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第50話: ブラウニーズ・ラボラトリー

 

 荒地の真ん中、大きな岩が作る裂け目の奥に黒い細い扉がある。


 シルビアナは、ずっと幼い頃、砂漠で男が幻の都市に迷い込んだり、宝の隠し場所でランプの精霊を見つけたりした話を聴いた事があるのを思い出した。もう誰がどこで話してくれたのか思い出せないが、不思議と懐かしい気持ちだけが蘇った。


 それにしても扉だ。距離をとって、そして近づいて手を触れて調べる。材質は解らないが金属の扉だ。


「コフィン カフェ」と流れるような書体で銀の意匠が刻まれている。…だから、カフェだろう…。罠…?、誰がどうして?


 思考はグルグル回るばかりで、タレントはピクリともしない。ただ、白い犬の尻尾が見えた。…何だそれは!…自分のタレントにまで馬鹿にされてるのか!


 限界だった。シルビアナは、それ以上の思考を止めて金のドアノブを引いた。


 …音もなくスムーズに黒いドアは開き、薄暗い奥はよく見えない。カランカラン、大きなベルの音だけが響いた。


「…いらっしゃいませ。」 …低い、かすれた男の声が奥から伝わる。


 冷たい新鮮な空気が身体を包む。帝国軍用の眼球は素早く適応して、狭い通路の奥、離れたカウンターの向こうに立つ黒服の男を見つけた。


「外はお暑いでしょう…中へどうぞ、砂が厄介ですので、扉をお閉めください。」


 男のかすれ声に、慌ててシルビアナは扉を閉めた。砂の厄介さは、もう十分に体験した。


「通路で風が強く吹きます。エアクリーナーですので、ご承知ください。」


 なるほど、カウンターのある室内はもっと広くなっていて、5mほど剥き出しの岩とタラップの通路が続いている。シルビアナの歩みに合わせて上から下から空気が吹き付けられて、幾重もの力場のカーテンが静電気のように身体をくすぐる。


 うつむき加減の正面の黒い服の男は、ツバのある黒い帽子をかぶっていて、ふと大昔の開拓映画の葬儀屋を連想した。控えめな笑顔でグラスを拭いている。カウンターの前に立つと彼は立ち位置を変えて右の横顔を保った。


 ドロイド…、いやアンドロイドとでもいうか…間違いなくマシンビーイングのようだ。逆に安心した、少なくとも直接の危険はないはずだ。


 近づくとバーテンの黒い服は、裾があちこち裂けて見える。そういうファッションなのか汚れた感じはしない。カンターや固定された椅子も、デザインが恐ろしく古風だが綺麗に磨かれている。


「色々と準備中で、まだ再現できておりません。わたくしもメンテナンス待ちで、少々お見苦しいですが、古いマリオネットと、見逃して頂けると幸いです。…冷たいお水など如何ですか、お嬢様。」


 正面を向いたバーテンの顔の左側は、干からびた皮膚が張り付いていた。ミイラの半身と抜け落ちたまだらの髪を帽子で隠しているようだ。


 少しドキッとしたが、芝居がかったタイミングで驚きはしなかった。見せ物めいた動きと語り…逆に興味が湧いた。それよりも、冷たい水だ。カウンターに歩み寄り、高い椅子に腰をかけた。


「ここはどういう場所だ?…主人は誰だ。」


 グラスにたっぷりの水と透明な氷の入ったアイスペール、湿らせたナプキン?…ハンドタオルが心地良い。シルビアナは砂に汚れた手と…躊躇して顔もしっかり拭う、ここのマナーは、きっと緩いだろう。


「シルキーマーレ・ホームカンパニーという個人合資の小売会社がありまして、実はグングニルコロニーの古い工事機械を多く雇い上げて頂いてます。」


 墓場から起き出してきたようなバーテンが、静かなかすれ声で続けた。


「その開発部門が一昨日、新たに設けられました。…「ブラウニーズ・ラボラトリー」と申しまして、まだ、わたくしを含め数台が参加しているだけです。」


 シルビアナに話の道が見えない。冷たい水を口に含む。安全な美味しい水だ。


「つまり、グングニルコロニーでお生まれになったブラウニーのシルキー様がこちらの店主でございまして、ブリュンヒルデ様、フレイア様の縁者でございます。此度の大事に際して、コロニーに打ち捨てられていました旧機械を率いて旅を始めてございます、大袈裟に言えば…エクソダス…ですかな。わたくしは、シルキー様とお仲間のお休み処を作る試作プランを、こうして検証してございます。」


 ?…何のことだか…理屈は解るが、イミが分からない。


 …荒れた公園の壊れたエイリアスが、思い浮かぶ。あれがシルキーか?


