55.食べられるというデータ
実は魔神を減らせば良かったという思いと、そうなると矛盾が…という思いが合わさっていたんですが、結局減らすをの止めました。
ここを触ると矛盾が大量発生して死ぬ気がしたので。
本日、【迷いの森】にある魔女の住居では、珍しい客人…というより仲間が来ていた。
小鬼族の者達なのだが、普段は直接訪ねて来る事は無い。
しかも、通訳のクルタも不在のようである。
「ダー ガ ミネ!」
「「エーマ ゲード ミネ!」」
手には地図のようなものを数枚持っており、渡そうとしているようだ。
相変わらず言葉はよく分からないが、一枚ずつ解説してくれる。
まずは小さい紙を見せ、指差しながら領名を言う。
かなり広い範囲の地図のようだが、ゼクト領の北部の辺りをツンツン突く。
「ダナ ニウ」
どうやらその辺りに何かがあるという事らしい。
そしてもう一枚の地図を取り出す。
「これは、木がたくさんあるな…森?」
「謎の絵はスライム?」
「旗みたいなマークもあります」
実は、これが【妖精の森】の地図である。
リーダーのギギは、フィーリ経由でパペット三人組の活躍を聞き…
今なら行けると踏んで場所を教えてくれたのだ。
旗の位置が昔使っていた拠点で、これを使っても良いと言っている。
「「「ウー!」」」
ギギに認められたことで、自動的に他の小鬼族にも認められる。
仲間意識が強くなったのか、木の実や干した肉を置いていく小鬼族。
食料に余裕がある時、出掛ける者に与える習慣があるのだ。
「その干し草みたいのは何?」
「「「ファー…」」」
リコラディアは、小鬼族が腰に付けている謎の草が気になった。
しかしギギと違って上手く通じず、しかも説明できないようで困り出した。
実はこれは苔の一種で、クイーン・スファグナムという植物だ。
乾燥した状態で持ち歩け、水を与えると復活して成長を始める。
道を塗りつぶしたジャスティス・ポアナの対策のために開発されたもので…
これを植えた所が道となり、再びジャスティス・ポアナで埋まる事は無い。
表面にマナを含んだ水を排出するため、キラキラ輝いて道を示すのだ。
拠点の手伝いが無い者は、これを植える地味な活動をしている。
この小鬼族たちは一旦拠点に戻るようで、見送る。
「そういえば、回復の魔法石を使い切ったままでした」
「忘れない内に補充したいな」
「行きはアレね!」
ドラゴニック・エンペラとの戦いで使い切った事を思い出し、トリナムへ向かう。
住居前にある搭乗口から、空中を走る木箱に乗り込む三人組。
しかし、リコラディアに運転させることは無かった。
…
「あんた達!こっちだよ、こっち!」
トリナムへ着くと、記憶にない中年女性が話しかけて来る。
誰だったか思い出しながら歩を進める。
近くに寄ると、何かを思い出したように取り出して見せて来る。
「言ってなかったね!これだよ!」
手には銀貨がある。
実は、以前銀貨越しに訪れて来た、魔神【銀貨】である。
三人組は挨拶すると、それに返し、名前を教えてくれる。
この状態ではフロレスタと名乗っているそうだ。
「ちょうど最高級品を焼き上げてる所さ。食べて行きな!」
側には、柱と屋根だけのような食事スペースがある。
看板には【えいみん屋さん】と書かれているのが気になる。
とりあえず木製の椅子に掛けると、別の人物も寄ってくる。
「よう、ここで会うのは久しぶりだな!」
「はじめまして、でしょうか?」
謎の良い匂いに釣られてきたのは、フラックとマーカである。
三人組は、マーカを見た事が無いが、話だけは知っている。
とりあえず挨拶を返し名乗っておく。
「今日は休憩日で、丁度空いてたマーカと遊びに来たって訳だ」
あれから距離が縮まり、オフの日は遊び歩く仲になっていた。
ただし、人気のショップ店員が偶然暇している訳はない。そういうことである。
