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89.魔王の間

勇者パーティ側から見るとここで一区切りですが、作品全体で見ると全く区切りじゃなかったりします。

その変どうしようかと考えてたんですが、読み手からすると今回の分け方が読みやすいかなと考えました。

必要に応じてこまごまとイベント回収していく流れになると思います。

【妖精の森】にある魔王城では、最終決戦が行われようとしていた。

道具をひっくり返したり、装備を整えているのは、勇者パーティだ。


暗黒騎士を倒し五階に到達したのだが、暫く進むと、とても大きな扉が存在していた。

ご丁寧に"魔王の間"と大きく書いてある。

これを見た一行は、決戦に備えた準備を行っている。


「皆、準備は出来たな?行くぞ!」

「「「了解!」」」


念入りなチェックを終え、最終決戦へ挑むべく大きな扉を開く。

罠は無いようだが、中は暗く、全く何も見えない状態だ。


「魔王!居るのは分かっている、出てこい!」


ボボッ… ボボッ…


ライザが叫ぶと同時、骸骨の手のような燭台に青い炎が灯っていく。

これは事前に取り決められた演出で、歴代の魔王達も行っている。

魔王と言うのは、"いかにも"な存在でなくてはならないのだ。


暫く待っていると明るくなり、魔王の姿が明らかとなる。


「我が名はザウド。蘇りし魔王なり!」


勇者パーティは、ついに魔王役のザウドと対面する。

外見は、牛と人を融合させたような、二足歩行の巨人タイプである。

筋肉の塊のような手には、巨大な戦斧が握られている。


「勇者ライザの名に懸けて、必ずお前を討ち取ってみせる!」

「フハハハ、そう来なくては面白くない」


ザウドは早速戦斧を構え、振り上げる。


「ハアァッ!」


ドゴオォォッ!


「くっ!?」


振り下ろされた戦斧は、ただそれだけで地面を抉り取り、破片を撒き散らす。

まずは破壊力アピールである。


「まともに当たると終わりだな…」

「ああ…やつはパワータイプか」


勇者パーティは情報を分析するが、何かが足りない事に気が付く。


「鑑定結果はどうだ?そろそろ情報が取れている頃だと思うが」

「そ、それが…」


イーザが言い難そうにしている所で、ザウドが代わりに話す。


「そんなものが魔王に通用すると思ったか?わざわざ見せてやる道理はない」


魔王が"設定"で成り立っている事を知られては困る為、全力で隠蔽している。

裏方作業員の力もあり、機密は保持されているようだ。


「パワータイプには魔法と相場が決まってるのよ。アイシクル・エッジ!」

「ぬう…ウオオッ!」


ズバッ!


アイシクル・エッジはザウドの腹にヒットする。

が、僅かなダメージに留まる。


「な、何て奴なの…まともに受け止めるなんて…」

「いや、この隙は貴重だ!ウォード、仕掛けるぞ!」

「おう!」


ライザとウォードは、息の合った動きで直接攻撃を仕掛ける。

戦斧はリーチがある分、至近距離では攻撃を当て難いからだ。


「食らえっ!」

「もう一丁、氷結剣!」


至近距離でダメージを稼ぐが、どれも小さなダメージで終わってしまっている。

これで反撃が弱まる事を期待したが、そう上手くも行かないようだ。


「ファイア・ストーム!」

「避けないと死ぬぞこれは!」

「魔法も使えるのか…!」


ライザとウォードは一目散に逃げるが、これは正しい判断だったようだ。

ザウドの放った魔法は、自分諸共燃え上がっていく。


全員軽傷で済んでいるが、また戦斧をすり抜ける戦術を考えねばならなくなった。

課題はそれだけでなく、ダメージ源をどうするかも解決しなければいけない。


「苦戦しているようですね」

「大賢者様!?」


急に現れたのは、相変わらず白いローブのままのフェイリアだ。


「大賢者の本当の役目は、魔王を封印もしくは弱体化する事です。見ていてください」


フェイリアは何か魔法を発動すると、ザウドが鎖のような物に繋がれる。

鎖は締め付ける力を上げているようで、体に食い込むような状態になっていく。


「ぐ…この程度の封印など!ぬうう…ウオオッ!」


ビキビキッ バキャッ!


