60.説明書を読まないスタイル
もっと早くやる予定だった話が今更出てきます。
忘れてたわけじゃないんです…
【迷いの森】にある魔女の住居では、パペット三人組が話し込んでいる。
結構Lvが上がって来たので、今までの戦略などを見直しているのだ。
「現状でも悪くないと思うが、そろそろ新装備を考えないか?」
まず第一に改善点を挙げたのは、クエラセルだ。
最初から無難な装備を貰っているので大きな課題にはなっていなかったが…
これから先の強敵に対して幅を持たせたいのだ。
特に今の防具では、毒ダメージで回復するポイズン・リバースのスキルにより、
全員毒に対してかなり強いが、力押しの相手に弱い。
相手が分かっていれば装備やスキルを入れ替えて楽勝もできる。
「わたしは武器だったら、この子が良い感じだし…次は防具?」
リコラディアは紫蝶の短剣を気に入っているので、呪いが無くても外せない。
そうでなくとも、魔法火力役である以上、威力上昇スキルを付ける事になるのは見えている。
変えるとすればまず防具になりそうだ。
「ボクは武器と言うより、これを強化出来たら良いと思いました」
グリンはマナ吸収に使う棒のようなアイテムを掲げる。
吸収量が上がれば敵の無力化が早まり、こちら側はスキルを使い放題だ。
各自の情報を纏めつつ、少し考えていると、思わぬ情報提供者が現れる。
『アナタ達、ベーススキルはどうしたのよ?』
「「「ベーススキル?」」」
紫蝶の短剣が喋り出し、聞き慣れない言葉が飛び込んできた。
本気で知らない事に、あきれた風に語る短剣。
『いつも敵を鑑定すると出てくるスキルの事よ。よく生きて来れたわね』
実は生物鑑定結果は、"生物を鑑定"しているので、装備のスキルは出ていない。
出ているのは自身が持つスキル…ベーススキルというものである。
これに装備のスキルを上乗せできるのだ。
グリンは、試しに自身を鑑定してみる。
########
種族:フォレスト・パペット Lv60
########
「装備のスキルは出ないらしいな」
「寂しすぎ…」
「取り急ぎ、今日はこれを考えましょう…」
こういう事に詳しそうな、黒爪メンバーを訪ねて移動する。
…
「私で良ければ」
「いやいや、ここは俺が」
「俺の方が強い!」
飲食スペースでは、教師が多数発生した。
特に貢献も発生しないというのに、基礎の講習は人気がある。
というのも、お手軽に一目置かれたい願望を叶える事が出来るためだ。
しかし聞き方が悪かった。
「俺が最初に目を付けられたんだ!」
「それは絶対にない」
「俺の方が強い!」
取り合いになると喧嘩になるのが通例である。
いつの間にか人数も増え、賭けが始まり、場が出来上がってしまう。
しかし今回は思わぬ援護射撃で助かる。
「野郎共!メイドさんは好きかー!」
「「「ウオォォォ!!」」」
「稼ぎを上げれば、ウチにもメイドさんが来てくれる!」
「「「どけ!今すぐ依頼だ!」」」
急に現れたのは、最近見なかったクオだ。
謎の問いかけで争いは別の方向へ行き、一瞬で人が居なくなる。
一足遅れてフェイリアも合流する。
「「「助かった…」」」
クオもその場に残るかと思ったが…
"メイドさん基金"なるものを作るために飛び出して行った。
「メイドでここまでやる気を出す理由は何でしょうか…」
丁度フェイリアしか居なくなったので、ベーススキルについて聞き…
まずは今欲しい能力に近いスキルを付けて貰う事になった。
…
「俺は壁役になるから、バランスよく耐久力を上げたい」
「では、まずはこれを試してみてください」
########
種族:フォレスト・パペット Lv60
技能:
<体力上昇> 体力を上昇する
<防御上昇> 防御力を上昇する
<物理耐性増加> 物理耐性が増加
<属性魔法耐性増加> 全属性魔法耐性が増加
########
「わたしは魔法系特化で!」
「素直に行くなら、火メインで全体的な性能強化ですか」
########
種族:フォレスト・パペット Lv60
技能:
<魔法攻撃力上昇> 魔法の攻撃力を上昇する
<火属性強化> 火属性を含む攻撃の威力を上昇する
<状態異常強化> 付与した状態異常のLvと効果を上昇
########
「ボクは…状態異常無効…?」
「サポート役は状況によりますが、行動不能を防ぐ物を付けてみましょう」
########
種族:フォレスト・パペット Lv60
技能:
<麻痺無効> 麻痺状態にならなくなる
<睡眠無効> 睡眠状態にならなくなる
<安全宣言> 自身の無効スキルの効果を仲間全員に与える
########
「とりあえず、三人が固まって行動する前提でセットしてみました」
「「「おお…!」」」
このベーススキルは、スキルを入れ替えられる者が居れば任意で替える事が出来る。
人によって向き不向きがあり、全員が同じものを使えるわけではない。
また、レベル上昇によって使えるようになる場合もある。
三人組では今回のスキル構成が限界のようだ。
「スキルを変更したい場合は、私かフィーリに伝えてください」
三人組が礼を言うと、フェイリアは来た道を戻って行く。
一行はとりあえず住居に戻り、情報を整理し直す。
…
「ところでスキルと言えば…以前追加したやつは装備だったのか?」
「え?…あー!」
「着脱出来るようなので、おそらく?」
クエラセルが言っているのは、以前ピナの手で追加されたスキルの事だ。
リコラディアは一時期使用禁止されてから、存在を忘れていた。
「もう少し稼いだら、そこに投資するのもありかもな」
色々とお金が必要になって来た事が見えた一行は、稼ぎを意識する。
魔法石もグレードを上げていく必要があり、余裕があればマナ回復薬も欲しい。
戦闘面と言うより、これからは資金繰りと投資先に悩みそうであった。