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88.因縁の相手

変なタイミングですが…

以前どこかで書いていた十人以上で何かするシーンの一つが、この魔王城編です。

字で起こすとカオスそのものなので、大分人数を削ってます。


作り込みが一番楽しかったイベントでもあります。

前回に引き続き、【妖精の森】が舞台となる。

ここは魔王城から少し離れた所にある、クラーグ騎士団の簡易拠点だ。

勇者パーティの後ろから接近する敵を排除するという名目で、騎士が駐屯している。


全員が"育成プロジェクト"を知っており、わざと痛んだ装備を持つ等演技派が揃っている。


「うう…」

「勇者殿が目を覚まされた!水を持ってきてくれ!」


残念ながら、勇者パーティは敗北してしまった。

小鬼族をゴブリンと呼び、低級魔物としか考えていなかった事もあるが、

完全に対策を張られた状態で、成す術が無かったのだ。


なお、派手な装備の小鬼族は、以前ギギと一緒に戦っていた者である。

小鬼族の中では優秀な戦士であり、今回の小隊長として任命されている。


「他の皆は無事か…?」

「ええ、大きな負傷もありませんよ」


話していた騎士とは違う者が後ろから現れ、代わりに答える。

白いローブに、派手な装飾が大量に付いた人物である。


「大賢者様!?」


この人物は、着替えたフェイリアである。

勇者の称号を得る場合、大賢者からの祝福を受けるのが通例だ。

普段会う事は無いが、その時に顔を合わせている。


ライザは、ひとまず状況を報告する。


「…その後、全滅を覚悟した時に意識を失いました」

「最後は私の範囲睡眠魔法です。全員が眠っている内に救出しました」


今回、フェイリアはバランス調整係として参戦している。

と言うのも、この魔王城は歴代最高難度になってしまっている為だ。

良質な経験を積ませるのが目的で、敵役には殺すつもりで攻めるよう指示している。


お互いに情報共有した後、今後の話をするために他のメンバーと合流する。





既に治療を終えた勇者パーティの三人と合流するが、意外にもあまり落ち込んでいない。

全員無事な事を確認し、

負けはしたが、気持ちを切り替え、対策について話し合っているようだ。


「折角の会議ですが、あのゴブリンについて考える必要は無いと思います」

「何故です?」

「魔王は勇者討伐に失敗した者へ極刑を与えます。死は免れないでしょう」


魔王は残虐な独裁者である。

勿論それは"育成プロジェクト"の設定であるが。


「戦闘から一日ほど経ちます。今なら戦力が低下している筈です」

「確かにチャンスですね…皆、行けるか!」

「「「勿論!」」」

「私は魔王城に結界を張り、魔物を弱体化します。内部は任せましたよ」


フェイリアはそれだけ伝えると、茂みの中へ消える。

それを見た勇者パーティは、魔王城へ再度挑む。





「「はあっ、はあっ…」」

「この物量は何かの間違いよ…」

「…とりあえず、回復します」


前回戦った小鬼族は不在で、あっさり中へ侵入した一行。

しかし、内部はとてつもない数の敵で溢れており、まさにラストダンジョンだ。


一行は道中の部屋へ隠れ、暫く体力回復に努める。


「さて、物資はまだ余裕がある。どう進むか」

「外から見た限りでは、バルコニーが五階と思われる位置にあります」


話を進めて来たのは、紙を手に持つイーザだ。

建物の構造や簡易マップ等が手書きされている。


「あったのは見たが…それがどうしたんだ?」

「派手な装飾が付いていたので、恐らくその近辺に魔王が居ると思います」

「という事は、決戦は近いか。効果の低いアイテムは道中で消費して行こう」


今は三階で、すぐ近くに四階への階段がある状況だ。

敵が追ってこない事を確認した一行は、作戦を考えつつ、軽食を取る。


「それにしても、いつ食べても不味いなこれは」

「保存の利く栄養成分を凝縮したら、こうなったらしいわ。まっず…」

「え?確かに良い味では無いですが、悪くもないですよね?」

「はは、この二人は舌が肥えてるからな。俺は毎日じゃなければいけるぞ」


クラーグ特製保存食の評判は様々だ。

主に戦場などの、時間が重要な時に使われるものだ。

素早く食べられ消化も良いのだが、味だけはどうにもならなかった。





小休憩を終えた一行は四階へ辿り着く。

広い通路に大きな扉があり、それを開けると広間になっていた。


「ようやく来たか。久しぶりだな、勇者よ」


広間の中央に居る人物が話しかけてくる。

殺意は感じるものの、襲い掛かっては来ない。


「お前は、暗黒騎士!」


なんと、四階はいきなり強敵との遭遇である。

イーザは、この隙に鑑定する。


「鑑定結果ですが、以前と変わり無いようです」


########

種族:人間 Lv120

技能:

