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第33話: 星杯探索・・・

 

 シルキーの公園で、埴輪ロイド達にバリエーションができた。


 「図書館の茶会」みたいな電脳共有スペースを、私も持ちたいと思った。自分をタスク分割して思いつく事を色々並行して計画してると、自分でも忘れていたタスクとかがあって監督との打ち合わせの時、割り込んできて泣きつかれた。


 自分で自分の事忘れてたりって、どうかと思うが…、実際あるんだからしょうがない。そこで、監督も参加できる「茶会」を常設すれば、瞬時に自分会議を開催できるのでは、と考えた。


 そのため、通信局自分とか自分代理とか魔法陣補助自分とかの特化埴輪ロイドを一部分化させた。監督が急な工事に必要な相談や承認も、重要でなければ、私の自分出張所埴輪ロイドで済ます事ができる。楽するためじゃないよ、効率化だよ。


 で、埴輪ロイドって呼び名、決定なの?…良い案思いつくまでは…そう呼ぼう。


 そうして捻り出した時間で、私は図書館に入り浸っている。


 考えがあるって言ったでしょ。それもいくつもある。発電機や分子オルガンを効果的に使う周辺機械は、分割タスクに割り振った特命チームに開発を任せる。公園の建機諸君には更に負担をかけるが、皆の熱意は衰える様子もない。中にはタスクを掛け持つメンバーも出るが、監督にフォローをお願いしておく。


 まず、アレクサンドリア館長から貰ったアイコンで、デルタ次元の様式情報について目一杯インストールした。基礎概論から順次発展させて読み込んで行く。知りたい分野が系統だってインストールできるので、とても効率的。流石、図書館。他の方法では、ずっと時間が必要だったと思う。


 私の疑問のほとんどは、先輩方が解決していた。


 結論として、私の体から私の食べたサンドイッチを、錬成を使って消去する事はできない。


 私という情報体に連結しているので、私全体の様式情報を分解しなくては、私の一部だけの魔元素をホール粒子に相変換する事はできない。物理よりも情報次元の法則が強く出る代表例だ。つまり、私の存在を情報次元のデルタ様式に完全解析できたなら、消去できる。


 その場合でもデルタ次元の様式情報は残るので、存在が無くなる訳ではない。再生もできる事になる。だから、これは消去ではなくて、デルタ世界と物理世界の相転移になる。


 惑星ザイオンが混じりっけなしの魔元素製だとすると、惑星世界丸ごと演算できる超巨大超高密度超大深度の6次元量子電脳空間でなら、ザイオンを様式変換して真空に物理開放できるかも知れない。情報連結して別の時空間に転移した様式情報を再錬成できるかもし知れない。


 人類にとり、まだそこは空想魔法の領域で、情報の慣性について断定できる程の宇宙的なマクロデータを得てはいない。つまり、当面の心配事は片付いた。


 実験で確認できるレベルでは、魔素製の料理を食べ続けて問題なし。安心した。情報連結とライブラリの技術は、奥が深いがロジックは真っ直ぐだ。曖昧な効果アルゴリズムが無いのでありがたい。


 というコトで、自分用ライブラリの充実を図る。


 図書館からパンケーキ含むデザートライブラリの様式を利用できる。でも、余りがっつき過ぎるのも、アレクサンドリアさんの顔が浮かんできて恥ずかしい。


 図書館の理念が利用者の貢献を前提にしている事は理解できてる。図書館利用者にはクラスがあるようで、私は相当優遇されている。私のこれからの貢献が発電機に見合うものなら、今後もみんなで win win の関係に入れてもらえるはずだ。


 *********


 フリーのライブラリーを漁って、役に立ちそうな様式をコピーする。


 私が公園に維持している演算空間と、魔水晶がデルタ次元に展開できるライブラリーを紐付けてOS領域はミラーしておく。障害や破壊にあっても、即時再構築できれば安心だからね。


 そうして、公園の空き地で、錬成鍋とは違う錬成魔法陣を展開した。


 私とマリオネット達が囲む空き地で、光を反射しない過疎空間場が空中に浮かび、力場のテーブルに、監督がコインを一握りジャラジャラと置いた。トーラス全域でまだ使える、コロニー船共通の公団通貨だ。


