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マイワールド

作者: レッド
掲載日:2009/02/18

「努力しても報われないって、どういうことなのかしら」


そう言いだしたのは、この間行われた中間テストの結果を見ながらぼやいた、部長だった。

部長というのは、演劇部の部長である。


「そんなに悪かったんですか?」

「べ、べつにっ、わ、悪くないわよ!」


必死の反論だった。

まあ、深く追求しないことにしよう。

現在、部室には俺と部長の釘宮あゆみの二人だけだった。


「そういう、神原くんこそどうなのよ」


神原健二、それが俺の名前だ。

テストネタは、まだ続いていた。


「まあ、学年順位の中間くらいですかね」

「ふ、ふーん。ようは普通ってことね」

「ええ、まあ。部長はどうですか?」


結果として、良くないのは分かっているが、あえて聞いてみる。


「ふ、普通よ。普通、問題ないわ」


ま、大方予想はついていたが。見栄を張る部長だった。

努力しても報われないって言った時点での俺なりの憶測だが。


「それはなにより、では最初の、『努力しても報われない』というのはどういう意味ですか?」

「それは……。テストに限らず、いろいろな面でのことでよ」

「努力はいつも報われるとは限らない、ってことですよね」

「それは、わかりきったことなんだけどね。何を今更的な話だけどさ」

「まあ、わからなくもないです。頑張ったのに成功しないって、納得できないですよね」

「そうよ、それが言いたいのよ」


実際に、受験などで、合格のために勉強したけど結果は不合格、というのは

ただ単に、実力が足りてなかっただけのこと。

それでも、一夜漬けの勉強で合格した人が身近にいれば、納得できないかもしれない。

そういや、いたな、知り合いに。


「日直で遅れましたー」


ちょうど入ってきたのは、今言った『一夜漬けの勉強で合格した男』の佐藤雄二。

元から学力があったのもだが、授業ろくに聞いてもいない上に、毎日のように遊んでいたことを考えると、必死の勉強で合格した俺からしてみれば、納得ができない。


「雄二は何かあるか? 納得のいかないこと」


荷物を置き、椅子に座る雄二に話しかける。


「納得のいかないこと? んー……強いて言えば、提出物やテストの点数が平均点以上なのに、好き嫌いで成績をつける先生、かな」

「……そういやいたな、そういう先生。中学のときに」

「健二は好かれてたから、それなりの成績だっただろ?」

「まあな、おかげで助かったけどね」

「ちょっとそこ、二人の世界に入らないの! 私も話に混ぜなさい」


いきなり、ついていけない話になったからか、部長が不機嫌気味に言う。


「すいません部長。部長が納得いかないのは、努力したのにテストの結果が良くなかった、って話ですよね」

「い、言うなぁああああぁあっ! というか、私の成績は普通だったと、先ほど言ったばかりでしょうが!」

「ああ、そうでしたね。というか今、自分から肯定したようなものですよね?」


段々と不機嫌になってくる部長。

よほど、悔しいのだろう。結果に。


「何が普通なの?」


そう言いながら、部室に入ってきたのは、部長と同じ三年生の坂上沙希だ。


「ぅぐ、なんだっていいでしょ。なんだって」

「そういえば、今回のテスト、せっかく教えたのに、ダメだったみたいね」

「い、今言わなくったっていいでしょっ! 後輩だっているんだし!」


それをわかってて、あえて言っているんだと思う。

こういう関係って、たまに小説やマンガとかに出てきそうな感じだよな……。


「赤点を免れただけ、マシだと思うけどね」

「沙希ってば、絶対意地悪で言ってるでしょ」

「ええ、それが私の生きがいだから」

「何その生きがい!? もっとマシな生き方を見つけてよ!」

「私からコレを取ったら、何も残らないのよ」

「どんだけ!? 私、あんたの中で、どんだけ大きな存在なのよ」

「アリと同じくらい」


言いながら、人差し指と親指で、このくらい、と見せる


「小っさ! 私の存在ってアリ並なの!」

「ごめん、ミジンコ以下だったわ」

「余計最悪なんですけど!」


部長は、不機嫌になったのか、そっぽを向いてしまった。


「私の一番の納得のいかないことは、なぜか皆が私を馬鹿にしてくることよ!」

「あらあら、かわいそうに」


坂上先輩は、部長の頭に手を置きながら言った。


「一番の原因がそれを言う!? 白々しいわね」

「どこにでも必ずと言っていいほど、『イジラレキャラ』というものはいるわ。本人の了承もなしに、でも、あゆみはそういうの、好きよね。だから私は、心を鬼にして、あなたを罵倒し続けるの」

