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73.出世祝いと生産者の謎


本日の舞台は、ギルド【黒爪】にあるショップスペースである。

パペット三人組が、常用品の補充と品揃えを確認しに来ている。

今まであまり利用していなかったので、時間があるうちにチェックするのだ。


まずは常用品である魔法石とマナ回復薬を購入し、残った資金の運用を考える。

三人組の場合、この最低限さえ用意できれば冒険出来るため、お金が余る。

かといって高級品には手が出ないため悩ましい課題だ。


「ちょっと待て、あんたら最新の合格者だよな?」


ショップの店員が、三人組を呼び止める。

手配書のような物に三人組のイラストが書かれており、それを見せたいようだ。


出世祝いのようなシステムで、該当者は初回サービスして貰える。


「これは俺か?眩しい笑顔で道を走ってる」

「そっちの悪そうな表情でお金数えてるのって、まさか…」

「ボクの物だけ、やけに渋くて眼光が鋭いんですが。本物より強そうです」


これは、第三者が人物のイメージを聞きまわり、その情報で作成された。

まともに話していない者の情報も混ぜられているので変な属性が増える事がある。

通過儀礼であり、一度は妙なイラストを描かれる宿命だ。


「過去ので一番気に入ったのはボルドーのだな。見てくれ、妙に恰好良いんだ」


イラストを見ると、険しい表情で何かに立ち向かっているように見える。

対するは、黒い影が広がったものに、赤い目と口が付いた化け物だ。

勇者と魔王の戦い、というタイトルを付けられても違和感がない。


「実はこれ、マスターに叱られてるイメージの絵らしい」

「「「無駄に恰好良い…」」」


しばし雑談した後、この店では属性ダメージ軽減のアイテムをプレゼントされた。

普通に買うとかなり高額なので、嬉しい一品だ。





案外スペースが広く、個人販売店のような物もある為、結構な時間を使った。

残念ながら欲しい物は高すぎて手が出ないが、これも通過儀礼だ。

熟練冒険者になるまでは、無料のアイテム情報集積所と思うしかない。

が、貰ったプレゼントで当面は凌げそうである。


最後のショップへ向かうと、そちらの方から声が掛かる。


「皆様、お待ち申し上げておりました。ウリエルでございます」


視線を向けると、そこには見た事が無い者が居た。

名前的にメイドかと思ったが、少し高級な普段着のような姿だ。


「その子は、専属の売り子ですのよ」


店長と思わしき女性が、木製のデッキチェアに掛けており…

寝そべって足を組んだ状態のまま、売り子を指差す。


話を聞くと、売り子の実態はメイドらしいが、店の手伝いをさせられている。

慣れたやり取りがあるので、以前からの知り合いのようだ。

この謎の店からもプレゼントを渡され、当面はアイテム試し放題となった。


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一方こちらは【迷いの森】である。

元奴隷のパペット達が集い、ダンジョン入り口で提供する軽食を作っている。


これは、待ち時間中に小腹が空いた者達へのサービスである。

野菜スティックとスープのお手軽な組み合わせで、そこそこ好評だ。


「ところで、この野菜ってどこで作ってるんだろう?」

「そう言えば森の中でも見た事ないなぁ」


何気ない雑談だが、知恵が付いてきた者達は、何かに気が付く。


「…気にしてなかったけど、これは何て野菜なの?」


ふとした発言に、その場の者が動かなくなる。

すると、年配にしか見えないパペットが近寄り、手を出す。


「貸してみなさい」

「はーい」


受け取ったのは、色白で根菜と思われるものだ。

何故か撫でたり匂いを嗅いだりしている。


「見えた、見えたぞ!」


#########

品名:ダイ・ルーツの疾走根 Lv160

#########


「ただの野菜じゃなかった…!」

「爺ちゃん相変わらず凄いなぁ」


この年配パペットは、目が不自由だった者だ。

視覚に頼れない分を、他の感覚と、この鑑定能力で乗り切っていたのだ。

今では殆ど芸のような扱いで、本人も悪くないと感じている。


「ダイ・ルーツは元の姿が想像出来ないけど、こっちは?」

「どれ、それも貸してみなさい」


そして同様に鑑定される。


#########

品名:ブラッディ・イートンの花弁 Lv70

#########


「スープの色味付けが、とんでもない品だった」

「今まで煮出して捨ててた…!」


ダイ・ルーツは野菜スティック、ブラッディ・イートンはスープに使われている。


そうこうしていると、この品を与えたフィーリが現れる。


「あら?何かあったの?」

「この野菜に驚いてしまったようです」


この際聞いてしまおうという事で、質問攻めが始まる。


「これ、どんな風に生えてるんですか?」

「食べ過ぎたら危険とかありますか!」

「買うと幾ら程の…」


丁度良い事を考えたフィーリは、質問の嵐を一旦収める。


「普通は見れないから…"生産者"を見に行くのも面白そうね」

「という事は、実物が見れるんですね!」

「もちろん。今回は先輩達も加えて農業見学よ。戻って来るまで待ってね」


実は三人組が食べていた野菜スープもこれらの素材が使われている。

全員纏めて生産者と顔合わせになりそうだ。

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