表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
69/102

67.嫉妬される魔王と強くなる事の意味

「あと一回変身すれば、一区切りだな」

「ええ。次は風ですから、場所はこの渓谷が良いでしょう」


ここはクラーグ王城、謁見の間である。

ザウドと大臣が育成プロジェクトについて話し合っている。


つい先程、変身したザウドと勇者パーティの戦闘が終わったのだ。

四天王・水と火は、どちらもザウドの変身したものと戦っていた。

わざと攻撃を食らう必要がある為、結構ボロボロである。


「大臣、その場所は雰囲気的には完璧だが、安全性は?」

「空を飛べる状態であれば、問題はありません」

「それならば良い」


側に居た王様が話に入ってくる。

国家事業であるので、事故が起こると面倒な事になるのだ。

ザウドは"空を飛べる設定"も持っているので、条件はクリアしている。


「特に問題はなさそうだな。ではすぐに準備するとしよう」


ザウドは準備に掛かる為、この場を去ろうとするが、物理的に止められる。

見ると、腕に何者かがしがみ付いている。


姫と呼ばれている、シェリー第一王女である。


「ん?どうしたんだ?」

「これ以上、傷が増えるのを黙って見過ごせません!」


シェリー第一王女は、まだ未熟ながら魔法が使える。

腕にしがみついた状態で回復魔法を使っているようだ。

傷はじわじわと塞がっていくが、全快までは相当掛かるだろう。


一度黒爪に戻り、回復してもらえば一瞬で全快するのだが…

雰囲気的に断れず、大人しく治療を受ける事にする。


「あー、その…そろそろ準備を始めないと時間がな…」

「嫌です!放しません!」


王様は簡単に全快出来る事を知っているので、気まずそうにヘルプする。

しかし断固として譲る事は無く、治療を続けられる。


暫くすると、マナが尽きたようで、中途半端な状態で治療が中断される。

しかし、腕の拘束は解けない。

表情はザウドにしか見えていないのだが、とても悲痛な面持ちだ。


「行かないで…」


説得する為に近寄っていた王様と大臣は、その言葉を聞き、動きを止める。

何かを察したようで、元の位置へ戻り、わざとらしい大声で会議を始める。


「ザウド殿は連戦により消耗が激しい!やはり次に向けて休養が必要でしょう!」

「確かに!傷も思ったより深い!治療が必要だ!」

「代わりにこの者を起用すれば!滞りなく進行出来るでしょう!」


色々と困惑しているザウドを尻目に、勝手に話が進んでいく。

次の四天王戦は他の者が行う事になった。


シェリーは話を聞いていたようで、笑顔になり治療役に名乗り出る。


「今、部屋を用意する。そこで治療を行い、休養を取って貰いたい」

「…?俺は構わないが」

「急いで、治療道具を持ってきます!」





結構な時間が経ち、夜中になった。

シェリーは疲れて眠ってしまったようで、ザウドはこの隙に外へ出る。

急いでギルド【黒爪】へ行き、傷を回復してもらう。


「お姫様に治療して貰ってて、治りが悪いから治せ?断る!死ね!」


しかし、回復を拒否されてしまった。

話を聞いて、他のメンバーも集まってくる。


「そのお姫様って、美人なのか?」

「ああ、そうそう居ないレベルだと思うぞ。…誰でも良いから治してくれ」

「「「死ね!」」」


まさかの全員回復拒否である。

しかし、救いは訪れる。


「ザウドがこの時間に居るのは珍しいな」

「丁度良い所に来た!回復してくれ!」


現れたのはオージュである。

依頼をこなし終わった後は女性に纏わりつかれ、付き合っていると夜中になる。

今回は、付き合いが終わって帰還した時に、たまたま合流したのだ。


「癒しのハープ!」


ポロン… ポロロン…


「「「うるさ…くない!?」」」


以前までのスキルは、とても大音量で耳が千切れそうな勢いだったのだが、

いつの間にか通常の音量になっている。


最近は依頼の合間に治療施設の手伝いをしていて、騒音の苦情を大量に受け…

