ。」


 みょん

「?チョコならチアキの店にあるのじゃ。クレープが美味いのじゃ。」


「「…もしや、…狐弧に憑依して食ってるのか…。」」


「!たまたま…マーレのおごりじゃ。さー風呂に行かんとーにゃー。」


「なにが、にゃーじゃ。桜に憑依してもクレープは食えんのじゃー。」




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