4.市場調査
長く引っ張りたくないけれども、情報を投下しておきたい思いから、一話丸ごと使ってみました。
今日の舞台はイスカ領、【迷いの森】すぐ近くにある、小さな農村だ。
オトルス南側の街からさほど離れていない位置に存在する。
領内で種族差別はないのだが、お互い気疲れする微妙な時期になっているため、
あえて離れたこの村で過ごす者が居る。
「いつでも、どこでも、キラキラさん」
「今日は、鞄で、キラキラさん」
少女が妙な歌を口に出して村を歩いている。
「こんこん、誰か居ませんかー」
少女が、民家の扉を軽くノックする。
民家の扉が開いて、男性が顔を見せる。
一瞬表情を険しくしたが、すぐに優しく微笑む。
「おや、迷子かな?どうしたんだい?」
「えっと、【お肉】を売っている所を教えてほしいの!」
少女は笑顔で答えるが、男性は少し悩ましげな表情になる。
「この村は初めてのようだね。残念だけど、この村では直接売っている所はないんだ」
「遠くにある街が見えるかい?あそこに運んだあと、売っているんだ」
男性は遠くを指差す。
少女もそちらを見て、街から伸びる道を確認している。
「そうだ、丁度売りに出しているポク肉の残りを料理しているんだけど、食べて行かないかい?」
「いいの?わーい!」
「はは、勿論お代はいらないよ。そのかわり、気に入ったらたくさん買っていってくれ」
男性は家に少女を入れ、六人ほどが座って食事できるスペースまで案内する。
「ここに持ってくるから、暫く待っていてくれ。そこの水は自由に飲んで良いぞ」
「はーい!楽しみ、楽しみ」
そう言い、男性は調理場に入っていく。
調理場では女性が肉を焼いている最中だ。
男性の顔がまた険しくなり、女性もそれに気付く。
「あら、どうしたの?来客用のおつまみを探してる訳ではないみたいだけど」
「緊急事態だ。平静を装って、その肉を"お客様"に出してくれ」
「訳があるのね。それなら怪しまれないように三人分用意すると良いかしら」
「ああ、それと適度に会話して時間を稼いでくれ」
この二人、あえて小さい村に住居を構えた夫婦である。
獣人族の男性と、魔人族の女性という珍しい組み合わせだ。
獣人族というのは、感覚が鋭く、運動能力が高い者が多い種族だ。
危機察知能力が高いだけでなく、嗅覚、聴覚等も優れているため、護衛等に一人は欲しい人材だ。
加え、この男性は生物ならある程度の能力を看破できる能力がある。
魔人族はというと、身体能力が異常に高く、寿命の長い種族だ。
それ以外に特筆すべき能力はないが、寿命を生かして個体にあった能力を身に着けている。
この女性はアイテム作成に打ち込んでいた結果、アイテムの性質を分析出る能力を得た。
三人分の料理が出来上がると、先ほどのテーブルに運び、並べていく。
少女は輝く石のようなものを眺めていたが、鞄にしまう。
「さあ、冷めないうちにどうぞ。お口に合うと良いのですが」
「とっても美味しそう。いただきまーす!」
少女が焼いた肉を頬張り、幸せそうに食べている。
それを獣人族の男性が見つめている。
魔人族の女性がタイミングを見つけて話を振り、それに気付かせないようにする。
他愛のない話だが、少女は楽しそうに話に答える。
食事が終わるまでその状態は続く。
「とっても美味しかった!お兄さん、お姉さん、大好き!」
「えっとね、大好きな人にはお礼をしなさいってママが」
そういって、鞄の中から大ぶりの輝く石を二つ取り出し、テーブルに置く。
「これ、あげるね!ママにあげたらいつも大喜びしてくれる石なんだよ」
魔人族の女性が言葉を無くして固まってしまう。
その石の価値ではなく、"それが何なのか"知ってしまったからだ。
異変に気付いたのか、男性が話しかけて意識を向ける。
「きれいな石だな、ありがとう」
「さて、街まで行くなら、そろそろ出ないと夕方になってしまう」
「街道に抜ける道の近くまで案内するから行こうか」
男性が少女を連れて家の外へ出る。
女性は意識を取り戻し、石をよく観察する…
王都ではアイテム鑑定スキルと言われる能力によって、詳細が分かっていく。
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品名:命の魔石 Lv39
材料:人間族
用途:材料となった対象を使用する儀式等で、このアイテムを代わりに使用できる
産地:オトルス領
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女性が大まかな情報を纏めた頃に、男性が帰ってきて話す。
「察したと思うが、あれはヤバいやつだ」
「情報を取れるだけ取って、しかるべき所に対応してもらおう」
「力が強すぎて最後まで情報が取れなかったが…ここまでは分かったぞ」
男性が少女の能力などについて話していく。
こちらは、王都では生物鑑定スキルと言われる能力だ。
女性のスキルと合わせて殆ど何でも分かるので、お互い利用している関係だ。
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種族:リビングデッド Lv180
能力:擬態 復活
技能:
<集魂結晶作成> 【呪印】状態の生物を命属性の魔力に変換し、魔石化する
<復讐劇> 自身を倒した相手に対して段階的にステータス開放
<死の刃> 死属性単体魔法 Lv90 【呪印】付与
<知能吸収> ????
<自分改造> ????
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「命属性、死属性という見たことのない属性がありますね」
「ああ、気になるが…今は報告を先にしよう」
二人は情報を纏めあげ、緊急案件として村と近隣地域に連絡した。
ゲームでは、少女から命の魔石を取引で手に入れられるようになります。
この魔石、アンデッド系には財宝より上の取引材料になるので、他の非人道的システム(悪用すればですが)と組み合わせるとすごい勢いでレアアイテムが集まります。
魔王ルートとか呼んでますが、やってることが一般的な設定の魔王より酷いです。
善悪どっちにもなれるのをコンセプトにしたんですが…何で悪の方がシステム使いこなしやすいんでしょうかね。