「店主から、初めてのお客様には、お食事なりお飲み物を一度だけ当店からサービスするように申し受けてございます。試作期間中ですが、いかがですか。御夕食をお求めの方は、ご希望があれば座敷でお休みいただけます。仮設ですが、お風呂も準備しておりますよ。」


 黒いつば広帽子の影で、無事な方の顔がニッコリ笑いかけた。


 確かお風呂は、リラクゼーション・バスの事だ。…毒を食らわばバサラまで。


 アビーがどこで聴いてきたのか、時々訳のわからないフレーズを言う。彼女が遠くで無表情にニヤニヤしてる気がした。…細かい意味はわからないが、今こそコレだ。


「バス含めてタダでよいのだな、帝国通貨ならポイントで持ち合わせがある。適正な食事であれば支払います。」


「試験運転でございますので、夕食1セットにお部屋と風呂の利用をフリーでご用意いたしましょう。それ以外のメニューと商店は、有料で、どの惑星ポイントでもお受けできます。公団通貨も多少ならおうけします。」


 話しながらも、カウンターの男は素早く慎重に五つの層をガラスのゴブレットに作り、マドラーを差込むと軽く一部を崩した。


「パッケージ・フルーツのミックスジュースです。試作中の店とはいえ、お嬢様は、記念すべき最初のお客様。店のサービスと別に、わたくしからひと品…お嬢様に合いそうなものをお見立ていたしました。どうぞ。」


 ミントの葉とストローを刺すと、シルビアナの前に置いた。


「グングニルから住人が去って、もう、わたくしがここに立てる機会はないと思っておりましたが、店主より新たな店と身体を用意いただける事になり、わたくしも万感の思いがございます。これは、カクテル「ノルンの王冠」のノンアルコールジュース版でございます。お疲れのお体に、大変よいものですよ。」


 ノルンの王冠とは、惑星ノルンの氷半球に挟まれた緑の赤道帯、網目のように惑星を取り巻く青い湖沼群を指す言葉だ。その光景が大きめのグラスに再現されている。そして正面には、王冠…スワン大平原がある。不意に、シルビアナの視野が滲んだ。


 幼い頃、誕生日のテーブルに必ず用意されていた一杯だ。


「暫し、お楽しみ下さい。ご用意ができましたら、茶屋「迷い家」に、ご案内いたしましょう。」



 *******



 カラブランとは、砂嵐のことらしい。不出来な姉は、戻らない。


 チャリオット・ファルコンには、遠隔で保守待機命令がきた。砂に埋まってもエンジンが多少動けばフィールドで浮上できる。このまま隠しておくつもりらしい。


 私も一緒に埋めておくということか…、だが、断る。


 錬成魔法陣展開、相位機関構築…空間力場投影。


 グングニルの魔水晶には、投影機能がない。でも、ミミックさんのコアは、特製だ。取り込んだコロニーのコンビニコアも強力だが、抱き合わせた錬成ユニットが特別だ。どう特別かというと、外壁の氷に埋まっていた誰にも正体のわからないエロ例外遺物のひとつ。ユニットのインターシェルが壊れてないなら、製造から一万二千年経っている。縄文早期の製造…じゃなくて、トーラス前文明の遺物だ。


 つまり異星の製品。何でそんな物が神槍グングニルの外壁に埋まっていたのか謎だが、解析判定の結果、問題なく使えた。手持ちのジャンクの中で最も高性能だったので、ミミックさんに組み込んだ。


 砂に埋もれ始めたファルコンを、コロニー外壁でも使われているシリカシートの結束構造で包む。監督の計算では、破損したコクピットの保護になるし、砂中からの引き揚げが格段に楽になるはずだ。そして、私の入ってるカプセルの周囲に力場機関を投影し、空間場構造の手足を生やした。…命名! カプセル・ロボ、監督!


