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序章 


 序章 

 

 バブル崩壊から30年前後。

 長引く不景気は未だに影を落とし、廃墟がそこかしこに残る。

 

 例外無く。

 裏社会も例外無く。

 

 度重なる抗争、分裂、法規制、高齢化。

 かつての栄華は見る影も無く、裏社会の利用者は掌を返した。

 

 極道社会は衰退の一途を辿っている。


 ● 


――世は斜陽、しかして月の影あり。


 ●


 遠くに月が見えた。

 雨の中に梅の香りが僅かに混じっている。


 雨雲の切れ目から月光が差し込んでいる。

 ざあざあと雨が降る中、座っているベンチは照らされている。


 雨月の夜。

 2人はベンチに座って雨脚が収まるのを待っている。


 肩にマフラーを羽織った、蛇を思わせる男。

 数多くの男達を従える男が、今晩は供も連れずに歩いている。


 蛇塚 藤吾。

 悟道会直系、蛇塚組、組長。

 

 40代後半程の男が足を組みながらゆったりと口を開いた。


「はぁ、従兄弟叔父」

「はい」


 20代後半程の男が頷いた。

 

 聞けば両親は生まれてすぐに行方不明。

 赤ん坊だった男を引き取り、育てた従兄弟叔父が急に家に帰って来なくなったと言う。

 

 携帯電話は通じるものの返事が帰ってこない。

 警察も腰が重く、探偵に依頼しても結果は芳しく無い。 


 挙句の果てに全ての探偵事務所から調査を打ち切られ、どうしたものかと途方に暮れている所に。


「俺が来た」

「はい」

「そらぁ、邪魔したなぁ」

「いえ」


 薄く笑いながら言うと、首を振りながら真面目に返された。

 会話が途切れる。


 雨が止み、朧月に変わる頃、蛇塚は男の顔を見た。


「手伝うたろか」

「……」

「そん代わり――」


 煙草を咥えると同時にマッチを擦る音がした。

 バツの悪そうな顔で蛇塚は火に煙草を近付ける。


 蛇塚は思い切り紫煙を吐き出す。

 煙の向こう、僅かに湿った月を見た。


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