表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/67

第15話: 精霊王女、爆誕 かも

 

 さて、状況は把握された。客観的に見て、絶体絶命だ。


 むこう女装坊っちゃまはハーレムを楽しんでるから、まずは、どうでもイイ。


 ココには、機能不全でぶっ壊れた土木機械と残りわずかな培養資材。電力は本体からコッソリ引いてる。コロニー主系統の設備には、たぶん監視ナノボットが付いてるに違いないが、これだけコーンが暴れていれば、多少の漏電など誤差の範囲。


 公園ユニット地下隔壁に退避したのは、工事ドロイドとは思えない監督のファインプレーだ。元々は大樹のユニットなので、監視から漏れている可能性すらある。


 わずか三百メートルほどの公園ユニットは、小さく強固に作られて、樹木に必要な重力調整のため大樹の外側にぶら下がっていたはずだ。今はミラーをつけて、断続的に外の自然光が入る構造にしてある。記念碑に組込む時、動力にたよらない環境維持を工夫したのだろうが、おかげで気温と酸素供給が公園からできる。


 さすがに荒れまくっているが、公園は小川と丘のデザインで、循環水プールがある丘の上を桜の大木が覆っている。大樹のイメージに相通ずる公園の女王で、丘の上の石碑によると、地球の3本の銘木を親木に枝をもらって寄せ植えした記念樹だ。推定250年ほどを経たはずだが、奇跡的に健在だ。


 そして、周期的に来るこの振動。


 コロニーの大コーンは、粉砕した岩石と氷の層が主な壁材で、氷はとっくに蒸発している。結構な速度で回転する外壁は、大質量の割に柔軟で多少のブレは吸収するが、当然限界がある。もって、後1〜2年でパンクするだろう。その前に、振動で、ここの機材やカプセルが分解する。


 まずは、監督のフリーズしている体を自由にする。監督は、保守点検用の自動機械とは思えないほど、ハッキリした知能を持っていた。熱意すら感じさせる。


 いちいち文書を交換する会話も、手順がルーチン化すると不思議と面倒がない。


 むしろ、図面とタスクプログラムが挟めるので、計画を相談するには、会話より便利なくらいだ。


 ただ、…なんか、標題のタイトル扉に、やたら凝ったイラストやポエムが挟まることがある。製造からカイゼンを続けて二百数十年、コロニーを守り続けた監督は誰も気づかない所で、どうでもいい進化を遂げていたようだ。しかも、私への愛が熱すぎる。


 監督に続いて、行動可能な作業機械たちを監督が組み上げて一緒に起動する。不具合も多いが、そこはマスターキー、力技でプログラムをぶち込んでカバーする。


 監督のチームが何とか揃った。新顔も居るそうだ。


 まずはジャンクから主系統へのアクセス基地局を組んで、コロニー本体に探りを入れる。志願した工事ドロイドを改造してナノボットを量産、監視機構をハックしてマヒさせるためだ。


 地雷原を行くように、公団の監視ラインを探り出したが、思ったほどの量は無かった。破壊目的だものね。出入りだけチェックしたいようだ。誰かを誘き出したかったのかも知れない。監視ラインには夢を観ていてもらおう。


 さすがに、ジャンク部品も素材も寂しくなったので、ボットには索敵ついでに資材の調査もしてもらう。私の栄養資源も見つけてもらわないと困るが、幸い、原料はすぐ見つかった。古くなってダメなものが多いが、あちこち探せば、使える材料から何とか作れる。


 1年以内にカプセルから出る必要がある。ナイスバディは間に合わないが、可能性は残そう。何とかするためにも、演算領域の増設が急務だ。


 あちこちの廃棄量子電脳をひっぺがして無事な部品を繋げても、計画には足りない。毎日増産するボット軍団で調査を広げたが、ちょっと思いついた。


 エイリアスのライブラリで相似連結の技術詳細がわかった。安全を担保するのに少しかかったが、増産したナノボットに連結魔法陣を組み込み、他のボットも改造させた。


 複雑な機能が伝わるようになったら、ナノボットでナノボットを増殖する。


 後は、材料ある限りバイバイゲーム、物量の勝負。ナノボットと取り付いた廃棄量子電脳、情報バンク、ありったけ全部に相似接続する。そのジャンク電脳空間に取り付いて丸ごと飲み込む。幼児の頭脳ではパンクする。カプセル周りに集めたナノボットで量子回路を作り、デネブの精霊石から技術情報を引き出すと量子魔法陣を起動、錬成力場の展開・相位機関を構築して力場電脳を広げていった。


 監督とチームが慌ただしく出入りして、回収した部品が隔壁内に収まらなくなると、公園に天井まで足場を組んで回路を広げた。公園は酸素の供給源だ。余り潰せない。監督の腕の見せ所だ。余力ができたチームは公園ユニットのジョイントに磁気ダンパーを組み込んでいる。ほどなく効果は体感できた。


 ナノボットの物量斥候で意外な物が見つかり出した。大量の記憶結晶や印刷メモリ、厳重に梱包されたマリオネットなど、いわば、市民が普通に処分し難かった廃物だ。コーン内壁の氷層に埋められていた物が露出して外壁に溜まっていた。