 力場テーブルは過疎空間場の下にスルスルと移動して、赤方偏移の暗い虹が一瞬脈動すると、コインは無くなっていた。


 記念すべき、私のライブラリーの1ページ目だ。コインは、主コーンから監督達が見つけてきた年代物。コインを1個目にしたのは、梓翔太的な伝統の感じ。


 昔見た映画みたいな記憶を辿ると、東京か千葉のどこかで久我凛子とAI翔太は原始的なライブラリを偶然作ってしまった。最初は物質消去の発見と思っていたが、過疎空間場の性質を調べ、変換であると考える様になった。


 変換力場の性質を調べるのに使ったのが、十円玉や百円玉だった。


 大きさ成分の均等な金属片は、実験のターゲットに頃合いだった。調達も簡単。


 実験を続けるうち、実験室のコアバンクメモリが消費されている事に誰かが気づいた。数や種類を変えたコインに比例した消費は、何かがそこに蓄積しているようだった。過疎空間の向こうなど、誰にも調査の方法がわからなかったが、地球コアバンクにアクセスする量子電場のインターフェースはモニターされていた。インデックスしてないデータは、使えない。当然のことだ。


 それらのデータフォークを追求し、高濃度のホール粒子空間に結像する事で、コインの再生に成功した。ここから、凛子の周辺は一変する。政治が反応したのだ。


 通貨偽造じゃないよ。スタートレック現実化に海の向こうが反応してたみたい。


 物質転送装置や複製装置は、人類の夢だったからね。


 でも、そう簡単にはいかなかった。


 当時は情報次元の知識が数学モデル程度しかなく論理研究は手探りだった。はっきりしている点は、変換し消えたように見える物がインデックスされていれば復元可能だという事。追求するうちに、今のライブラリとは別種の、ある種の様式連鎖に行き着いた。


 *********


 AI梓翔太から引き継いだ想いがある。そんな気がする。


 桜に連結するリソースに、謎ライブラリがあった。今ならできるかも知れない。


 ライブラリにプロトコルがないので、当然インデックスも見つけられない。だからデータフォークが見えない。でも、AI梓翔太は、知っていたはずだ。


 緒はわかる。登録したのは日本のコイン。枚数や組み合わせも思い出そうとすれば、記憶が解凍されるように思い出せた。丁度、金庫のダイヤルを合わせるのに似ている。ライブラリの空間周波数や密度は、様式の外からでもわかる。


 空間周波数の変位、つまりライブラリの大きさとか複雑さがコインの組み合わせと相関する連鎖を見つけ、分子オルガンを起動すると錬成空間に結像する。一枚の十円玉が、空中から落ちた。


 続けて、ライブラリを再生する。何枚ものコインが現れてチャリンと落ち、古びたダンベルが落ちた。…ああ、これだ。ここから、重さと金属の種類を変えた。


 見つけた。これこそ久我凛子とAI梓翔太が作ったライブラリだ。


 そして、この最後には、あの研究室が、久我凛子が、…登録されている、かも知れない。


 ********


 急がない。謎ライブラリを保護して、できればこちらのデルタ領域に保存する。


 整理されたデータではないので、様式を区切る必要がある。ライブラリの後ろに行くほど複雑で混乱している。中身を覚えていても解析は困難だ。


 情報の連結単位が確定しないと様式の再現は失敗する。まして、最後のデータは建物の一部を切り出した混沌した様式だ。ノイズと言っても良い。


 それでも解析と再生は急いだ。広場にガラクタが積み上がっていく。


 様式が整理されていないので、端から手繰っていかないと、区切りが分からず、再生できないのだ。確かこの辺に…、


 力場のテーブルに、朱色の中華ドンブリが再生された。湯気の立つラーメン。


「春秋軒の味噌ラーメン」


 思わず、口に出た。所員に人気の出前メニュー。梓翔太の憧れメシだ。


 翔太の故郷は味噌文化の地方で、研究室の皆が絶品と言うこのラーメンには、チョット思い入れがあった。急いで、この様式がライブラリに登録された事を確認する。…確認した。ゲットだぜ!


 紅い雷文がとり巻く大ぶりの中華どんぶり、鮮やかな黄色味の縮れた太麺の上にモヤシと沢山の野菜、鮮やかな白に縁どられた美しい黄身が濃い目のスープに浮かぶ。身のしまったチャーシューと黒い海苔がアクセントに添えられている。基本に忠実でバランスの取れた一枚の絵のようだ・・・。


 それでは、いただきます…。割り箸を一緒に変換しなかった事が悔やまれる。






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