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47.本物とご対面

【迷いの森】にある魔女の住居では、パペット三人組が冒険の準備をするが…

今日は朝早くから、見知らぬ来客が現れる。

フィーリを探しているようだが、ついさっき外に出て行った。

敵意はなさそうなので、中に入れ、待ってもらう。


「私は、ドラハ=アクアルーラーという者です」


髪、目、装備類やら全てが青系の、背の高い男性だ。

鍛えられているのは分かるが、体の線は細めだ。

おそらく街に出れば女性陣に囲まれる。


そして、名前に対して真っ先に反応するのは、リコラディアだ。


「水魔法が凄そうな感じね」

「どうしていつも簡単に見破られてしまうのか…私は魔神【水龍】です」


あっさり白状した魔神に対して、グリンは身構える。

クエラセルとリコラディアは、どんな存在か分かっていない。


今のタイミングで魔神についての概要を話しておく。

邪神関連は最低限だけ話した。


「ただいまー うっ…」

「フィーリ!会いたかった!」


そうこうしていると、フィーリが帰ってくるが…何だか反応が良くない。

水龍のドラハは満面の笑みを見せ、ハグしようとしたところで動きが止まる。

いつの間にか足にツタが絡まり、進めなくなったのだ。


「…」


ドラハはフィーリに気があるのだが、相手にされていない。

なお、過去に何度か本気で戦ったのだが、一方的に蹂躙されている。

終わると回復してくれるので一種の宗教的な感じで好意を持っているのだ。


ここで用件を思い出し、落ち着いて真面目な表情で話す。


「今日は頼みがあって来ました。これを大量に増やせませんか?」


手には、マヤカシ・ナッツの実がある。


「増やせるけど、どうするの?」

「巫女の店、【どろみず屋さん】で大量に使うのですよ」


どろみず屋さんの店長であるイリスは、水龍の巫女というものを務めている。

"どろみず"生成時に特殊な結晶が出来上がり、それを献上している。

これが水龍のエネルギーとなるのだ。

店ではその副産物を売っている事になる。


「壊すのは簡単、作るのは難しい…最近ようやく意味が分かった所です」


この言葉が理解できるまで来るなと言われているので、真面目に研究したドラハ。

歴史書に載っている大陸分裂事件など…

特に大規模な地形破壊の犯人であったのだが最近自重している。


精神面の成長を感じ、フィーリはマヤカシ・ナッツの増産を引き受ける。

ドラハは代金替わりなのか、謎の輝く物体を渡す。


「ところで、壊すのが難しい物に興味はない?」

「…詳しく」





一行はフォレスト・ダンジョン入り口に来た。

そこには、多数の"入場待ち"冒険者が居た。


「よう、魔女の姉さん達。やっと魔神化・水龍に勝ったぜ!」

「凄いわねぇ。今の所トップよ」

「…ほう!」


かなり後ろの方で待っていたフラックが話しかけて来る。

ドラハが興味を持つ。


「ん?あんたは見た事無い…よな?」


お互いに挨拶した後、ギルドのメンツが合流する。

フラックは先に順番待ちをしていたのだ。

あまりの人の多さに、代表一人で列につく事が許されている。


落ち着くところを見届け、フィーリが全体に聞こえるように喋る。


「ダンジョン攻略中のみんなにニュースがあります!」


急いで中に入ろうとした先頭も一旦思い止まる。


「期間限定で、難易度"がんばれ"を開放します!」


宣言すると、何も無かったスペースに光の道が出来上がる。

新たなダンジョンが出来たようだ。


他のダンジョンと違い、致死ダメージを受けても必ず耐え、

入り口に戻されるだけのダンジョンだ。

何度でも挑めることから、がんばれと名付けられている。

説明が終わると、ドラハが前に出る。


「この中で私を倒せれば、倒したチームの勝ちです」


簡単そうに言うが、勿論そんな甘い話は無い。

しかしフィーリが盛り上げるための油を注ぐ。


「勝利チームには、賞金五億アグラ進呈!」

「「「ウオォォォ!!」」」


ドラハが中に入るのを見届けた瞬間、人がなだれ込む。

フィーリと三人組は見学することにした。





やはり現実は甘くなく、殆どの冒険者が入り口に戻されるループを繰り返す。

しかし何とか耐えているチームがある。


「魔神化とは比べ物にならない、ってか」

「今回は数で有利。うまく利用しましょう」


耐えているのは、ギルド【ワークプレイス】だ。

ジェイドの魔神化で先に手の内を見ているので、何とかなっている。

他のチームが犠牲になったタイミングで仕掛けるなどでダメージを作っている。


「今の時点で戻っていないのは、あなた達だけですね」


ドラハが機嫌よく話しかけて来る。

最近暴れていないので、やり合える相手が欲しいのだ。


「そろそろ新しいものを見せます」


そう言うと、戦闘スペースの端の方が全て水没し、ドラハは地面に吸い込まれる。


「気配察知!念のため水耐!」


ジールメントが指示を出す。

すると、間をおいて地面から細長い龍が現れる。

いかにもな水龍である。これが本当の姿だ。


「地面が無くなったら終了です」

「と、とりあえず鑑定!」


フラックはとんでもない宣言を聞き流して鑑定する。


########

種族:魔神【水龍】 Lv360

技能:

