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39.ダンジョンを闊歩する黒の悪魔

本日は何かがあるらしく、慌ただしく人が出入りする。


ここは【迷いの森】入り口、一般人向けに用意された道だ。

森に作っていた、フォレスト・ダンジョンのお試し版が出来たようで、一般開放するのだ。

この道を使えば素早くアクセスできる。


パペット三人組は人が集まるか不安だったので様子を見に来たのだが…

森の外まで列が続く大盛況のようだ。

団体で来るものが多いようで、一塊で会話している。


見た事のないパペットの女性が、塊の代表者と会話し、メモを取っている。


「クラーグ魔導学院様、登録完了です」


ダンジョン攻略する場合、ある一つの団体を登録する。

その団体の中でクリア階層や情報を共有する事が出来るので、所属人数が多いほど恩恵がある。

例えば、団体の中の一名が十階まで侵入すれば、所属している他の者も直に十階に移動できる。


今登録した団体は、大規模の魔法専門学校のようなものだ。

生徒らしき多数の若者と、それを率いる先生にあたる人物全てで共有する事になる。


心配していた事が杞憂だった事に安心し、三人組はダンジョン入り口に戻る。

ちょうど森の魔女、フィーリも戻ってきて合流する。


「よう、面白そうな物に釣られて来たぞ」


ダンジョン入り口、先頭列に居るのは、冒険者のフラックだ。

ここなら絶対面白いと踏んで、我先にと駆け付けたのだ。

他にも連れが居るようで、その中の一人が前に出て来て挨拶する。


「ギルド【ワークプレイス】マスター、ジールメントです。よろしく」


この者はフラックの所属ギルドでマスターを務める男性だ。

元マスターのウォルスが去った後、その座を引き継いだ。

古参メンツにはジーさんと呼ばれ、慕われているようだ。


フィーリとパペット三人組も挨拶すると、オープン時間になる。

開始の音頭があるようで、フィーリが入り口に立つ。


「夢と希望、悪夢と絶望、どちらを掴むもみんな次第」

「苦難を打ち破る実力があるなら、挑むが良い!」

「フォレスト・ダンジョン…オープン!」

「「「「ウオォォォ!!」」」」


凄まじい勢いで人がなだれ込む。

入り口は三種類あるのだが、殆どの者は"ふつう"と書かれた看板の入り口に殺到する。


しかし、普通と違う使い方をする者たちが居た。

"やさしい"ダンジョンの前に人が集まっている。


「まず中の安全を確認してきます。確認が取れ次第全員で入ります」


クラーグ魔導学院という名で登録した者たちだ。

実は、このダンジョンを魔法訓練所として使うつもりなのだ。

学院内では規制が厳しく、許可なく攻撃魔法をぶっ放すと、退学になる。

しかしその許可も授業中以外は殆どとる事が出来ない。


フィーリはこの状況に目を付け、好きに破壊して良い訓練所を提供した。

代わりに、マナや金品を要求しているのだ。


「どうやら、話に聞いた通り、弱い生物しか居ません」

「攻撃魔法も許可しますが、人に当てないように」

「では…この中で自習とします!」

「「「「ウオォォォ!!」」」」


冒険者並みの勢いでなだれ込む学生たち。


中で早速攻撃魔法を連発したり、植物をスケッチしたり…

窮屈な生活を忘れられたようで、活気に溢れている。





一方こちらは、"ふつう"ダンジョンの状況なのだが…


「ガフッ…俺を捨てて逃げろ…」

「解毒しているのに毒が消えない…」

「おい、向かってきたぞ!逃げないとやばい!」


ここは三階なのだが、早くも死に際の者が出ている。

高レベルの毒により解毒が追い付かないのだ。

よくあるダンジョンでは、いわゆる"ボス"の毒でも解毒できる魔法を使っているのだが通用しない。


「この情報を頼む…燻っていた俺の、最後の貢献だ…」


毒で瀕死の男性は、生物鑑定結果を仲間に託す。


########

種族:ポイズン・オキシック Lv55

技能:

