63.雷を操るスライムのルール
色々分かって来れば来るほど、この作品が"小説"ではないと感じます。
言うなれば、崩したテキストの塊です。
既に恥ずかしくなって来てますが、作風が大いに乱れるので、あえてそのままにします。
小説準拠で一話分書いてみて、超絶つまらない物が出来上がったせいでもあります。
プロの方は十人以上同時に何かするシーンとかどうやって表現してるんでしょうかね。
本日の舞台は、ゼクト領の中央都市、マデイラである。
パペット三人組が依頼を物色しに来ている。
「黒爪の依頼が、一つも残っていないのは予想外だったな」
「みんな憑りつかれたように働きだしたせい?」
「そこまでさせるメイドとは何者…?」
馬車を借りる前に依頼をチェックしたのだが、採取依頼すら残っていなかった。
それだけではなく、相当無茶な依頼もあったはずなのだが、壊滅だ。
"依頼書の出待ち"をしている者も居る程だ。
この現象はメイドの為に本気を出した者達のせいである。
無い物はしょうがないので、今回は別のギルドにある依頼を確認しに来ている。
まずは以前訪れた順番で確認していく。
…
「いらっしゃ…ようこそ、赤龍の皆様方!」
以前最初に訪れたギルドでは、入り口横に立っていた女性が、慌てて挨拶する。
どうやらレッド・ドラゴンの素材を見せた事で、勝手に識別名が付けられたようだ。
当人達は、中級冒険者ですらないと思っているので、かなりくすぐったい。
女性は挨拶が終わると、職務を放棄してギルドマスターの部屋に駆け込む。
なかなか戻ってこないので、先に依頼をチェックする。
「この間倒した、ヴェノム・スパイダーの依頼があるぞ」
「今回はLv80超えの討伐依頼もあるわ」
「え?前より難易度が跳ね上がっていませんか?」
一行が依頼を確認していると、ギルドマスターが現れる。
「久しぶりだな、今日は達成不可能レベルの依頼まで揃ってるぞ」
クラーグの"育成プロジェクト"で妖精の森を使いたいため、高難度依頼が増えている。
今回は緊急依頼となり、全ギルドに依頼が発行されている。
この場合、ギルド内で達成できる者が居なくとも、ギルドの評判に影響はない。
「この間、妖精の森でヴェノム・スパイダーを倒したんだが」
最近クエラセルは、装備用の素材を持ち帰っており…
鞄から、ヴェノム・スパイダーの殻を取り出す。
あまり良い素材にならなかったので、売却しようと思い、持っていた。
「「「おおっ!」」」
いつの間にか集まっていたギャラリーが覗き込んでくる。
このギルドでも討伐経験はあるのだが、三十人程で囲み、道具も大量に使った。
そんな強敵の素材なので、間近で見られる貴重なチャンスだ。
状況を話すと、依頼を受けた事にして、報酬を貰える事になった。
緊急依頼は基本的に報酬が高く、今回は一万五千アグラを貰う。
「まさか、現地の様子見で大物を仕留めるとは。実力について疑いようがない」
ギルドマスターは納得すると、張り出されていない依頼書を見せて来る。
「今回はこれを頼めないか。受けてもらえるなら、支援品も用意してある」
支援品と言うのは、依頼を受ける者が無償で受け取れるアイテム類だ。
本来はギルド所属の者が受けられるサービスで、高難度依頼ではよくある。
一行は、まず依頼書を確認する。
・【サンダー・スライム】一体討伐
→28000アグラ
########
種族:サンダー・スライム Lv100
技能:
<雷撃斬> 雷属性単体攻撃 Lv80
<雷閃> 雷属性範囲攻撃 Lv60
<雷無双> 雷属性攻撃に【麻痺】付与
<剣戟> 物理攻撃された場合、攻撃を受ける前に反撃できる
<状態異常無効> 全ての状態異常にならない
########
「「「こ、これは…」」」
「ウチの現状だと、スライムは全く手に負えなくてな…」
これはクルタの周囲に居たスライムの、一番下っ端と同じくらいのスライムだ。
それが一体だけでも、通常であれば相当な脅威である。
今回はスライム討伐がメインのようで、達成したギルドは高評価のようだ。
「勝てそうになかったら、スライムの情報を持ち帰って欲しい。これが使えるはずだ」
そう言って支援品の、小さな装置を見せて来る。
これはギギが使っていた、属性ダメージを軽減するアイテムだ。
「行くだけ行ってみるか?」
「結局いつか戦う事になりそうだし、良いと思うわ」
「麻痺は効かない筈なので行けるかも…?」
図らずも対策が整った一行は、まず戦ってみて、ダメそうなら撤退する案で一致した。
準備をして妖精の森へ向かう。
…
妖精の森入り口へ着くと、そこから少し離れた平原に、黄色の液体が居る事が分かる。
普段森の中に居るはずのサンダー・スライムである。
既に捕捉されており、触手のように体を伸ばし、手招きするような動作をしている。