これに応えるべく、スキル構築を変え、静音化に成功したのだ。

これにより他のメンバーも鼓膜を心配する必要が無くなった。


「助かった、相変わらず一瞬で回復するんだな」

「回復だけは特に注意してるからな。…ところで、何で他の奴に頼んでないんだ?」

「それが…」


これまでの話をすると、オージュは少し同情してくる。


「そういえば、ザウドの好みを聞いた事ないな。お姫様はどうなんだ?」

「正直言うと良いなと思ってる」

「順調そうで羨ましい限りだ」

「「「死ね!」」」


やり取りはここまでにして、急いで王城に戻る。

幸いシェリーはまだ眠っているようで、誤魔化すまでも無かったようだ。


------------------------------


一方、こちらは【迷いの森】にある魔女の住居だ。

パペット三人組が新防具について話し合っている。


「新防具にすると、毒が効くようになってしまうな」

「そうねえ、でもどこかで性能を試したいし…」

「メテオリット砂漠なら、まだ毒持ちと会ってませんね」


まずは性能を試してみたいのだが、毒を恐れている。

今までの防具では、毒ダメージ分回復しているのだが…

その回復量分が丸々ダメージになったとすると、相当なダメージである。


「それなら、まず最初はメテオリット砂漠で試してみる事にするか」


とりあえずは直近の目標が出来た。

そこで試運転するまでは、今までの使い慣れた防具を使うのだ。


「ところで、全く違う話なんですが」


グリンは多数の情報を纏めていた事で、何かに気が付いていた。

自身では答えが出なかったので、今回意見を聞いてみる。


「ボク達が強くなるのは良いですが、それって最終的に何の為なのか…」


いきなり出た哲学的な話に、他二人は困惑するが、思った事を答えてみる。


「俺は、邪神対策の一環だと思ってたんだが」

「どこでもマナをやりくりして活動出来る為じゃない?」


一応二人の答えをメモるが、求めている答えではない。


「例えば、マナも持ち帰りますが、そこそこの魔法一発分程ですよね?」

「そうだな。量的にはさほど…」


クエラセルは言葉に詰まり、グリンの言いたい事を少し理解する。


「邪神対策で考えると、強くなっても貢献量が極僅かなまま…って事か」

「はい、大まかに言うと、そこが一番の疑問です」


二人は話を進めていくが、リコラディアだけは謎の絵を描き続ける。

話は聞いているようだが意見は出ない。


暫く経つと絵を掲げ、呼びかける。

大雑把な地図のようになっていて、迷いの森、黒爪、妖精の森が書かれている。

まず最初に、妖精の森を差す。


「ここのマナを使えば、邪神のエネルギーになるでしょ?」

「はい、それをフェイリアさんが吸い上げる、と」

「じゃあ、ここのマナを使った場合は?」


リコラディアは、黒爪を差す。


「同じく、邪神のエネルギーになる?」

「そうなったら、そのエネルギーも吸い上げられる事になるな」


満足の行く答えが出たのか、納得して話を進める。


「その後は魔神のエネルギーに変換される…その後のマナがここよね」


リコラディアは足元を指差す。

これは迷いの森の地下に蓄えられたマナの事を言っている。


「つまり、一度邪神のエネルギーになったマナは、全部この森に来るのよ」

「「!?」」


要約すると、邪神を世界中から使える倉庫にしている。

世界各地でマナを消費すると、この邪神のエネルギーとなるので…

その後はフェイリアが操作し、最終的に迷いの森のマナになる。


迷いの森のマナ総量を増やすために、各地に冒険させられているのだ。

強くなればマナ消費も大きくなるので、これの効率が上がる。


「その説が正しいとすると、マナを使えば使う程貢献出来るのか」

「強くなる毎に消費量が上がって来ているので、そういう事なんでしょうか」


三人組は満足出来る所まで来たので、一旦納得して、話を終える。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