エチュード2
眠り方を忘れてしまった私。
真っ暗な部屋で天井を睨みつけてみる。
何も浮かんで来やしなかった。
眠れないのはこれで三日目だ。
昨日も一昨日も眠れなかった。
夜中は全然眠くならない。
朝食を食べていると段々眠くなる。
日中もずっと眠い。
だから高校で先生が何を言ったか、
友達と何について話したか、
全くと言っていいほど覚えていない。
でも夜のことは覚えている。
二日ともこうやって眠れずに、
悶々として考えていた。
母のこと、進路のこと、優也くんのことを。
よし、と私は意気込むように呟き、
そして電灯をつけて身支度を始めた。
パジャマからTシャツとチノパンに着替えた。
鍵と五百円玉だけポケットに入れる。
時計は午前二時を指していた。
深夜の散歩の、はじまりはじまりだ。