「そ、そんな…封印が破られるとは」


なんと、特殊な封印を自力で解除した。


「フハハハ!先代魔王はともかく、我には効かぬわ!」

「それならば、武器だけでも封印してみせます」

「出来るものなら、やってみるが良い。ハアァ!」


ドゴオォォッ!


フェイリアが居た所に巨大な戦斧が振り下ろされ、やはり地面ごと抉られる。


「大賢者様が…」

「ほう?成程、自身を犠牲にして武器を封印したか」


ライザは必死で自身を落ち着かせ、状況を確認する。

ザウドは戦斧を持ち上げられない状態のようで、手にする事を諦める。


「だが、無駄だ。ブレイズ・エンチャント!」


そう言うと、ザウドは拳に火を纏う。

エンチャントとはシールの上位版で、そこそこ長い間、属性を付与する魔法だ。

装備だけでなく色々なものに属性付与出来るが、デメリットも付いて来る。


「火を纏ったという事は、近接攻撃で来るようだ。回避・回復優先で攻めるぞ!」

「「「了解!」」」





「どうした!逃げてばかりでは我を倒す事は出来んぞ!」

「アイシクル・ランス!」

「邪魔だ!ファイア・ストーム!」

「回避!」


勇者パーティは完全に逃げに入っている。

かすり傷程度のダメージでも距離を取り、回復しつつ戦っているのだ。

ただ逃げている訳ではなく、これには理由がある。


「随分お疲れだな?魔王さんよ」

「ハァ…ハァ…ファイア・ストーム!」

「うわっと!回復頼むぜ!」


ブレイズ・エンチャントはかなりの勢いで体力を消費する。

それだけでなく、維持しつつ魔法を使うので、精神面でも相当な負担である。

このデメリットを知っていた勇者パーティは、間接ダメージ源として取り入れた。


消耗するのは勇者パーティも同じだが、人数差とアイテムの力がある。

魔王は色々と制約があるため、そこに差が出て来た。


「そろそろ仕掛けるぞ、ライザ!」

「分かった、行くぞ!」


もう一度息を合わせて攻撃する二人。


「甘い!」

「おっと…今だ、ライザ!」


言われるまでも無いかの如く、既に構えていたライザ。

暗黒騎士との戦いで身に着けた技を使う。


「グランドスラッシュ!」

「ぐおおっ…ガハッ!」


ついに大ダメージを与える事に成功し、ザウドは膝を折る。

その瞬間、ブレイズ・エンチャントは消失する。


「見事、お前達の勝ちだ。しばしの安息を得るが良い…」

「しばし?どういう事だ」

「闇ある限り、魔王は復活する。フハハハ、さらばだ!」

「ま、待て!」


ライザは情報を聞き出そうとするが、ザウドは灰のようになり雲散していく。

目的は達しているので、気になる言葉を記憶し、魔王城を出る。

帰りは駐屯している騎士団の者に送迎して貰える手はずだ。





そして、クラーグ王城では、話を聞くために王様を始めとした面々が集まっている。


「そうか、大賢者殿が…」

「それだけが残念な結果となりました」

「残念ではないぞ」

「え?」


ライザは思わぬ言葉に、耳を疑う。


「おーい!入って来てくれ!」


王様はこのタイミングで人を呼ぶ。


「残念な大賢者、フェイリアと申します」

「あー!どこかで見たと思ったら!」


現れたのは、黒いローブを着た、いつものフェイリアである。

戦斧に潰されたのは、生み出しておいたシャドウ・ウィザードだ。

ネルは見た事のある人物に思わず声を上げる。


勇者パーティの育成が終わり、ネタばらしが始まったのだ。

ぞろぞろと人が入ってくる。


「暗黒騎士のシルヴィアです。演劇、天空の箱庭2もよろしくお願いします!」

「うむ、実はワシもファンでな。毎回最前席を予約している」

「王様…」


その後も見た顔が続き、勇者パーティは複雑な心境になるが…


「魔王のザウドだ。四天王・火と水も兼任した」

「「「「…誰?」」」」


勇者パーティには素の姿を晒していないので、出会っているのに初対面だ。


「僕達は裏方作業員だよ」

「「「「…」」」」


トースを代表とし、多数の者が現れる。

全員軽く挨拶した所で本日の予定は終了である。


「後日、クラーグを挙げての祭りが始まる。是非楽しんで欲しい」


珍しく、勇者パーティは全員揃って酒場に直行した。

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