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93.最後の魔神と再評価

割とどうでも良いニュースですが、作者名がユーザー名と同じになりました。

もう一人投稿する予定だった人の筆が折れてしまったので、分かりやすくしました。


幾つか作品を同時進行してみて、筆が進む物を投稿する予定で居たみたいですが、最終的に全部詰まったらしいです。

自身がそんな事になったら、確かに精神的ダメージが大きい気がします。

今回の舞台は、【迷いの森】である。

パペット三人組がオトルスから帰還し、住居前まで来た所だ。

どうやら来客が居たようで、その者とフィーリが立ち話をしている。


「分かった?今後知らない者の言葉を簡単に信じちゃダメよ?」

「ああ、約束する」


来客は、何故か説教されている。

茶色のコートのような物を羽織った、ナイスミドルである。

見た事が無い者だが、どこかで聞いた声だ。


ここでフィーリが三人組に気付き、手招きする。





「この子が、魔神【炎羅】よ。やっと見つかったわ」

「よろしく。普段は、キール=マグナードと名乗っているよ」


なんと説教されていたのは、キールと名乗る、魔神【炎羅】である。

三人組も名乗って挨拶を交わすと、妙な事を聞かれる。


「実は【加護】を回収する事になったんだ。お嬢さんの分を返して貰って良いかな?」

「え?」


視線が合っているのはリコラディアであるが、何かを貰った記憶はない。

本人だけでなく、三人組には思い当たる物が無いので、揃って首をかしげる。


「この声を出せるアイテムか、それに近いスキルが有るはずだよ?」

「あー!どこかで聞いたと思ったら、ダンディボイスと同じ声!」

「そう、それが【加護】の中でも上位の力で、ぜひ回収させて貰いたい」


知らずにとんでもない品を手に入れていたようだ。

元々あまり有効利用していなかったので、返却する事にした。


三人組に知る術は無いが、実はこの声で炎羅のスキルが使える。

ただの隠し芸スキルではないのだが、使用方法が分からなければ意味が無い。


「では、失礼して」

「え?な、何だか緊張するわ…」


キールはリコラディアの手をそっと取り、そのまま祈るようなポーズを取る。

回収作業はその動作だけで終わりのようだ。


「協力に感謝。これはお礼のプレゼントさ」


キールは炎を浮かべ、小さな花の形を作ったかと思うと、そのまま渡してくる。


恐る恐る受け取ると、火は消え宝石のような物が現れる。

熱は感じるが、触っていても火傷するような物ではないようだ。


「さて。もし良ければ、近い内にディナーでも…」

「あー、はいはい、そこまでよ。まず相手は一人に絞りなさい」


今まで口出ししなかったフィーリが、ここでストップをかける。

キールは知り合った女性にすぐ声を掛けるので、誰かが止める必要があるのだ。


「フィーリはママのような説教をするね。絞るなら、空で出会ったお嬢さんかな」

「誰の事か分からないけど、他に手を出さないなら応援するわ」


その後も割としょうもない話が続くが、これがキールのキャラである。

良くも悪くも、緊張した空間を破壊する役割になっている。


なお、集合に遅れたのは、主に女性を口説いていたからである。

その内の何人かが邪神【黒渦】の手の者で、

気を取られている内に経験を丸ごと奪われてしまったのだ。

冒頭の説教はこの件から始まっている。


「ところでキール、頼んでいた件はどうなったの?」

「マグマ・ゴーレムの事かな?この後会う事になっているから、任せて欲しい」


この話は、【ズバシュー屋さん】に居るマグマ・ゴーレムの事だ。

以前炎羅の素材を取り込んで大変な事になったが、応急処置で持たせている。

ようやく本人が見つかったので、これの摘出を頼んでいるのだ。


「それが片付いたら、また計画が進みそうね」

「魔神全てを集める程の"何か"を楽しみにしているよ。ではまた近い内に」


キールは帽子を取り、別れの挨拶をした後歩いて行く。


「ああ見えて、本気になると結構強いのよ?」

「ちょっと話を聞いただけでは、強さがよく分からないな…」

「例えて言えば、そうね…今見える範囲は一瞬で灰に出来るくらい」

「「「!?」」」


もし魔神に挑む場合は、規格外の攻撃性を抑え込む何かが必要である。

しかし、そこまで出来たとしても、勝てるかどうかは別問題である。


「今日はもうすぐ夕方だから、戻って冒険の話を聞かせてくれる?」


三人組は、住居に戻った後、オトルスの出来事を話す事になった。

日々の成果を確認する意味もあるが、単純に楽しみにしているようだ。


------------------------------


一方こちらは、ゼクト領中央都市のマデイラである。


定期的に開催される領主会議だが、領主以外の者が集まる時がある。

今回がそのパターンで、普段と比べるとかなり人が多い。

ある一人が喋り、それに対して領主らが質問攻めにするスタイルである。


「【銀翼】は、堅実な活動と地域貢献をメインに活動しております」


喋っているのは、多数あるギルドの一つ、【銀翼】のマスターである。

ゼクト領のギルドでは、中堅あたりの位置である。


「依頼の安定率では上位ギルド並ですね。ただ、高難度依頼は芳しくないようで…」

「そちらも対策は進めております。新たな戦力と、アイテム工房へ投資することで…」


実は今回の会議は、ギルドの査定である。

動きが大きい所のチェックや、評価が妥当かを話し合っている。

ギルドの者は各地に飛び回るので、普通のやり取りでは効率が悪すぎるのだ。

そこで、一度に解決しようとしたのがこの集まりである。


何度かこのやり取りを繰り返した後、場の雰囲気が変わる。


「【黒爪】は、高難度依頼をメインに活動中です」


今喋っているのは、フェイリアである。

この場には初めての参加だ。


「依頼の履歴を見ましたが、これは事実ですか?」


領主の一人が、紙を取り出して指差す。

そこには達成した依頼の一覧が書かれており、凄まじい数だ。

しかも、殆どが高難度依頼で、異様としか言いようがない。


「ええ、全て達成を確認しました。何か問題でも?」

「そう言う訳では…」


このデータは、メイド狂達が基金を作っている時の状況である。

一般的には全滅覚悟の高難度依頼を、山のようにこなしているのだ。

前代未聞な状況ゆえに、成果を疑われてしまっている。


そこへ、フォローする人物が現れる。


「魔女殿と、その仲間の実力は保証する。実際にこの眼で見ている」

「クラーグでも、国家プロジェクトのメインを担当して貰っていた」


真実なのだが、それはそれで、今まで目立たなかった事に辻褄が合わない。


「恐らくだが、最近まで闇ギルドと間違われていたのではないか?」

「確かに…遡って見ると、公式依頼が殆ど無いですね」

「問題のあるギルドリストにも、似た名前が大量に。【黒牙】、【黒槌】等々」


これは邪神【黒渦】の世界である。

同族である邪神の経験を奪い、それを育成している。

育成方法は簡単で、集まったメンバー全員に経験を装備させて使わせ、

最終的に全員の経験を根こそぎ奪えば育成完了である。


放置していたら大変な事態になっていた事は間違いない。


「そもそも、この成果でギルドのランクが低いのは問題では?」

「実績を見ると、上位ギルドより成果が出ていますからね」

「これは再評価という事で問題なさそうではないか?」


ギルドの評価と実情が一致しない場合、再評価を付けて貰う事が出来る。

その場合、専門の者が直接ギルドへ赴き、実際の状態を確認する。

どうやら黒爪は、良くも悪くも評価が変わりそうである。

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