 <闇の眷属> 保存した影のスキルを使用出来る

 <呪われ体質> 呪われた装備を扱え、更なる力を引き出す

 <魔法剣士> 魔法剣を詠唱無しで使用できる

 <呪剣合成> 呪剣に呪剣、魔法剣を合成できる

 <呪いの一撃> 攻撃した対象に呪いの効果を与える事ができる

########


以前と同じとは言っても、魔法剣以外は殆ど情報が無い。


「このままやり合っても良いが…その前に、あれを見ろ」


そう言われ、ライザは一瞬だけ横を見ると、檻のような所に人影が見える。


「お前達が死ぬか、逃げ出せば、処刑する者達だ。顔見せ程度の時間はやろう」

「全員無事なんだろうな?」

「安心しろ、私は魔王様とはやり方が違う。五体満足ならば、見捨てる事は出来ないだろう?」


"演劇中"のシルヴィアは新しいスタイルを研究している。

悪役の王道、人質を試しているのだ。

密かに居る観客に評価を付けて貰い、高得点であれば演劇シナリオに反映するのだ。


勇者パーティは固まったまま檻へ移動し、中の者に話しかけてみる。


「勇者のライザだ、全員大丈夫か!」

「勇者様!?」

「お助けください!」


檻の中には十名が捕らえられているが、特に怪我などは無いようだ。


これは例によって仕込みである。

中に居るのは【迷いの森】で訓練をこなしていたパペットで、一般人ではない。


「必ず助け出す。見ていてくれ」

「あの、私達は魔法が使えます。少しだけですがサポートさせてください!」

「そうなのか、危ない時は頼む」


勇者パーティはまた中央に移動し、構える。


「話は終わったようだな。始めるとしよう」

「ああ。今度は俺達が勝つ!」


以前戦った時のように、シルヴィアは呪剣に手をかざし…

黒く燃え上がったような状態へ変化させる。


ライザは、あえてウインド・アーマーを使用しない。

強力ではあるが、実は仲間にも近寄れなくなる欠点を内包している。


「以前の借りを返してやるぜ!氷結剣!」

「面白い、受けて立つ。魔氷剣!」


ガキィィン!


ウォードが飛び出し次に繋げる、基本戦術だ。

二つの剣がぶつかると、周囲が凍り付き、冷気が漂う。


「チィ、まだ通せないのか」

「ほう…」


以前は惨敗したウォードだが、今ではかなり強くなっている。

しかも、事前にステータス上昇アイテムも使っている。

それでようやく互角レベルだ。


「良いぞ!ライトニング・ウェーブ!」

「合わせてアイシクル・エッジ!」


ライザとネルはタイミングを合わせ、習得した新魔法を叩き込む。

両名もステータスを増強しており、元から威力のある魔法が更に強化される。


攻撃が集中している地点は、酷い有様である。


「成程、ここまで来た実力は本物のようだ」


しかし、致命傷には遠かったようだ。

ダメージは確認出来るものの、まだまだ余裕がある。


「来るが良い。次は私の力を見せてやろう」

「ウォード、合わせてくれ!」

「よし、任せろ!」


ライザとウォードは、左右同時に仕掛ける。

シルヴィアは、それに合わせ剣を地面に突き立てる。


「呪炎剣!」


ドガァ!


「「ぐあああ…!」」


小さな爆発と共に、周囲に炎が沸き上がる。

致命傷ではないはずだが、ライザとウォードはかなり苦しんでいる。


「回復します!」

「「ぐうぅぅ…!あああ…!」」


回復により傷は塞がったはずだが、二人は相変わらず苦しんでいる。


実は、これは呪いの効果であり、直接的なダメージではない。

呪いの一撃 スキルによって、攻撃に"怨念の呪剣"の呪いを付与している。

これは耐えがたい激痛を与えるものである。


「クックックッ…さて、前衛二人は使い物にならん。どうする?」

「こうするのよ!パラライズ・ジェル!」

「遅い!夢氷剣!」

「う、ああ…」


ネルによる悪あがきも通用せず、攻撃を受けてしまう。

勿論イーザが回復を試み、傷は回復するが…

今度は"昏睡の呪剣"の呪いで、眠りに落ちている。


「最後だ。能力を使うまでもない」


攻撃手段を持たないイーザは成す術もなく倒れてしまう。


「「勇者様!今です!」」

「うおおっ!」


密かに補助を受け、解呪されていたライザが突撃する。


「くっ、小賢しい真似を!」

「しまった、防がれた!」


不意の一撃も防がれ、完全に終わりかと思われたが…


「な、何だ?何かのイメージが流れ込んでくる…」


ライザは暫く動きが止まったかと思うと、構え直す。


「来い、暗黒騎士!次が最後だ!」

「良いだろう。行くぞ、崩雷剣!」


シルヴィアは雷と呪いの混合で攻撃するようだ。

ライザはそれをギリギリまで引き付ける。


「ここだ、グランドスラッシュ!」

「な、何だ…があっ!」


ライザは未知の技を使い、反撃する。

シルヴィアは攻撃に失敗しただけでなく、鎧を砕かれ、派手に出血している。


「…どうやら私は負けとみなされ、処分されるようだ。さらばだ…」


そう言い残すと、影が広がり、その中に沈んでいくように消える。


「「「「勇者様!信じていました!」」」」

「皆のお陰で何とかな…悪いが、回復を手伝って欲しい」


ギリギリのところで不思議な力に助けられたライザ。

パペット達に手伝って貰い、メンバーを回復する。





その頃、"観客席"では…


「これで良いのでしょう?次はそちらが約束を守る番です」

「勿論さ。上手くやってくれたね、バスカ」


話しているのは裏方のトースと…なんと、邪神【黒渦】だ。


実はライザが未知の技を急に閃いたのは、【黒渦】の力によるものだ。

グランドスラッシュという高レベル技を使えるメンバーから、その経験を借りている。

これをタイミング良く装備させれば、覚醒勇者の完成だ。


「おっと、その前に彼女を回復させてあげないとね」

「お願いします…」


そこには、先程まで戦っていたシルヴィアが居る。

トースは、謎の赤い液体が入った容器を持ち、魔法を発動する。


「ヒール・ブレス」

「一瞬で治りました。ありがとうございます」


仕込みは順調に最終段階へ向かっている。


「ところで、私の報酬も…」

「僕のまともな作品と戦ってみたいんだよね?ちゃんと憶えているから大丈夫だよ」

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