表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
80/102

78.生産の親

「やあ、新人さん達。依頼の確認かい?」


引き続きギルド【黒爪】に居るパペット三人組は、依頼カウンター前に来ていた。

そこには受付の女性と、書類を整理しているトースが居た。

トースは何故か対応しようとした女性を引き止め、代わりに話す。


「そうだが、今から日帰り出来そうな依頼なら受けたいな」

「良い向上心だね。間に合いそうなのは、これだよ」


・【湖の薄氷】一つ納品

 →18000アグラ


提示されたのは、以前クオがどこからか採取して来た品の依頼だ。

採取地はメテオリット砂漠のようだが、一行は湖すら見た事が無い。


「何処にあるか見当が付かない。日帰りは無理そうだな」

「それなら、僕からの依頼を受けて欲しいな。さほど時間は掛からないよ」


トースは初めからこれを狙っていたのか、ニヤリと笑いつつ手招きする。

断る理由も無いので、三人組は着いて行く。





着いたのは、暫く前までクオと戦っていた訓練スペースである。

ここに連れて来られるという事は、大体戦闘目的である。


「それで、何をすれば良いんだ?」

「簡単に言えば、僕が呼び出す生物を全て倒して欲しい。大体十体くらいかな」

「それがLv100とかで無ければ、まあ大丈夫か…?」

「全部Lv40以下にするよ。代わりに僕がサポートする感じだね」


一行はサポートの方が脅威に感じたが、手加減してくれるようで、納得する。

それを受け、トースは今回の討伐対象を呼び寄せる。


「【黒檻】オープン!」


地面から現れた檻のような物には鼠のような生物が入っており、それが放たれる。


「予備の剣でどこまで行けるか」

「相手はバイツ・ラットよね?ほら、初めて群れと戦った弱いやつ」

「そうだと思いますが…何かがある?」


この鼠は過去に戦ったバイツ・ラットで、Lv6の個体だ。

当然、今の三人組にかなう筈もない。


「一応、俺が引き付ける。危険そうだったらサポートしてくれ」


そう言ってクエラセルが前に行き、注意を引き付けるが…

そのまま全て倒してしまった。

実にあっけない終わり方である。


「「「何もない…?」」」


目的がさっぱり分からない三人組だが、トースが動きを見せる。


「ネクロ・リライブ」

「「「!?」」」


何かのスキルを使ったと思うと、バイツ・ラットの死骸が弾け飛ぶ。

そして、一か所に骨が集まり、一部の肉片を纏う。


「な、何だこれは…アンデッド!?」

「気持ち悪っ…」

「こういう時の鑑定!」


########

種族:リビングデッド Lv10

状態:【黒牙】【黒鎧】

能力:復活

技能:

 <復讐劇> 自身を倒した相手に対して段階的にステータス開放

 <死の牙> 死属性単体攻撃 Lv30 【呪印】付与

 <満たされぬ渇き> 【呪印】状態の生物に攻撃時、血液を吸い取る

########


「「「リビングデッド…」」」


思う所のある三人組だが、意識を切り替える。

グリンは、トースも妨害行動をするという言葉を思い出し、鑑定する。


「追加で鑑定!」


########

種族:邪神【黒箱】 Lv300

技能:

 <ブラッド・マジック> 生物の血液を消費して魔法を発動出来る

 <ネクロ・リライブ> 生物の死体を不死生物へ作り変える事が出来る

 <イビル・アイ> 許可した相手以外の生物鑑定を無効化し、反撃する

 <黒箱> 自身より低級の邪神を収納でき、収納した力を取り出せる

 <邪神> 自分の世界を作る事ができる

########


「「「これは…」」」

「今回は特別サービスで見せてあげたよ。勿論、他言無用だよ」


明らかに"人類の敵"のようなスキルであり、邪神なのは疑いようがない。

本来は前線に出るタイプの邪神ではないのだが、他の力を取り込めば可能になる。

自身の活動に幅を持たせるため、わざわざオトルスで邪神回収作業をしていたのだ。


「いつも通りに攻めた後、復活したらすぐに畳みかけるか」

「火力は任せて!」

「まだ何かありそうな気はしますが…サポートします」


三人組は長引かせると危険と判断し、方針を決めて仕掛ける。


「まずは、牽制の一撃だ!」


バキッ!