 <毒鞭> 物理範囲攻撃 Lv48 【毒】付与

 <毒強化> 自身が付与した【毒】の効果とLvを上昇する

 <自動回復> 徐々に傷を回復する

 <強壮体> 体力と自動回復量上昇

########


「なんだこいつは…"悪魔の塔"最上部のボスよりやべえ…」

「そいつが三体来てるんだ!…逃げるぞ!」


普通のダンジョンは、最後に必ず存在するボスでもLv40程だ。

しかも、このダンジョンのような、無駄のないスキル構成ではない。

この森の植物は、フィーリの品種改良によって超強化されているのだ。

なお、基本的に移動手段を持っている。





今一番進んでいるのは、先頭に並んでいた、ギルド【ワークプレイス】だ。

場慣れしているメンツが多く、罠や危険な生物を回避しつつ進んでいる。

既に五階まで到達した。


しかし、ここで足止めされている。


「また来るぞ!防御魔法を多重展開して受けるんだ!」

「「「了解!」」」


息の合った行動で何者かの攻撃を防いでいる。

周りの壁などはひどく抉れているが、全員ほぼノーダメージだ。


「…やるな」


現れたのは、小鬼族と一緒に居た、ジェイドだ。

フィーリに戦闘訓練の場を与えてもらっているのだが…

それがこのフォレスト・ダンジョン五階だ。

良い相手に巡り合った事で機嫌が良い。


「お前達は質が良い。訓練に使わせてもらう」

「魔装・岩鎧!」

「そして…魔神化・炎羅!」


そう言うと、ジェイドが岩の破片に包まれ…

全身が赤熱する生命体に変身する。


「マグマ・ゴーレムか…?」

「いや、そんなものじゃないぞ!」

「俺の出番だ!」


########

種族:魔人 Lv120

状態:魔装 魔神化

技能:

 <炎羅> 自身のスキルを全て消失、【炎羅】のスキルを使用出来る

########


フラックがいつもの調子で鑑定する間に…

存在するだけで周囲を焼いていく存在が現れる。


「恐らくヤツは攻撃力が高い!攻撃力を下げ、耐炎だ!」

「「「了解!」」」


怯まずに挑む一向。





三十分ほどやり合った所で、"時間切れ"となる。


「お前たちの勝ちだ。先に進むと良い」


ジェイドは元の姿に戻り、道の脇へ移動して休憩する。


「いや…今日はここまでのようだ」

「ここまでキツかったのは師匠と魔女の姉さんの時くらいだ…」


死者はいないようだが、全員息を切らしている。

特に前に立っていた者はボロボロだ。

一発耐えて交代を繰り返していたので、均等に焦げている。


「途中で妙な動きをしていたのは何だったんだ?」


フラックがジェイドに質問する。


「あの状態になると全てを見境なく破壊したくなるんだが…」

「体を無理な方向に曲げる事で、それを防いでいる」


この特性には本人も苦労しているようで、なんとか制御しようとした結果のようだ。

なお、もし暴走しても耐えきれるように、強い相手にしか変身しないルールだ。


「次会った時には、別の魔神化を見せよう」

「先に進めないじゃないか」


お互い軽く笑った後、【ワークプレイス】一行は入り口に向かって行く。

階の入り口か出口に着けば、そこから外に出れるのだ。


かろうじて五階に辿り着いた他の者も居たのだが、魔神化を使っていないジェイドに追い払われる。

突然現れて進行妨害する事から、【黒の悪魔】と呼ばれるようになった。

ゲームではイベントを起こすと、ダンジョンにジェイドが現れます。

一度倒すと魔神化状態で現れるようになり…全ての魔神化状態を倒すと仲間になります。

まだクリアしていない階か、最下階のみの出現になっているので…

道中苦戦した後に出くわすと、かなりきつい相手になります。

なお作中の通り、効果時間があるので耐えきっても勝てます。

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