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43.横のつながり

情報展開的なあれです。

勘の良いテストプレイヤーの一人が、この話と以前の情報で、名前の出ている魔神の正体を見抜いていたのに驚いた思い出があります。

フォレスト・ダンジョンのオープンにより、発展の兆しが見えてきた場所がある。

【迷いの森】すぐ近くの、トリナムだ。

宿泊施設が全く足りず、村周囲にテントが乱立する異常な状態になっている。

宿屋建設を急いでいるが、想定人数を大きく上回っているため、当分状況は変わらないだろう。


村中にある謎の店にも列が出来ており、売り上げは期待できそうである。

しかし、厄介者が訪れる店があった。


「ん?お前…これじゃねえか!」


ある冒険者パーティの一人が手配書を見ると、店長と同じ顔があった。

賞金十万アグラと書かれている。


「今は違うの!」

「うるせえ!店を壊されたくなかったら、大人しくしろ!」

「…」


ここは、【きらきら屋さん】である。

店長のピナが、男性に無理やり連れ出そうとされている。

手配書は取り下げられたのだが、他領の分は処理に時間差があるため、残ったままだ。


もちろん、抵抗すれば一瞬で肉塊に出来るのだが…

人に危害を加えない約束で店を立ち上げたので、反撃できない。


「これでアレを手に入れる予定が立ちそうだ。ツイてるぜ」

「そうだな。チビ、さっさと歩け!」


店と販売物に手を出さない約束で、大人しく連行されるピナ。

冒険者は、この少女が高レベルという事を理解していない。

普通にロープで手を縛って歩かせている。


「何をしている!」

「あ、お兄さん!」


そこへ遭遇したのは、手配書の原型となる情報を展開したウォルスだ。

既にピナの事情は聞いており、村の仲間として協力している。


しかし、冒険者パーティは手配書を見せつけ、連行する事を宣言する。


「その手配書は取り下げられている。連れて行ったところで賞金は出ない」

「情報の遅い領なら出る可能性がある」

「そうだそうだ、部外者は引っ込め!」


金の為だけに来ている冒険者の中には、手段を選ばない者達が居る。

楽に稼げる可能性があれば、強引でも手を出すスタイルだ。

店の商品の価値が全く分かっていないので、その程度の者である。


「その子が居ないと困る人達が居る。これで見逃してくれないか?」


ウォルスは、持っていた二万アグラを差し出す。


「…貰えるか分からん金よりは、こっちの方が良いか?」

「悪くはない取引じゃないか」


冒険者たちは損得勘定で話し合う。

ウォルスの実力であれば、武力解決も簡単であるが…

犯罪者でない者に対して行うと今後の為にならないと考えた。

暫くすると冒険者パーティの一人がピナを開放する。


「そいつで手を打つ。運が良かったなチビ」


このパーティはアイテムの力でダンジョンクリアを目指すスタイルなのだが…

きらきら屋さんを利用し辛くなり、大きな損失になる事に気付いていない。


とりあえず二人はきらきら屋さんに戻る。





「暫くは同じような輩が来るかもしれないな」

「でも、お店閉めたらみんな困っちゃう」

「…そうだな。当面は周辺の巡回頻度を上げておく」


今のウォルスは、トリナムの警備を担当している。

急いで警備隊を編成しているのだが、これも追い付いていない。

その間ボランティアで引き受けているのだ。


暫く話した後、お礼をしていない事に気付いたピナは、剣を取り出す。

二万アグラの支払いも兼ねているようだ。


「お礼に、これを受け取って欲しいの!」

「細長い剣…?この店は武器も作っていたのか?」

「ううん、ライカちゃんから素材を貰って、タルナンドさんに作ってもらったの」


タルナンドとは、【ズバシュー屋さん】の店長で、武器を扱っている。

加工も受け付けており、素材を持ち込んだ結果が、この剣である。


とりあえず剣を受け取ると、明らかにとんでもない物の気配を感じる。


「他のみんなには、危なくて売れないの!秘密、秘密」

「ありがとう、使わせてもらおう」

「あと、お姉ちゃんに、これを渡して!」




「エレノア、これの詳細が分かるか?」

「あら?新しい剣かしら。ちょっと待ってね」


ウォルスは一旦家に戻り、嫁の女性、エレノアに剣の詳細を見てもらう。

しかし、エレノアは言葉を無くし、剣をそっとテーブルに置く。

鑑定結果は出ているようで、結果を伝える。


#########

品名:雷神刀

材料:雷禍の雷球、ボルストパーズ、ディアグ鉱石

特性:

 <雷禍> 魔神【雷禍】のスキルを使用できる

 <雷電> 雷属性を含むスキルの性能を大幅上昇 

 <剣戟> 物理攻撃された場合、攻撃を受ける前に反撃できる

#########


「「…」」


色々な物を知っている二人は、凄まじい物だと分かるので、会話を無くす。

ピナが親し気に名前を呼んでいたのは、雷の魔神である。


「まさか、これも…」


ウォルスがもう一つの品物を取り出す。

エレノアへ渡す品で、装飾が付いた細い木の棒のようなものだ。

剣を見なかった事にして、鑑定する。


#########

品名:風来棒

材料:風来の羽根、神木の樹皮、エーリット鉱石

特性:

 <風来> 魔神【風来】のスキルを使用できる

 <凪> 強風を止ませる事が出来る 

 <突風> 短時間、強風を起こす事が出来る 

#########


「「…」」


二人は、再び固まる。


実はトリナムでは各店が連携し、素材や技術を回している。

今回の例では、ピナが材料を仕入れ、タルナンドが剣と棒の加工を請け負った。

同様に、完成品の情報と、同じ素材を【たましい屋さん】へ提供する事で、おかしな防具が出来上がる。

目を付けた冒険者が装備を買えば、最終的に全員が儲かる仕組みである。

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