表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
61/102

59.追加される問題児と忙殺店長達

「これより、罪人の申し開きを認める」


クラーグ王城では、捕らえられた罪人の処分を決めている所であった。

本人からも事情を聴取し、理由なども加味して罪の重さを決められる。


全身拘束された状態であったが、ようやく口だけ自由にされる。


「何か言う事は無いか?」

「ギリマは何処に行った!あいつだけは殺す!」


もはや自身の罪を軽くするという発想がない。

計画が裏切りにより崩れてしまったので復讐したいようだ。


「聞くまでも無いようだ。では申し開きを終え、罪状を確認する」





「最後の罪状だ。クラーグ魔導学院より計画的に毒を盗み、"趣味"に使おうとした」


山のようにある罪状の束を全て読み上げ、集まっていた一同に聞かせる。

あまりの多さに読み上げていた者は喉を傷め、辛そうにしている。

集まっていた者も、想像すら出来ないレベルの内容で気分を害している。


「呆れ果てた奴だ。これぞクズの極み」

「あぁ…?バラバラにされたいか!」

「お嬢様!そのような言葉遣いはなりません!」


外野と罪人が揉め始める。


この罪人は、見た目だけなら麗しきご令嬢だ。

美しさと賢さのステータスを最大にまで上げた代わりに、

それ以外の全てをマイナスにしたような人物で、とても口が悪い。


もちろん性格と趣味も悪い。

今朝も豪勢なご馳走を床にぶちまけた後、それを靴で混ぜ…

闇ギルドに誘拐させた、他所のご令嬢に食わせていた。


「この者が更生する事は考えられない。例外的に処刑するべきと判断します」


誰もが納得する判断だったが、謎の人物が現れ反論する。


「この者、ひとまず私に任せてくれませんか?」


現れたのは、どういう訳か大賢者と呼ばれているフェイリアである。

いつもの雰囲気とは真逆の、真っ白で装飾が大量についたローブを着ている。

今回は逆パターンで、フェイリアが王都民を欺いて利用している。

王都民は二重に騙されている訳だが、実に平和な状態である。


どのみち死刑であるため、厳重な管理下に置くことを条件で許可を得る。

フェイリアはこの罪人を引き取り、連れ帰る。





「私は、何故あのような事を…」

「どうやら正気に戻ったようですね。邪神の力が薄れています」


黒爪に戻ったフェイリアだが、同時に罪人の状態に変化があった。

どうやらこの罪人、邪神に何かされていたようだ。

フェイリアを察知したのか、この者は切り捨てられた。


「毒よりバレにくく、更に残虐で長く楽しめる方法があるというのに!」


どうやら、元々歪んだ性格だったようだ。

邪神がヘマをしたお陰で、クラーグ領の大魔王は人知れず討伐された。


「ところで、どうやって毒を盗んだのですか?」

「実はギルドショップの仕込みから…」


実はギルドショップ店員にも手の者が潜んでいる。

今回は毒を買取した際、特定パターンの魔力を込めて卸している。


一定パターンを感知出来る"書き換え役"と、"窃盗役"を各地に配置しており…

書き換え役は、そのままの意味でパターンを別の物へ書き換える。

一方、窃盗役は特定のパターンを感知した時に盗む役になっている。

窃盗役が持っている物のパターンが変わった時は、わざと盗まれる。

これで時と場合によりすべての条件が変わるため、犯人特定は困難を極める。


今回は学生の動向も利用しており、輪をかけて複雑だが…内通者の情報で取り押さえられた。

この内通者は闇ギルドの者だが、満足する報酬が出ないと依頼人を斬る。

邪神はこの者を使って監視していたようだが、人の欲を看破しきれなかったようだ。


「この思考力を捨てるのは惜しいですね。ギルドで働きませんか?」

「え…?よろしいのですか」

「ええ。"趣味"は封印ですが…処刑なし、最低限の暮らしを保証します」


新たな問題児誕生の瞬間である。

他の者と違い、ショップや各種受付係としての活躍を期待されている。


------------------------------


一方こちらは、トリナムにある【ズバシュー屋さん】だ。

必死に客を捌き続けた結果、ようやく休憩時間が取れる落ち着きを取り戻した。


「ダンジョン効果を侮ってた俺のミスだな…」

『楽しいから良いけどね』


話しているのは店長のタルナンドと…

浴槽のようなものに入っている、マグマのような生物だ。


実はこの生物が金属を溶かし、丁度良い温度に仕上げている。

阿吽の呼吸であり、分担作業の効率が凄まじい。


「そうなんだけどよ、毎日この数は腰に来る」

『人気者って、時に辛い』


タルナンドは水を豪快に飲み干し、水分を補給すると、更なる客が現れる。


「おじちゃーん!良い物持ってきたよっ!」

『おじちゃん、出番出番』


今回の客人は、きらきら屋さん店長の、ピナである。

店正面に飾られている、四十億アグラの剣の材料を持ち込んだ犯人でもある。

またおかしな物品の素材が増えるようである。


「こりゃまた、えらい物を持ってきたな」

『溶かすだけでも緊張感を味わえる、新しい世界に来たよね』


次は槍でも作るか、と楽しそうなやり取りが発生する。

しかしその素材だけでも、豪邸レベルの価値がある品である。





ピナは、【どろみず屋さん】にも物品を持ち込む。


「はいこれ!光輝魔石!」

「さすがですね。助かります」


なんと、ここでは水龍のドラハも働いている。

噂を聞いた女性客が増え、楽になるどころか忙しくなってしまった。


今回は店の内装を改造するので、その素材を買い付けたのだ。

照明を魔力の火から魔石に変え、幻想的な光源を作り出す予定だ。


「今の青い炎も、良い雰囲気だけどね!」

「これは水中宮殿のイメージですね」

「次はどうなるの…?」

「新しい雰囲気、森小屋のイメージです」


今までは青い炎で、室内は少し涼しい環境だったが…

試験的に黄白色の光と、適温で運営してみるようだ。

フィーリの言葉の影響を受け、"お楽しみ"を作り出す作業を考えている。


なお、ドラハは自分でどろみずを作る事で、自分自身を信仰できる事を知った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