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84.魔法特訓

本日の舞台は、【迷いの森】にある、広場である。

ここでパペット三人組の魔法訓練が始まっていた。


「うーん…ファイア!」

「出力が不安定すぎる感じね。一定量を徐々に放出するイメージでどう?」


グリンはリコラディアに教えて貰いながら、魔法を発動している。

成功とは言えないが、生暖かい空気が生まれる所までは来ている。

幸いこの森はマナで溢れているので、試行回数はほぼ無限だ。

思い付く限りの事を試せる良い場所である。


そして、クエラセルはすぐ側で本を読みながら、その様子を見ている。

基礎を憶えながら実物を見学する事で、情報に飲まれる事を防止しているのだ。


「本と実物では、少し違う事もあるな」


色々見て来た結果と、初心に戻った情報に差異がある事を発見する。


「それは、一般的にイメージしやすい例えで書いてあるのよ」


書いてある内容はファイアの魔法についてだ。

手で油を掬った状態の挿絵と、火を付けるイメージの説明が書かれている。

普通の者であれば、このイメージでは手の上に火の玉が浮かぶ。

前方に飛ばす等の操作を加えるのは次のステップだ。


「逆に言えば、自分でイメージしやすい物を探せれば近道なのか」

「そうだけど案外難しいのよ。熱くない火とか想像出来ないでしょ?」


リコラディアは右手の上に火の玉を浮かべ、左手でそれを掴む。

これが熱くない火であるが、ここまで操作出来る頃には熟練者だ。


「火は熱い物だというイメージが強いからな…確かに言う通りだ」


クエラセルは、横に置いてある紙に今回の出来事を書き込む。

理解が進んだ後で見返せば、いつか有用な情報になる為だ。


「ま、待ってー!」

「「「あれは…」」」


突如現れたのは、サンダー・スライムを追いかけるクルタである。

珍しくスライムに包まれておらず、自力で走っている。

更に、その両名を追いかけるスライムまで居る。


遊んでいる訳では無いようで、三人組の前で集まる。


「この…この子…がっ…」


クルタは死に体で話を続けようとするが、呼吸で忙しく、上手く話せない。

何か伝えたいようだが全く聴き取れないので休憩して待つ。





「この子はビリビリアシガルちゃんで、役職付きの中では下っ端です!」

「そして、後ろのこの子は、デンゲキクノイチちゃんです!」


まずはサンダー・スライムの紹介を受ける事になった。

実は名前のルールが存在し、前半分が強さ、後ろ半分が役職である。

サンダー・スライムは、役職付きが大きな権力を持っている。

持たない個体は、言うなれば"村人A"のような扱いである。


「それで、何かあったのか?」

「この子が魔法の練習に付き合いたいらしいですよー」


クルタが指を差すのは、ビリビリアシガルと呼ばれたスライムだ。

言葉が分かるのか、スライムは跳ねてアピールする。


「何でも、妖精の森の争いを止めてくれたお礼だとか」


実は、以前サンダースライムと戦った時に案内役だったスライムだ。

森が繋がった事を知り、恩返しをしに来たのだ。

もう一方のスライムは自主的な護衛のようで、練習とは関係ないようだ。


「それは嬉しいが、一体何を…うわっ!」


会話が終わる前に、スライムはクエラセルに飛び付く。

取り付いたと思うと、肩の辺りへ移動し、動かなくなる。


「魔法を発動してみろと言ってますよー」

「どれ…ファイア!」


ゴオオオオ…


放った魔法は初歩中の初歩、ファイアだが…木を燃やしている。

明らかにファイアの出力ではない。

通常のファイアをLv1とするなら、Lv15程だ。

これを安定して発動出来れば、一般ではビギナー冒険者レベルだ。


「俺の魔法…か?」

「その子が、イメージをそのまま魔法へ変換したと言ってます!」

「そ、そんな事出来るの?だったら話は早いわ!」


何かが進んだらしく、リコラディアは紙に絵を描き、説明する。


実は、発動しようとする魔法とイメージの差があり過ぎると、うまく発動出来ない。

そこで、スライムがそのイメージを読み取って発動している。

今回の例では、イメージの火が強すぎたので発動出来なかったのだ。

これを繰り返して実際とのイメージを近付ければ、モノにするのは遠くない。





「次、ファイア!」

「「ファイア!」」

「二人共、大分安定してきた感じね」


スライムとリコラディアの助けもあり、何とか初歩を突破出来た二人。

今回は自力で発動しており、ようやく魔法を使えるようになったと言える。

しかし、これでようやくスタートラインである。


「次、キュア・ポイズン」

「「キュア・ポイズン!」」


課題であるキュア・ポイズンを発動するが、効果があったのか分からない。

というのも、毒になっている対象が居ないためだ。


「うーん、これは失敗みたいね」

「何で成功かどうかが分かるんだ?」

「放った魔力が残ってると、発動はしたけど効果を発揮してない状態だと推測出来るのよ」


二人は理解が追い付かなくなってきた。

魔法の世界と言うのは、新たな概念を憶えて行く世界だ。


「その魔力が残っている状態は、どうやったら分かるんですか?」


意外にも、グリンが魔力の状態に質問する。

普段はアイテムを使ってマナを魔力に変換しているが、自力でやると別物だ。


「魔導回路の仕組みは憶えてる?あれを応用して、こう…」

「「うっ…」」


リコラディアは絵を描いて魔導回路を説明するが、二人は憂鬱だ。

魔法を使おうとする者は、必ず一度は挫折するというポイントだからだ。

ただし、これを使いこなせるようになれば、魔法使いとしてやって行ける。


この後、どうせならという事で、魔導回路の追加講義が始まる事になる。

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