 簡単に言えば、百年分の秘蔵のエロ本や元カレ写真集の類い。コロニー外壁の氷の中には、思いがけない黒歴史が埋もれていたようだ。


 当然、記録にないので誰も気付いていないが、全てが露出すると人間ぽい姿も見える。安心した事に、ほぼ全てマリオネット(機械仕掛けの愛玩ドロイド)だった。ほぼ、なので…例外は、ある。… ナンマイダブ × 2…。


 そして閃いた。


 マリオネットの中には、ファラオ並みに大切にシールされて埋葬されている個体がある。大体は美しい女性、少女もある。そして、その内の何割かの保存の良い物は、かなりの機能が再起動できた。特に、コミュニケーション機能と、その制御。


 人形なので、ドロイドよりも簡単な制御脳は、ほとんど意思を持っていない。命令通りに、歌ったりお茶を入れるくらいの性能だ。ちょうど良い用途がある。


 自動機械メンテナンスキットのナノマシンやボットを動員して、監督とチームのみんなの外部出力に組み込んだ。おもちゃ版エイリアスだけど、これで監督や仲間と話ができる。今の私の家族みたいな存在だから。


「愛し子に幸いあれ」「お嬢様、今日の培養液は東区画の良い物が御座いました」「お嬢様を讃える歌を作りました。お楽しみください」「今日の見守り当番です」


 カオスにうるさい。しかも、自分、喋れんし。…忘れてた。


 建設機械から有線でぶら下がる人形たちが群がる光景は、実にシュールだった。


**********


 なんにしても、物量を増やして、ユニットを強化する作業は軌道に乗り、暇ができた。エイリアスのライブラリは、まだまだ試したい事ことが多いが、まず、大量で大漁の記憶結晶を利用したいと思った。これも物量であたる。電脳空間に自分のタスク実行ユニットを増殖させて、結晶を解析した。


 結晶には滅多にないはずの破損も多い、全部ゴミだ。でも神槍に生きていた市民の証と思うと、まとめて、ただ消去は、できなかった。それに、確かに千のエロデータに一つくらいの割合で価値ある遺物が有った。


 実は、こうして増殖して解析に当たっているうちに、ナノボットの電脳空間でも精霊石のものでもないライブラリ接続を見つけた。最初は、公園の開けた空間に展開した力場電脳が読み込む、雑音程度の相似連結だった。反応とか印象が普通と違う。ぼんやり繊細で何か生物的な感応…のような印象。しかも、解析しても端が見えないというか、広大な未使用リソースが広がっている。


 その時は、擬態した迷路罠に連結したかと、すごくびびった。…漏らしたかも。バイオジェルの中だから構わんけど、幼児の尊厳がね。


 慎重に解析して、公園の桜の大木を媒体に連結していることが分かると、感度がきっちりして、印象が量子通信のレベルで落ち着いた。


 理由はわからないが、公園の桜女王がアンテナ的な役割をして、どこかのとんでもない規模のリソースに繋がったようだ。しかも、利用できそうなライブラリが既にある。使える物はなんでも使う。自分のためには貪欲であれ。それが女子の嗜み、だったような気がする。


 たっぷりの情報空間リソースが手に入ったことで、作業はさらに効率化した。


 処分しようと思っていたエロデータも、せっかく回収したのだから、神槍の今は亡き市民を偲んで、この新しいライブラリに放り込んでみた。この量でも、まったく問題ないようだ。試しに、軽く解析してみる。…問題なし、これで色々できる。


 宇宙がどれだけ広いか知らないが、多分私は、宇宙で1番のエロデータ+ゴミ知識を持つ幼女だろう。…誰得だよ。


 副産物として、神槍の紳士たちの嗜好がわかった。意外な事に、一番人気は<ブリュンヒルデ>似の女の子だ。


 あるにはあるが、そんなに自己主張しない慎ましいプロポーション。いや、着痩せして見えるけど腰つきはかなりのモノかも、…それになんと言っても、媚びることのない笑顔。…奥が深い…。


 ナイスバディの定義が、少し変わるかも知れない。


 どこかの女装男子のために、幅広い嗜好を纏めておいてあげよう。

 推定ナイスバディの未来で、私と出会う前に変な Boy の Love など拗らせないようにね。


 *********


(補足)

 トーラス宇宙気流内縁、探査船本部基地:皇宮ステラパレス:5代皇の時代

 探査総括シミュレーション施設「アーケード」にて、非公式の音声記憶


 プライム:ルルド・スメラギ・シューティングスター(ニート帝)

「物理宇宙の光速は超えられない、情報宇宙では同様に深度が因果の限界となる」


「だが、このライブラリは『地球の記憶』に違いない。恒星間の距離で道がある」


「トーラスの他の星系、他の惑星、太陽系にも接近できない事の理解になるやも」


「デルタ生物に光速を超える相似連結がある。物理宇宙でも双子の感応が有名だ」


「同一生物の連続したデルタ構造が深度を回避し、これを情報連結しているのか」


「地球とトーラスで、同じ遺伝子、同じ様式を持つ生物が、渦流を媒介してます」


「双子タレントの片方を地球に置いても接続は無理です。単一生物はありえない」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