「勝手な思い込みでしょ、それ! 全然好きじゃないわよ! 勘違いも甚だしいわっ!」

「そんな!? 私が今までやってきたことって、いったい……」

「何その驚き!? 当たり前でしょ、そんなの! いじられるのが好きなんて思ったこと、微塵もないわ」

「私たち親友じゃない! 馬鹿にしないから、本当のことを話してっ」


目に涙を浮かべながら、叫ぶ坂上先輩。

ある意味、感動のシーンのように感じられたのは、俺だけなのだろうか。


「その言葉が、すでに馬鹿にしてるのよ! イジラレキャラが、どんだけ傷ついてるのかがわからないの!?」

「ええ、わからないわ」

「即答!? そこは、『わかったわ、ごめんね、もうしないから』とか言って、仲直りするシーンじゃないの!」

「それじゃ、つまらないじゃない」

「面白い云々よりも、友情を大切にしようよ! このままだと、あなたと親友でいられる自信がないわ!」

「私にはあるわ」

「何を根拠に!? 私が自信をなくした時点で、仲は最悪の状態よ!」

「大丈夫、心配しないで、私があなたを目覚めさせてあげる」

「何をよ!? 目を覚ますのは、沙希の方よ!」


いつまで、続くんでしょう、この話。


「まあ、そんなことより、何の話をしてたの?」


坂上先輩が、いきなり振り返って、話しかけてきた。


「そんなこと!? 今の話を、そんなことで終わらせちゃうの!」

「ごめんなさいね。二人きりになったら、ゆっくりと、調教してあげるから」

「なにその危ない発言! 危険ワードよ、それ!」


そのあとの部長の文句を、普通にスルーする坂上先輩。

……この人は。


「えと、努力しても報われないのはどうしてだ、という部長の発言から始まりました」

「ふーん。努力しても、ねえ」


坂上先輩は、チラと部長を見る。

部長が「何よ」と言ったのに対し、「別に」と答える坂上先輩。


「先輩にも、思い当たる節はあるんですか?」

「ん? いっぱいあるわよ、人生生きていく中で、そういうのは特にね、まあ、いちいち気にしてはいないけどね」


まあ、そうかもしれない。

自分の思い通りにはならない、ってのもよくある。

だからどう、ってことはないのだけれど、先輩の言う通り、いちいち気にしても仕方のないことなのだろう。


「たとえば、こういうのってのは、なんですか?」

「たとえば、ねえ……。好きな人に告白するために、がんばって綺麗になったのに、見事にフラレたってことかしらね」

「先輩にも、そういうことって、あるんですね」

「見た目より、内面を見る人だったんじゃないかしら!」


ここぞとばかりに、部長が割って入ってくる。


「黙らっしゃい! どちらもアウトなあんたに言われたくないわ」

「ふ、ふん! こう見えても、私だって告白されたことはあるわよ」

「あれは変なおっさんに、でしょ! 変な勧誘の」

「な、ナンパだってあるわよ!」

「迷子に間違われただけでしょうが」


二人の言い争いが、再び始ってしまった。


「あ、あのぉ、何かあったの……?」


入口の所に、俺や雄二と同じく二年生の島田薫がいた。


「別に、気にすることじゃないよ。なんだかんだ言って、仲の良い人たちだから、すぐに収まるだろ」


しかし、こう見ると、姉妹に見えるかもしれない。

同い年だけど、部長が小さめの見た目小学生。坂上先輩は普通なのだけど、部長との身長差があるから、姉妹に見えてしまう。



わが、東乃学園演劇部は、全員合わせて9人。

秋の学園祭に向けて頑張っています。


しかし、結局練習を始めたのは、30分後に顧問の先生が来てからだった。

この小説を読んでいただき、ありがとうございました。

今回も短編として投稿しました。

読んでみて、意見や感想がありましたら、お願いします。

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