 おう、カッコつけてて、盛大にコケた。


 ショーが実験済み。空間投影の構造体は質量がなくて、摩擦も乏しい。結果、滑りやすい。


 既に対策済み。ミミックさんが周囲のシリカ素材からグローブと足裏グリップをラスターした。胴体のカプセル周囲を鳥籠で覆う。


 当然、全体を力場防壁が覆っているので、砂の微粒子も入ることはない。


 本格化する砂嵐を背景に、力場体の巨大ロボ(当社比)が立ち上がった。またコケた。


 カラブランは、甘くない。飛ばされそうだ。そう、いっそ飛んでみたら良いかも。イヤイヤ、退避〜、安全第一。


 ロボのキャストは、操縦:監督ドローン、力場構造体構築:ミミックさん、全体指揮兼動力源:わたしシルキー。


 三位一体、合体技だ。ミミックさんが空間場障壁をコントロールして、風を受け流す。


 愚姉が、一応、心配だ。気づかれない程度に、近づこう。ファルコンとの連結を狙って、大体の位置は、把握している。ショーが孤児院でベラトリックスの冒険を読んでいて正解。これまでのところの砂漠は、なかなか絵本に近いシュチュエーションで参考になる。


 そうすると、嵐の後に来るのは、デザートサラマンダーか流砂に飲まれるか…。何にしても力場シールドと冷却手段なしでは、この砂と熱でサイボーグ体のオーバーヒートが時間の問題。繊細な機械ほど、こんな環境に不適当で稼働部が砂でも噛めば絶望的だ。


 丁度いい、昨日のアイデアを速攻で検証してみよう。影に潜ってるクウに声をかけると、問題ないらしい。公園の監督本体は、概略の設計を終えて構築に入っている。


 ********


 実は、公園の隔壁は複数あって、私の隣の隔壁に監督の同僚が巣くっていた。


 形が大きな「ポット」のような頭脳コアで、検査検証の分析係官だ。監督の仕事で公共建造物や重要度の高い建築には、設計検査や完成確認が必要な場合がある。


 お役所的と言うなかれ、監督の本領は、コロニーの保守だ。


 そのAI的必要を満たすため、コロニーを総捲りして起動可能な資格を持つドロイドを探し、見つけたのが探検隊のアナライザーだ。何かのコアや管理機械で補完して何とか復活したアナライザーのポットさんは、それ以来、連結同輩として地下区画から監督を支えてくれていた。


 区画を出てこないので、わたしも余り気にして無かったが、私たちが見つけてきたジャンクやマリオネットを評価して補修改修の手配をしているのもポットさんで、かなり忙しい。


 そんなポットさんも、監督たちの影響か結構な自我が確立していて、いつからか自分用のマリオネットをキープしていた。年代物だが最大限大切に埋葬されていた個体で、機能クラスがアンドロイドに届く壮年男性のマリオネットだ。


 専用の保守キットとバックアップ記憶が棺に同封されて、紙束で感謝の手紙が添えられていた。大変惜しまれながら敢えてコロニーの外殻に埋められており、翡翠亭という場所のバーを任されていたらしい。


 ポットさんは、分析と素材設計が専門のアナライザーだが、意識が高度化してひとつの野望を密かに抱いていた。


 長年の人間との会話から、お酒の文化に興味を持った。


 酒…それも人に多種多様な効果を与える各種の飲料は、アナライザー的に、人間心理や社会性を含んだ高難度の解析になり成分構造だけで適切な評価ができない。酒は、ありふれた液体だが、鑑定家として挑戦困難な最高峰…自分の認識への挑戦で、人間の評価と対比した場合に限り、単なる分子成分の分析で測る事ができない対象と認識していた。


 化学解析は自分の専門、酒の使い所を知っているバーテンダー・アンドロイドの経験が、ここにある。満を辞してポットさんは、コアの増設融合を行った。


 それを知っていたので、タスクが溢れて超過労の監督とチームを救うための組織変更を、ポットさん中心に行った。


 監督と工事建機の諸君は、公園を守るための状況対応で手一杯。


 しかも、今は、謎氷原に墜落している神槍グングニルコロニーにも対処しなければならない。繰り返すけど、監督の本領はコロニーの保守にある。神槍はもう完全にスクラップだが、あちこちに原子電池のプルトニウムや無視できないモノが埋もれている。現在、公園組と墜落を生き延びたコロニー機械が合流して仲間を増やしつつ緊急出動中だ。


