90.適合者と木霊情報
森の謎を追加放流してみました。
この情報があった方が、ラストで納得行く終わりになるかなと思った次第です。
「これはどういう事?何があったの?」
「「「それが…」」」
ここは、トリナムにある団体客用の宿屋である。
各団体に割り振られた場所のうち、ギルド【ワークプレイス】専用の大部屋だ。
十四階では足手纏いになると判断し、待機していた女性メンバーが出迎える。
大手ギルドは、こういう場合でもメンバーを再編成できるのが強みだ。
帰って来たメンバーが次々と大量の素材を下ろし、部屋の隅に積み上げて行く。
「十四階を突破したのですが、その時入手した素材がこれらです」
「それは分かるけど、量が異常…」
今回の持ち帰りアイテムは特に多い。
同じようなアイテムばかりで、持ち切れないのか服に縫い付けている者も居る。
縫い付けた素材を売れば、その金で服を買えるので、実質収入アップだ。
ジールメントは、これについての説明を続ける。
「ジュディットさんの希望で、十四階の敵を狩り尽くしました…」
「とても充実した一時でしたわ」
「我々は、ほぼ着いて行って物を拾うだけでした」
階のクリアは順調に終わったのだが、その後もダンジョン内をうろついている。
特に損失もなく、素材は不要との事で利害が一致し、今後の為の金策活動としたのだ。
ただし、充実したという事は、とんでもない惨劇が起きている。
精神力を支払い、金銭を得た訳である。
「え?凄いのね、あなた…どうやってこの数を倒したの?」
「世の中には聞かない方が良い事もある!それより、この蜜でドリンクを作ってくれ」
一緒に潜っていたフレイズが制止を掛ける。
これを聞いてしまっては拠点待機した意味が無いのだ。
実は、ジュディットは邪神の適合者である。
邪神特有の受け入れがたい能力を簡単に取り入れ、早速使いこなしている。
本人の戦闘力は一般人レベルであるが、攻撃面だけは邪神レベルになっているのだ。
…
「それにしても、最後の妖精は心が温まったよな」
「手を振って送り出してくれるなんて思わなかった」
「体に良さそうな蜜も貰ったぞ。次はお礼に行かないとな!」
他のメンバーが話しているのは、最後に遭遇した味方の妖精である。
階を移動する事は禁止されているので、その場合は見送った後に戻っていく。
「「残念ながら、そいつの素材がこれだ…」」
「嘘だろ…」
ジュディットは容赦しない。
しかし今回最大の功労者なので、誰も文句を言えない状況にある。
…
「ところで、ジュディットさんはマナ切れにならないのですか?」
不意に質問を入れて来たのはジールメントだ。
魔法を使う者なら、普通は全滅させる前にマナ切れになる。
これを防げるなら大分冒険が楽になるので、秘訣があるのか聞いているのだ。
「何もしなければ枯渇しますわ。ブラッド・マジックのお陰ですの」
ブラッド・マジックは、生物の血液を使って魔法を発動出来るものだ。
女性メンバーがドリンクを作っている間に詳細を説明する。
「全身傷だらけにした後、踏みつけていた妖精はその為の…」
「や、やめろジーさん!思い出させるな!」
聞いた所で、実際に使える者は限られそうである。
なお、ショップ係のジュディットが冒険しているのは、訳がある。
自衛手段を得るための訓練でもあるのだが、邪神のエネルギーを消費したいのだ。
妖精の森を大改造した時にマナを大量消費したので、バランスを取らねばならない。
ついでに、"趣味"を封印した事によるストレス発散の機会である。
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一方こちらは、惨劇の事などまるで知らない、パペット三人組である。
フィーリからの課題であったキュア・ポイズンの習得に成功し、それを伝えた所だ。
「あら?もう出来ちゃったの?」
「まあ、サポートして貰ってたからな」
フィーリは無茶な課題を出している事を理解しており、まだ掛かると思っていた。
協力者に加えて、リコラディアによる授業のお陰でもあるが、このペースは異常である。
「良い意味で予想が外れたわ。次の計画まで時間があるから、謎解きして待っててね」
そう言うと、手を差し出し、光の玉のようなものを出す。
グリンは察し、その玉を鑑定する。
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種族:魔神【木霊】 Lv360
技能:
<木霊> 声を三回まで反響、植物を品種改良・強化できる
<拠点作成> マナを消費し、その量に応じた拠点を作成・再構成できる
<グロウ・アップ> 植物を急速成長させる事ができる
<ダイナミック・リンク> 拠点を使用できる
<スタティック・リンク> 拠点になれる
<シンボリック・リンク> 拠点間のリンクを作成・解除できる
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「「「これは…うーん…」」」
「あはは、初めてフェイリアに見せた時と同じ顔ね?」
魔神【木霊】は、拠点を作り、その中で活動するタイプだ。
本人は戦闘力皆無で、拠点が破壊されれば詰みと言う大きな弱点がある。
これらの弱点を見えない所でカバーしたのが今の状態だ。
三人組は、今まで見て来たものから推測を重ねてみる。
一部理解出来るものはあったが、魔法やそれに近い技術の情報が無い事に悩む。
やはり魔神の情報は簡単に理解し切れるものではなく、時間潰しになりそうである。
全く触れてませんでしたが、魔神は基本的に自分の得意な地形を持ってます。
その地形で戦えばかなりの強敵で、逆に関係ない地形では弱くなります。
木霊はそれを任意の場所に作れるというイレギュラー魔神で、拠点さえあればどこでも強いです。
ドラハの例では、湖で戦闘するととんでもない強敵で、更に巫女であるイリスが雨を降らせ、悪化させます。
このコンボで手が付けられなくなるのですが、イベントをこなした上で陸地で戦闘すると一気に弱くなる等色々な解決手段があります。