「グゥゥゥ…」


やはり、鼠だった時のようにあっさりと倒れる。

リビングデッドは横たわった後、動かなくなる。


「何だ?倒したから良いものの、やけに硬いぞ」


しかし作戦を練る暇もなく、リビングデッドが起き上がる。


「魔法で行ってみるわ!フレイム・スロワー!」

「グ、ガ、グゥゥゥ…」


効いているが、ダメージはじわじわと蓄積していて即死ではない感じだ。

ただ、ダメージを受けすぎて最終的に倒れる。


「何あれ、耐性は無いはずなのに効き難い…?」


そして、またリビングデッドが起き上がる。


「もう一発よ!」

「グ…ゴアァァ!」


動き出す前に止められなかった事により、リビングデッドが攻撃する。

魔法が気に入らないのか、リコラディアを狙っているようだ。


「ここは強引でも俺が受け…」


クエラセルが体を張って受け止めようとした時、牙が黒く輝いている事に気が付く。

回避すると他の者が攻撃を受けてしまうので、やむなく受ける。


ガブッ!


「ぐおっ!?こ、この威力は…」

「ファイア・ボム!」

「危険ですね、回復します!」


何とか魔法が間に合い、リビングデッドが倒れる。

クエラセルは飛びのいて巻き込みダメージを軽減した。


この復活時間の間に回復し、持ち直す。


「あの牙、次は耐えられるか分からん…」

「魔法も一撃じゃないみたいだし…」


三人組は、死者が出る可能性を考え始める。

復讐劇スキルによって、今回より強くなるのは明らかだからだ。


「そうだ!」


グリンはいつも魔法石を入れている袋ではなく、別の袋からアイテムを取り出す。


「ゴアァァ!」

「来たぞ!…剣を犠牲にして止まるか試す!」

「こ、こうなったらマナを全部使って…」


二人は命を賭けて応戦しようとする。

しかし、グリンは冷静に取り出したアイテムを使う。


「これで、止まってくれれば!」


キィン! バシュ!


謎の光が発生し、視界が潰される。


「「何事!?」」

「落ち着いてください、これは魔法石です!」


暫くして光が弱まると、そこには骨と肉片がバラバラに転がっていた。


「へえ、良い物持ってたんだね。僕の負けだよ」

「「「や、やった…」」」


実は、以前ピナに貰った高レベルの魔法石だ。

使い所が無かったので持ったままだったのだが、それが生きた瞬間だ。


戦闘が終わり、しばし休憩した後、トースが今回の目的を話してくる。


「実は、アンデッドに邪神の力を追加したらどうなるかの実験だったんだよ」

「あのやけに威力の高い牙はそれか?」

「そう、それが【黒牙】で、攻撃が効き難い効果は【黒鎧】だね」


とんでもない事をやってのけたトース。

妨害と言うのは、この邪神付与の事だ。

これと復讐劇の効果で、死を覚悟する強敵に変貌した。


「ところで、リビングデッドで気になる事があるんですが…」





「あ、パパだ!」

「「「!?」」」

「元気だったかい?今日は話をしに来たんだ」


ここは、【きらきら屋さん】だ。

三人組の認識では、リビングデッドと言えば店長のピナである。

トースから話を聞こうとしたが、どうせなら本人も交えて話そうという事になった。


「誤解の無いように言っておくけど、僕はこの子と母親を復活させただけだよ」


まずは三人組に対して状況の整理を行う。

ピナは重要な話と感じ、その間に店じまいを済ませてしまう。


既に知っているような話も多かったが、重要そうな情報も入ってくる。


「そこで、母親が自らを生贄にして、君をリビングデッドにする事を選んだ」

「ママが…」

「凄まじい貢物もあってね。それに応えるため最高品質で作ったんだ」


本来なら人ならざる異形が生まれるのだが、要望により人の形を保った。

この部分はピナの母親が担当し、協力してリビングデッド化したのだ。

終わった後は生贄となったのだが…アンデッドとして蘇生された。

トースには生前の形を保つ技術が無かったので、その技術代分のサービスだ。


「昔はアンデッドの群れで各地を侵略していたけど、今の生活の方が楽しいね」


そして、時折投下される爆弾発言であるが、邪神と人は発想が違うのだ。

敵に回すと厄介極まりないが、味方であれば心強い存在だ。


ピナに関係する話を粗方話し終えると、今度は自身の話になる。


「暴れてた頃、マスターにまで喧嘩を売ってしまってね。あれは酷い事になったよ」

「あのお姉ちゃん強そうだもんね!どうなったの?」

「僕がエネルギーを吸われて干物みたいになったのと、火山が広がったね」


笑い話のようになっているが、とんでもない規模の戦闘だ。

これはバーティカル火山の事で、元々はよくある形状の活火山だ。

フェイリアが地形を知っていた理由はこれである。


「その後はギルドに入れられたんだけど、居心地が良くてね。自主的に残ったんだ」


今では完全に協力態勢であり、ギルドの重要人物である。

ここで話したかった内容は終わり、三人組はこのタイミングで退出する。

ピナは続けて話したい事があるようで、トースと話し込む。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