 そこで、茶会技術を応用した高密度マルチタスクの結節点を整備して、私の必要を叶えるための開発部門の分離を決めた…それが昨日。監督チームもポットさんもコロニーの管理機能をだいぶ吸収しているので、ひと晩で開発研究部門「ブラウニーズ・ラボラトリー」が起動した。


 そう、ブラウニー(⬇︎)だ。監督やミミックさんは、単なるドロイドの括りに収まらなくなっている。主に、私のせいらしい…。ならば、問おう。我らは何だ?…保守すべきコロニーは、地に落ちた。堕ちても神槍グングニルは、我らの基地だ。私は、ここで建機の諸君と進化する。諸君は工事ドロイドにあらず、ブラウニーズだ。


 埴輪ロイドを中継して、軽く演説してしまった。


 ついでにコロニー廃墟を基地にすると宣言したような物。監督と配下のチームが燃えている。…実際にエンジンが発火してるやつ、早く消火しろ!!


 ラボの初期専任メンバーは、ポットさんとミミックさん…その配下(いつの間にか居たんだなー、これが!)。掛け持ちで助監督機械の片割れとそのサブチーム。もろ、私の必要を叶える為の開発部門なので、タスク分割中の仮シルキーのほとんどがポットさんの元に移行する。具体的には、そのタスクが占有する埴輪ロイド達がポットさんにデータ連結し、様式図書館との対応もラボが窓口になる。


 その初仕事が「コフィン・カフェ in 迷い家」の設計と諸々のライブラリー化。


 基本構造は、コンビニ屋台ミミック1号と同様な技術を使うので問題ない。和風部分や特別な酒は、クウから稲荷のライブラリをもらい受けている。


 二人がノリノリでひと晩語り明かした雑多なアイデアが、破損した建機諸君を補修改修するポットさんに襲いかかり、緊急事態で工機を大増産する監督たちに、更に困難なオペレーションが追加される。


 …よく考えると、ワタシは鬼か!…でも、みんなやる気になってるし、デネブさん提供の最新鋭工作機やエイリアス母艦ならではの力場機関で、監督たちの戦力はウナギノボリだ。マーレさんが現場の指揮をとっているので、未知の空間に落ちたにしても普通に安心感がある。流石、母さん。…おお、惑星間の距離で叩かれた感触が!どっかの仮シルキー経由で伝わってきた。


 そんなこんなで忙しくしていると、愚姉が岩の隙間から這い出して来た。なかなかシブトイじゃない。そして、絵本の順番でデザートサラマンダーに絡まれてる。


 群で狩をして、どこまでもついて来る。とてもしつっこいので、キャラバンから脱落すると休息も睡眠も取れなくなる、…嫌な奴らだ。しかも、原住生物の駆除は禁止されている。…生命に直接の危害がある状況を除き…、だから、不時着した現状は反撃オーケー。それに連中、餌さえあれば直ぐ増える。


 デザートサラマンダーが愚姉から離れて群れたところを狙って、監督ロボ降臨。


 胴体のカプセルから見る狼トカゲは、凄まじい迫力だ。大きく裂けた鋭いアゴと牙が、目の前でガチンと閉じるのは、檻の中からサメの群れに襲われる感じか?


 久々にチビリそうになった。…内緒だよ、でも、監督たちに私の緊張が伝わったみたいで、過剰な攻撃になった。


 カプセル・ロボ監督の手足は力場体なので、肉眼で追えない速度のパンチやキックが繰り出される。空間場でロボが地面に固定されている場合、パンチは、挟み込んだと同様に相手に効果が伝わるので狼トカゲは、吹き飛ぶ間もなく暴発した、周囲の岩もついでに砕けてクレーターになってる。数発のパンチで周囲は穴だらけになって、狼トカゲがバラバラのパーツになった。


