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72.脆弱な盗人

ここまで長かった…という感傷に浸ってますが、まだ終わりません。

でも、終わりは見えてきたかなと。

本日の舞台は、もはや農村と言えなくなったトリナムである。

課題であった宿屋も大量に増築され、高級店も出て来た。

中央都市に成り上がるのは時間の問題だろう。


パペット三人組がきらきら屋さんに訪れると、ピナが店を閉めている。

看板を設置しており、それには数日休むと書いてある。

折角なので、何があったのか聞いてみる事にした。


「今日はもう店じまいか?」

「うん、美術展に出ないといけないから、三日くらいお休みなの」

「「「美術展?」」」

「えっと…これ!」


ピナは、ポケットから手紙を取り出し、見せてくる。

ゼクト領の地図が書いてあり、中央都市であるマデイラに印が付いているようだ。

イベント名らしき、"素敵な物品"という名前が記載されている。


「この宣伝する気が無い名前、もしかして…」

「ゼクト領で、一番大きい美術展らしいの!」


リコラディアは、小さな頃に一度だけ行った事があるのだ。

当時は価値が分からず、輝く品に見惚れていただけであった。

展示品はどれも凄まじい価値で、富豪でもなかなか手が出ない逸品ばかりだ。


ピナの場合は、サイト家の作品関係者として呼ばれている。

材料であるブレイズルビーの解説担当にされているのだ。


「今日は閉店ですかな?」


話していると、見た事の無い人物が現れる。

どうも店に興味があったようだが、事情を伝えると残念そうにする。


「申し遅れた、ワシはオトルス領主のディバ」

「「「「!?」」」」


なんと、お隣の領主が現れた。

この周囲が急激に発展した事が気になり、許可を得て観光に来ている。

他にも数名着いて来ており、護衛も居るようだ。


「ワシはこれから中央都市まで行く。バスカはどうする予定だ?」

「折角ですから、フォレスト・ダンジョンの様子を見て来ます」

「分かった。帰りにここで合流する事にしよう」


目的はそれぞれ別だったようで、領主一行は中央都市の方へ向かう。

一方、バスカと呼ばれた男性は、護衛も連れず一人で残る。

安全な場所だとは言え、なかなか思い切った判断である。


バスカは、引き上げようとした三人組に話しかけてくる。


「フォレスト・ダンジョンは、どの辺りでしょうか?」

「ボク達も丁度その方面なので、一緒に行きましょう」


向かう先が途中まで同じ事に気付いた三人組は、観光者を連れて行く。





「おお、これが話題のダンジョンですか」


フォレスト・ダンジョンは、相変わらず入り口に列が続いている。

ここまで熱狂的に通われるダンジョンは珍しいため、驚かれている。


「大体毎日こんな感じだな」

「ほう…冒険者の方も高レベルに見えます。これは良い場所ですね」


そう言うと、バスカの影が広がり、冒険者達を捕らえる。


「な、何だ!動けない!」

「どうなってやがる!」


三人組は、どこかで感じた事がある妙な気配に、警戒する。

次の瞬間、バスカの腕が黒い煙のような物に変わり、影に溶け込む。


「【黒渦】!」


何が起きているか分からない三人組。

暫くすると、冒険者達は眠ったような状態になる。

死んだ訳ではないようで、息をしている。


「さて、君達も用済みです。【黒渦】!」


同じ手口で何かをやろうとするが、三人組は何も感じない。


「お前はまさか、あの時の化け物か!」

「おや、バレてしまいました。丁度良い、ここで始末しましょうか」

「俺の経験を返してもらうぞ!」


クエラセルが探していた人物は、この者である。

パペットになる前、同様の手口でレベルと記憶の殆どを奪われている。

外見は違っているようだが、自身で肯定しているので間違いない。


「俺の問題に巻き込む事になってしまうが、手伝ってくれ!」

「今更そんな事、気にする必要ないでしょ?ここなら、全力でやれるわ!」

「まずは鑑定!」


########

種族:邪神【黒渦】 Lv80

技能:

 <闇の浸透> 人に邪神を植え付ける事ができる

 <装備化> 任意対象に経験を付け外しできる

 <黒渦> 人、魔神、邪神の経験を操作できる

 <邪神> 自分の世界を作る事ができる

########


「「「邪神…!」」」

「存在を知っているという事は、邪魔者の一員ですか」


この邪神は、経験を操作出来る能力を持っており、記憶やレベル等も操れる。

ただし、奪うか与える事しか出来ないので、記憶改竄の場合は不完全な能力である。


幸い能力は効かないようなので、ここは攻めに入る。


「行くぞ!」

「させませんよ。装備化、仲間殺しの記憶!」

「ぐっ!?そんなもの!」


他人の物であるが、過去の凄惨な記憶を植え付け、意識を逸らされる。

攻撃は続行するものの、狙いが甘くなっており、あっさり回避される。


「そこの女にはこれですか。装備化、絶望の記憶!」

「大した事ないわね!ファイア・レイン!」

「何故効かないのです!…こうなれば」


邪神は自身を操作し、マグマのような生物に変身する。


「もう一度、鑑定!」


########

種族:邪神【黒渦】 Lv80

状態:炎羅

技能:

 <闇の浸透> 人に邪神を植え付ける事ができる

 <装備化> 任意対象に経験を付け外しできる

 <黒渦> 人、魔神、邪神の経験を操作できる

 <邪神> 自分の世界を作る事ができる

 <炎羅> 【炎羅】のスキルを使用できる

########


「「「あ、あれは…」」」


この邪神は、魔神の力を取り込んでいるようだ。

ファイア・レインは炎羅の耐性によってまともなダメージにならない。


「この熱量は、近付けそうにないな…」


炎羅は常に火の魔力を撒き散らしているので、近付くだけでも大火傷である。


「だったら、アイシクル・エッジ!」


作ったは良いが、出番の無かった、高レベル氷魔法だ。

氷の刃で対象を切断し、切断面を凍結させる魔法になっている。


ズバッ!


動きが遅く、アイシクル・エッジをまともに受けて両断される邪神。


ジュウゥゥ!


しかし熱量は残っており、凍結しないようで、氷が解けていく。

しばらく様子を見ていると、マグマが集まり人の状態に戻る。


「ガハァッ!こ、こんな奴らに!」


邪神は苦しんでおり、起き上がれずにのたうち回っている。


「倒した…?えらくあっさりだな」

「あら?終わっちゃったの?」

「ここからだと思ったんですが」


この邪神は、ステータスが貧弱な代わりに能力が強いタイプだ。

魔神を吸収出来た事で調子に乗ってしまい、大技を受けてしまったのだ。

耐えられるはずもなく、この有様になっている。


最寄りのベチュラに報告し、フィーリに伝言を頼んだ状態でこの場を見張る。





「お手柄ね。三人共、よくやってくれたわ」

「それだけでなく、まさか生け捕りに成功するとは」


フォレスト・ダンジョン入り口に、フィーリとフェイリアが合流していた。

こうなってしまうと邪神に勝ち目はなく、大人しくしている。


三人組は、両名に改めてお礼を言われ、今後の話をする。


「この邪神は私が引き取り、盗んだ経験を吐かせておきます」

「ふん、そんな事をすると思うか?」

「従わなければ、従いたくなる状態にするまでです。それでは」


フェイリアは邪悪なコメントを残し、この邪神を連行する。


「一旦戻って、詳しい話を聞かせてくれる?」


フィーリは気になる事があったようで、落ち着いて話す事になった。

一行は住居に戻り、今日の出来事を纏めて話す。

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