51.魔神王女は曖昧になるか
リアルサーバーが混雑中なので、当面は0時前後に間に合わなかったら次の日の投稿になります。
毎日更新を期待してくれている人が居たら申し訳ない…
「何を見せてくれるのか、楽しみね」
「全く予想が付かないな」
「仲間が増えたとか?」
「…」
フィーリと、パペット三人組は、呼び出されて移動していた。
ここは【迷いの森】小鬼族の拠点だ。
以前、森を動かす所を見ていた、強力なスライムに呼ばれている。
お返しに何かを見せてくれるらしい。
グリンはまだちょっとトラウマが残っている。
現地に着くと、待っていたのか、クルタから分離したスライムが整列している。
「あっと驚く物を見せてくれるらしいですよー」
クルタも何も聞いていないようで他人事だ。
観客が集まったところで、スライム達が別の形に整列する。
以前のような色別に分かれるでもなく、三つのグループとそれ以外に分かれる。
「…?」
整列はクルタが教えているのだが、この形は初めて見る。
どうやらスライム達のオリジナルのようだ。
その三つのグループは、いつもの調子でクルタに取りつく。
暫く待つと、透明な兜、赤い鎧、黄色の剣のような配色の物体が出来上がる。
まるでクルタが液体の装備を身に着けているようだ。
そして…
「ひゃっ!ちょと…怖…」
尋常ではない魔力が集まり、装備となったスライム達が輝く。
暫く経つと、スライムがクルタに何かを伝える。
「えっと…私を鑑定しろ、と言っています…」
グリンはどうにでもなれ、とクルタを鑑定する。
########
種族:魔神王女 Lv3
技能:
<魔神装・炎羅> 【炎羅】のスキルを使用出来る
<魔神装・水龍> 【水龍】のスキルを使用出来る
<雷禍> 【雷禍】のスキルを使用出来る
<テイマー> 心を通わせた生物を仲間に出来る(スライム、邪神)
<家族愛> 仲間の生物のステータス上昇、意思疎通が出来るようになる
<オーダー> 仲間に命令出来る
########
「とんでもない生物が生まれたようね…」
「「「…」」」
どうやら、クルタは完全に人を辞めてしまったようである。
スライムが魔神化を使い、クルタに装備される事で魔神装となる。
いわゆる"アタッチメント魔神"だ。
密かにジェイドから教わっていて、ようやく実用化できたのだ。
「あれ?雷だけ変です」
クルタも言われて気が付き、雷担当のスライムに聞いてみる…
「"本物"って…え!?」
話を聞くと、低レベルのサンダースライムに紛れ込んでいたのだという。
他のスライム達も最近まで気が付いていなかったが、魔神装の実験中に発覚した。
楽しそうだからという理由だけで着いて来ている。
謎が解けた所で、クルタの体力が限界を迎える。
「う、腕が…」
中身は本物のLv3なので武器の重みに耐えられないのだ。
スライム達は急いで元の状態に戻ろうとするが…
「そいつは頂いた!」
何者かが現れて、黄色の剣を奪う。
もちろん普通の装備ではないので、装備が装備者に雷攻撃する。
「あががが…!」
謎の人物から凄まじい雷光、焦げ臭い空気が発生している。
「「「クオさん…?」」」
"お菓子事件"と違って、今回は理由があるようだ。
雷禍の方は何かに気付いたようで、放電を止める。
相当酷い事になっていそうだが、やはりなぜか無傷だ。
「この状態で、これを生物鑑定しなさい!」
クオは、自身の靴を生物鑑定するように言う。
アイテム鑑定じゃないのかと思ったが、グリンはとりあえず鑑定してみる。
########
種族:魔神【風来】 Lv360
技能:
<すげー!> 凄くなる
<みせて!> 見る
<くれ!> 手に入れる
<いらん!> 捨てる
<ねる!> 無かった事にする
<えへへ!> 曖昧を通す
########
「「「何これ…」」」
実は魔神を"履いている"のだ。
靴に見えるが生物で、装備品ではなく共生しているようなものである。
性格が似ているのでお互い不自由なく行動している。
クオは装備の効果が風来にまで行くかと期待したが、そうではないようだ。
黄色の剣を開放すると、スライムとなりクルタの元へ戻る。
ひとまず場が落ち着き、見せたい物を見せたクルタ一行と別れる。
…
「ねえねえ、座ろ?」
話しかけてきたのは、風来である。
誰に話しているのかすら分からない程に曖昧だ。
男性とも女性ともとれる声をしている。
「全員、落ち着ける場所に行って、茶を飲みながら話したいって!」
クオは、脳が繋がっているのかと思えるほどの翻訳をする。
とりあえず住居へ移動する事にした。
…
話す準備が出来ると、クオの靴が二つ合体し、鳥のような生物が現れる。
その鳥が茶を見つめているのだが、何もしていないのに茶が減っている。
「初めて見るけど、面白いスキルね」
フィーリは何となく理解出来たようで、スキルを褒める。
パペット三人組は全く分からない。
「でしょ!とりかえっこ、しよ!」
風来は謎のスキルを使い…
「たのしーよ!」
「「「え?何事?」」」
なんと、全員のスキルを風来のスキルにしてしまった。
「ああ、戻るから心配しなくて良いよん」
クオは経験済みのようで、言いながら安心してお菓子を食べている。
フィーリは良い機会なので色々試しているようだが、何をしているのか分からない。
何かを閃いたクエラセルは、謎の本を取り出す。
「無敵の剣が欲しい!」
しかし、何も起こらない。
失敗すると残念な者になってしまう恐怖のスキルだ。
「全てを焼き尽くす力、我が手に集え!」
便乗したのはリコラディアだ。
やはり何も起きないが、先に辱めを受けた者が居るのでダメージは半減だ。
「リコラディア…もしかしてあの病気に…」
"浄化作業"が行われる事になるが、それは後の話だ。
「欲しいもの…情報?」
「お、やるじゃん!」
グリンが使い方に悩んでいると、目の前に高そうな本が現れる。
これは以前から興味があった最新式の魔法道具の本だ。
しかしどうやって呼び出したのか分からない。
「剣!」
「ティーカップ!!」
「魔法石!」
「権力!!」
二人は苦戦しているが、そうこうしている内に時間切れとなる。
風来は全員のスキルを試してみたようで、満足したようだ。
「おしまい!」
すると、全員のスキルが戻り、グリンの手元にあった本は消えてしまう。
二人だけ不完全燃焼で終わってしまったが、珍しい経験が出来た。
本来の目的を思い出したクオは、"りふじん"ダンジョンの続きが出来たか確認する…
ゲームでは、強敵(魔神勢など)を全員倒すと、話中のスーパークルタが解放され、遊べます。
同時に開放される、"ふらっく"という難易度のダンジョンで活躍します。
内容的には魔神三体同時だとか、頭のおかしいボスラッシュ系で、彼の気持ちが分かるダンジョンとなっています。