 <水の支配者> 水のスキルを使用でき、性能大幅上昇

 <水の世界> 【水球】を空中に漂わせる事が出来る

 <再構成> 水と水龍の構成を自由に入れ替える事が出来る 

 <信仰結晶> 巫女の作成した結晶の量に応じてステータス上昇

 <地形破壊> 地形に攻撃がヒットした場合、ダメージ三倍化

########


「だめだ!情報だけではよく分からん!」


魔神はその辺に居るような生物と違い、大体大掛かりな力を持つ。

そこを理解したり、先読み出来なければ立ち向かう事すら出来ないのだ。


ジールメントがどうしたものか困っていると、空中に水球が浮かんでくる。

何も出来ずにいると、助っ人が現れる。


「別件でこんな事になるとはな。今日だけ混ぜてくれないか」

「え?師匠!?」


なんと、ウォルスが現れた。

フィーリに頼んで、新しい武器の実験をさせてもらう約束だったのだが…

どうせならという事で、水龍の檻に放り込まれたのだ。


「面白そうです。飛び入りを許可しましょう!」


むしろ嬉しそうなドラハ。

ウォルスはジールメントが復帰するまで指揮をとる。


「前列水耐!後列は魔法で水球を打ち落とせ!」

「「「りょ、了解…!」」」

「とにかく相手の手を潰すんだ!意味の無い行為などしてこない!」


各員はウォルスの狙いも、ドラハの狙いも分からない。

しかし狙いは正しかったようだ。


「お見事です。まずは生き残りましたか」


実は水球には、麻痺を与える魔法と、熱を発する魔法を仕込んである。

魔法を起動されると麻痺成分の蒸気が充満して全員戦闘不能となる。

途中で妨害すれば発動しない。


「では… アシッド・レーザー」

「所持していない魔法で攻撃!?」

「総員回避!」


スドドドド…


何とか避けられたようだが、陸地が半分になる。

この調子では攻めきれずに終わるので、ウォルスも仕掛けていく。


「サンダー・ケージ!」

「ほう…これは中々」


水龍となった体は大きいので落雷が何発もヒットしているが…

あまり効いていないように見える。

他のメンバーも、ここぞと攻撃を繋げるが、どれも大したダメージは無い。


「極雷斬!」

「そ、その技は…うぐ…」


ウォルスは一瞬で重心を移動して斬り、すぐに離れる。

大きく付いた切り口に強い光が走り、コゲ付く。

思いもよらない攻撃に、そこそこダメージを受けたようである。

痛みなのか、尻尾の先端を水につけ、パシャパシャしている。


「そうか、あれだ!アイテム鑑定を食らえ!」


フラックは何かに気が付き、あえてのアイテム鑑定だ。


#########

品名:水

特性:

 <アクア・ストライク> 水属性全体魔法 Lv120

 <アシッド・ミスト> 水属性全体魔法 Lv180 【防御力低下】付与 

 <ドラゴン・バイト> 物理単体攻撃 Lv500 【ダメージ二倍】

#########


「な、なんだこれ…」

「とっておきの一つを見られてしまいましたか」


実は、周囲にある水全てにスキルを封じ込めてあるのだ。

使いたいスキルの水を呼び寄せ、体に取り込んで使用している。

これを見た一同は全く動けなくなってしまう。


「もう他に誰も居ません。もう一つのとっておきで終わりましょう」

「ダイナ・スプラッシュ!」





一行は目が覚めるとダンジョン入り口に居た。


「面白かった?」


フィーリはいつもの調子で感想を聞くが、"全員死んだ"のだ。

最後の光景は、凄まじい水流のビームで薙ぎ払われて全てが消滅する所だった。


「良い経験だったが、対処方法が存在しない物はどうすればいい?」

「同じ威力のスキルで打ち消せますよ?今後に期待ですね」


ドラハから無茶なアドバイスを受け、一行はその日を終える。

ゲームでは、もちろんドラハとも戦えますが、いろんな方法で弱体化できるので、案外楽に勝てます。

一方、縛りプレイで挑むと、途端に凶悪化する面白いやつです。

基本は搦め手と強攻撃を交互に繰り返すパターンですが案外読みづらいです。

あと、忘れた頃にドラゴン・バイト等で不意の戦線崩壊が起きます。

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