フラックが簡単に三人組との関係を語って行く。
「そんな感じで、同じ魔女の下で育てられた仲間というか」
「という事は…皆さんもトンデモ素材を持っているんですか!?」
マーカの言っているのは、魔神の素材等の事だ。
流石にそこまでの品は無いが、思い当たる品があった。
クエラセルが、この後【たましい屋さん】に持ち込もうとした素材を出す。
「防具にならないかと思って持ち帰ったんだが」
「…」
「マーカ、目が怖くなってるぞ…」
マーカは何も言わずに鑑定結果を見せる。
########
品名:レッド・ドラゴンの頭蓋(損傷) Lv280
材料:ブレイズルビー
用途:魔法石など
産地:レッド・ドラゴン
########
「こ、これの持ち主を倒したのか…!?」
「「「意外と凄かった…!?」」」
フラックは、マーカの気持ちが分かったようだ。
この頭蓋は時間が経ちすぎて損傷が酷く、用途は狭いが…元々は超高級素材である。
残念ながら防具には出来なさそうだ。
「あなた達相手に買い取ると、とんでもない事になりそうね」
「実際、既になりかけてるからな…」
フラックも負けじと品物を出す。
########
品名:水龍の鱗 Lv360
材料:ガーネス鉱石
用途:魔法石や各種水属性合成など
産地:魔神【水龍】
########
品名:雷禍の雷球 Lv360
材料:サンダー・スライム
用途:魔法石や各種雷属性合成など
産地:魔神【雷禍】
########
品名:銀貨 Lv360
材料:銀
用途:通貨
産地:魔神【銀貨】
########
「「「うわぁ…」」」
どれもジェイドの魔神化状態から手に居れた品である。
かなり攻略が進んでいる事が分かる。
「ある意味一番目を疑ったのは銀貨だ。あんなのを倒して普通の銀貨一枚だとな…」
「呼んだかい?」
いつの間にか"最高級品"が焼けたようで、銀貨の落とし主、フロレスタが現れる。
置かれているのは、豪快に盛られた肉をメインに、スープ、サラダ等々…
かなりのお値段になりそうな量と種類だ。
邪魔にならないよう、品物をしまっておく。
「張り切って大盛にし過ぎたから、そこの二人も食べな!」
フロレスタは食器等を配置し、仕事を終えたのかまた姿を消す。
三人組は謎の料理をじっくり観察し、食べてみる。
「美味いという言葉しか出て来ないな…」
「え、えーっと…味だけでなく見た目も綺麗!」
「コメント…被らないコメント…!」
何かに苦戦するグリンだが、そのうちどうでも良くなり…
無心に口へ運んでいき、堪能する。
余計な御託を言う前に食べたくなる程の味だ。
フラックとマーカも、この見た事無い品を口に運んでみる。
「こいつは…コメントに苦戦する気持ちが分かる」
「勝てる気がしない…」
フラックはいつも通りだが、マーカの方はダメージを受ける。
実は料理にとても自信があった。しかし叩きのめされる日だったのだ。
ただ負けるだけではプライドが許さず、料理を鑑定する。
########
品名:最高級肉料理 Lv150
材料:ガイア・タイタン、デス・ヘリックス、シヲマネク
用途:食事(全状態異常、全属性耐性上昇)
産地:【えいみん屋さん】
########
「な、何なのこれ…」
「「「「へー」」」」
慣れていないマーカは驚愕するが…
その他四名は異常事態に慣れているので、食べられる素材としてのデータを増やす。
「あれ、これ。えいみん屋さんって…」
「良い栄養と良い睡眠を提供する。略して"えいみん"さ!」
店名を見て不安になるマーカが言うと、フロレスタがいつの間にか居て解説する。
体調を整える効果もあるようで、冒険から帰った後、気持ちよく眠れるのだそうだ。
しかし、やはり名前はただの物騒な店にしか見えない。
一行は暫く休憩した後、分かれて各々の目的を果たしに行く。