「何だあれは…?罠か?」
「罠だったら、地の利がある森で仕掛けるはずよね?」
「まず鑑定してみましょう。何か分かれば…」
########
種族:メッセージ Lv1
能力:情報
技能:
<助けて> 同族が争っている
<力を見せて> 強き者に従う
########
当たり前のように生物鑑定の結果を操作され、高価な会話ツールとして機能させる。
どうやら同族の争いが起きていて、鎮めたいようだ。
サンダー・スライムの力関係は戦闘能力基準なので、一番強い者を倒せば、長となれる。
クルタが長に当たるスライムを全て連れ出したので、この問題になったようだ。
暫くすると、サンダー・スライムは、体を矢印のような形に変形する。
一行は移動してその先が見える位置へ行くと…
木々が切断され、焦げているものが幾つかあり、争いの跡が見られる。
以前現れたヴェノム・スパイダーは、この争いにより追い出された個体だったのだ。
「これは、どうにかしないと小鬼族も大変な事になりそうだな」
「初めから逃げる選択肢は無いみたいね…」
「購入しておいたマナ回復薬を全てつぎ込みます」
理解を得られた事が分かったのか、サンダー・スライムは形状を戻し…
付いて来いと言わんばかりに、先陣を切って移動する。
…
森の中に入り暫く歩くと、前方が光り出し、それと同時に木々が倒れていく。
戦場に着いたようである。
しかし歩を休める事は無く、さらに奥へ進む。
すると、暫く行った所でスライムに囲まれる。
先程の争いもいつの間にか収まっており、争っていたと思われるスライムも寄ってくる。
「…!」
一行を案内したスライムは、その場で跳ねたあと、体の一部で鞭のように地面を叩く。
すると全てのスライムが体を揺らし始め…その後、一体のスライムが前に出る。
よく分からない一行は、もう一度案内したスライムを鑑定する。
########
種族:メッセージ Lv1
能力:情報
技能:
<あれが> 一番強い
<倒せば> 全て従う
<能力> 見れない
########
前に出たスライムは、戦闘で弱ったのか、少しいびつな形をしている。
そのまま戦うようなので、一行からするとチャンスだ。
スライムの方は準備が出来たようで、構えている。
細長い刃と、それを支える腕のようなものが出ており、武器と思われる。
見た感じは、ウォルスがドラハ戦でとっていた構えと似ている。
こちらも合わせ、構えると、音もなく戦闘開始である。
「…!」
「早い!?くっ…」
格上な事もあるが、サンダー・スライムは速度と麻痺のコンボが自慢の個体だ。
単純な攻撃力だけで言えば、他のスライムの方が強い。
麻痺対策が無ければ既に死が見えていた。
「軽減アイテムを使ってあります!行けそうですか!」
「何とか、回復有りで耐えれる!」
クエラセルは防御性能をかなり強化したのもあり、耐える事が出来ている。
「…?」
サンダー・スライムの方は、敵が麻痺しない事に不思議がっている。
その隙を狙って行く。
「ファイア・ボム!」
リコラディアは自身のレベルアップに伴い、新たな魔法を作った。
フレイム・スロワーとは別系統の単体魔法で、攻撃力は更に上だ。
これに各種攻撃力アップが重なり、かなりの威力になる。
「効いたようだ!怯んでいる!」
「一発で決めるつもりだったんだけど…」
追い詰められたと思ったのか、サンダー・スライムは構えを変え…
刃の部分に、目に見える程の電気を纏わせる。
「おそらく雷スキルが来るぞ!」
「そこで、これです!」
グリンが魔法石を使うと、岩の壁が出来る。
次の瞬間、壁ごとクエラセルが斬りつけられるが、大分ダメージが減ったようだ。
「もう一発!ファイア・ボム!」
マナ回復薬をがぶ飲みしたリコラディアは、ファイア・ボムを発動する。
「…」
「うそ、まだ耐えてる…」
しかし、刃の部分を地面に突き立て、動かなくなる。
どうやら負けを認めたようだ。
「勝った…のか?」
しばらく様子を見ると、突き立てた刃を自身から切り離し…
その場に残して後ろへ下がり、他のスライム達と合流する。
スライム達は嬉しいのか、動きを揃えて跳ねている。
これは、自身の命ともいえる刃を献上する事で、忠誠を示している。
刃はいくらでも生成できるが、この行為自体に意味があるのだ。
その刃を受け取り、今日の所はその場を後にする。
…
「「「な、なんて事だ!」」」
ギルドに戻った三人組は、人だかりで動けなくなる。
テーブルの上にサンダー・スライムの刃を置いたせいである。
ギルドマスターも現れ、素直に驚く。
「ギルド総出で倒せなかったアレに三人で勝つとは…流石、赤龍の英雄!」
戦闘前から弱っていた事を伏せた一行は、このギルドの英雄として扱われた。
通常の報酬に加えて飲食無料のサービスを受け、いつもと違う味を堪能する。