 ヤバいヤバイ‥やり過ぎた。そっと離れる。


 ゴメンなさい、トカゲさん。


 絵本の解説によると、サラマンダーは、トカゲでなくて体温調節が強力にできる鳥や恐竜に近い生き物だそうで、最初に火山の温泉で見つかった水生種をサラマンダーと名付けたそうだ。砂漠の狼トカゲは、後で発見されてサラマンダーの陸上種と判ったのでデザート・サラマンダー。水中種も悪食だけど、性格はずいぶんオトナシイらしい。


 気を取り直して、次の、本来のプランを実行しよう。


 愚姉には、予定の組織に連絡を取ってもらわなくてはならない。私が単独でベラトリックスさんの関係者を訪ねれば、私の問題は解決しそうだが、愚姉を見捨てることになる。


 クウやショーの見立てでは、それはいい結果を生まない。私も気分が悪い。


 突貫工事で開発中の第二投影休息施設「コフィンカフェ」が部分的に使えるので、そこに愚姉を誘導しよう。バーテンのポットさんも外見まで補修ができていないし、メニューは、ありあわせだ。でも、ポットに融合してるバーテンダーさんの判断では、メニューはいらない。コンビニ食材と、ドリンクひと品用意できれば良いそうだ。


 ポットさんが妥協しなかったのは、ドリンクの材料だ。


 アナライザーのポットさん、元からメンドくさい処があったみたいだけど、バーテンダーさんを取り込んでから一層コダワリが強く出る。


 器やフルーツとシロップは、図書館も利用して何とかなったが、ミントの葉が絶対必要だと言う…技術的に難しいコトになった。


 ミントは、マーレさんが公園で見つけていた。…雑草じゃなかったんだ…。


 でも、公園の錬成魔法陣で「植物の生きた葉」をライブラリー登録できなかった。そして、素材変更をポットさんが認めない。カクテルなどの名持ちドリンクは背景文化があり時代と共に変化していくが、変えていけないコトもあるらしい。


 …意外な所から意見がでた。ミミックさんが、ワタシ経由でポットさんにリンクして提案するに、ある種のゼリーに埋めてフリーズドライ方法の工夫で戻して使える「葉」になる、そんな商品が一時期あったそうだ。


 ポットが、図書館とキグナス量子電脳の助けで正しいレシピを見つけて試すと、ライブラリー経由でもミントの葉を再現できた。一度乾燥されて押し花と同じなので、バイオ処理しても芽は出ないはずだけど、水につけて戻した葉は、色も香りも新鮮な葉と変わらない。カクテルに使える。


 結局、この小さな葉っぱ問題が、いちばん大変だった。計画の設備は、監督が着実に用意している。必要なのは、素材と時間だけ。…監督には苦労をかけます。


 さてさて、愚姉にちょっとショックを与えてみましょうかね。


 ブラウニーに属性が固まって来たせいか、こうした、ちょっとした悪戯にこだわるのが楽しい。私をお肉扱いした王女様に意趣返ししてみたいのかもしれない。クローンの意地かね?


 ショーが、どこかでそっと賛成しているのがわかる。辛そうなシルビアナの心に良い効果があるかも知れない。…私と全然違う所で賛成してるけど、ま、イイか。


 岩の裂け目を通り易く削ったカプセルロボ:監督は、通り抜けた荒地で第二形態に力場体を構造変化する。


 クモ型ユニットが巨大化して足を地面に食い込ませ、柱のように伸び上がる。黒い皮膜をラスターすると、巨大な(当社比)テントが出現した。外表面が荒く色を変え、周囲の砂地に同化する。


 ミミックさんは、その中にお芝居の書割りセットの様な店内を空間力場で投影した。カウンター椅子、空調設備、最低限の調理設備など錬成によって実物を配置していく。監督とポットさんの相談で、場所が砂漠なので天候や生物の不安要因を排除する為、サーカス・テントを防壁の外殻に設置したのだ。


 シルビアナの進路に合わせる為、十分程で設置したテント内部で、お店の細部は獲物がかかってから実体化する。シルビアナの注意を引く手段も考えたが、子犬の投影を出す前に愚姉は、扉を見つけた。


 さあて、楽しい夜になるといいね。


 クウも影から出て、ラジオ体操みたいな事してる。陰に潜るって、窮屈なのかな。…エコノミー症候群とか心配なら監督ロボに持ってもらうけど、…それは嫌だって。了解、また相談しよう。




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