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69.妙な名前の神

書き溜め出来る人が居るらしいですが、よく投稿せずに待てるなーと思いました。


特に、投稿してしまわないと初期に書いた物の問題が見えて来て、修正ループになりそうなものですが…

その辺は腕前なんでしょうかね。

今日の舞台は、ギルド【黒爪】である。

パペット三人組の、依頼チェックが始まろうとしている。


しかし、ここで何の問題も無く過ごせるのは運の良い時だけだ。


「お帰りなさいませ」


挨拶しているのは、本物のメイドの一人である。

何故か、他のメンバーが通路の隅に移動し、最敬礼している。


「「「何事?」」」

「"信者"のルールと聞いております。恐れ多い事ですが…」


これはメイド教、もといメイド狂の者が勝手に決めたものである。

いつの間にか色々とルールが決められており…

メイドには道を譲り、通り過ぎるまで最敬礼をしなければならない。


とりあえず三人組は名乗っておくが、メイドは困り出す。


「私共は、まだ名前を頂いておりません」


デスペラード・クエスト等の予期しないトラブルが発生する場合がある。

これに巻き込まれても被害が拡大しないように、仮の名前を付けるのだ。

通常の雇用では、同名の者が居た場合に付けられる事がある。


話していると、仕事の報告をしに来た他のメイドも合流する。

挨拶すると妙な名前を名乗ってくる。


「メシエルでございます。主に炊事を担当させて頂きます」

「ネルエルでございます。ベッドメイクとコールサービスをさせて頂きます」


信者達の厳正な審査により、候補からこの名前が選ばれた。

役割に"エル"を付けて神っぽさを出しただけの案だ。

しかし、憶えやすかったので採用されたのだという。


「伝言ですが、リーダーの名前は"ゼンブオエル"です」

「…」


色んな意味でかわいそうな名前が誕生した。

メイドの中で一番能力があるので各担当を指導していたのだが、

目を付けられていたようで、それが標準になってしまった。


「あのメイドさんの名前は?」


リコラディアは、遠くで掃除しているメイド二人を指差す。


「手前がフキエル、奥がフキエル・ザ・サードでございます」


役割が同じ者は、任命された順に一意の管理名が付く。

フキエル・ザ・サードは三番目の者である。

言うまでもなく拭き掃除をメインに行う者だ。

今後人数が増えれば、若い番号の者が新人を教育する。


話していると、メイドの一人が慌ただしく走ってくる。


「リーダー!カタエルが重傷です!」

「ダンジョンに入った子ですね?」

「「「ダンジョン!?」」」


カタエルというのは、散らかった物の片付け担当だ。

フキエルが通る前に目立つものを除去する役目がある。

また、部屋のゴミ回収も行っている。


「クオ様の部屋を、ダンジョンと呼称しております」


惨状である事は容易に予想出来る三人組。

怪我人が出ているようなので、グリンの回復を頼ってみる。





「「「これは…」」」


部屋から大量の何かが溢れ出しており、廊下にまで広がっている。

自力で脱出したのか、ボロボロなメイドが壁に寄りかかっていた。

あちこち傷だらけである。


グリンが回復すると、メイドは息を吹き返し、状況を説明する。


「扉を開けた瞬間、これらが雪崩のように…」


何かの素材に見えるが三人組も詳細は分からない。

安全かどうかも分からない、そんな物が大量に溢れているのだ。


「これは酷い。とりあえず大きい物をどかそう…つっ!」


クエラセルが、銀色に光る重そうな素材を掴むが…

よく見ると表面に細かい刃が無数についており、それらが突き刺さる。

片側しかないようで、メイドは偶然助かっていたようだ。


「確かにダンジョンだ。これは一般人に任せるべき場所じゃないな」


乗り掛かった船なので、手伝う事にする。


いつもの戦闘のようにクエラセルが壁となり、部屋の中の物品を切り崩す。

リコラディアは回復魔法を作ったので、珍しく回復担当だ。

そしてグリンが危ない物品を選り分ければ、分担出来る。


メイド達は残った物品を片付け、荷車のような物で運んでいるようだ。





「よし、何とか部屋の中に入れるようになったぞ」


本当に部屋の中に入っただけである。

そこには、天井まで積み上がる山が存在していた。


「これ、気が滅入ってくるわ…」

「どうやって生活していたのか気になりますね」


実は、クオの部屋は幾つもある。

といっても、使えなくなったら移動を繰り返しただけだ。

今掃除しているのは使えなくなった部屋の一つである。


「危なっ!」

「その防具で良かったかもしれないですね」


クエラセルは咄嗟に身をかわすと、足元に何かが突き刺さる。

天井に突き刺さっていた金属素材が抜け落ちたのだ。

防具スキルで回避力が上がっているため、余裕を持って回避できた。


「足元!それ危険だわ!」

「助かった!死に掛けたぞ…」


よく見ると、クエラセルのすぐ近くに魔法石が落ちている。

結構なサイズなので、間違えて蹴飛ばすと全員死んでいただろう。


「そう言えば、回復し続けてるけどマナに余裕があるわ」


リコラディアの新防具はコストダウン重視なので、ここで効いて来た。

長期戦等で持続的に魔法を使う場合は、維持力大幅アップだ。


「そろそろ奥を崩します。一旦、全員部屋の外へ」


グリンは、投擲距離が上がるスキルを使い、奥の山へ向かって無害な素材を投げる。

簡単に崩れるのを利用し、これで安全に撤去作業に掛かれる。


ドドドドド…


「思ったより部屋が広いな。まだ山が消えない」

「えー、一体どれだけあるのよ!」

「今日中に終わるか怪しいですね」





「「「つ、疲れた…」」」


相当な時間を使い、何とか部屋を空にした。

三人組は緊張の糸が切れ、床に倒れ込んで休憩する。

しかし、これだけ苦戦した部屋が他にもあるのだ。


「ご協力、ありがとうございました。あとは私共にお任せください」


メイド達もずっと動いていたのだが、まだ体力が残っているようである。

作業を一旦中止し、三人組へのお礼に冷たい茶と蒸しタオルを用意する。


この作業で発掘した素材は、クオ自身も存在を忘れており…

フェイリアの手によって売却され、結構な資金に化ける事になる。

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