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35.勇者達の経験値稼ぎ

そろそろ記憶にない部分が結構出て来たので、別のイベントの一部差し込みなどで補完していきます。

「Lv40未満で勇者パーティと戦いたい者は居ませんか」


早朝から妙な募集を掛けているのはフェイリアだ。

ここはギルド【黒爪】の依頼カウンター近くである。


ギルドマスターから直に依頼がある時は、大体厄介なものだ。

しかも勇者と言えば、世界の危機を救える程の戦力保有者の称号である。

それを分かっているのか、人は多いが誰も名乗り出ない。


パペット三人組もそこに居るが、40どころか20代なので我関せずだ。

リコラディアの通貨変換に付き合って固まっていただけだ。

依頼カウンターすぐ横の為替カウンターへ来ている。


「ジア、ソーンが上がったから、ここでアグラにして」

「12ジアと5ソーンだから…手数料を引いて90アグラだな」

「リーネとストリアは微妙だけど…端数になるから変換して」

「ほう!こいつは驚いた。その分は430アグラになるな」


男性陣が頭を抱えている所を尻目に、リコラディアは通貨変換していく。

変換時に1未満の額、"端数"が出るのだが…

大きな単位以外は、僅かでも端数があればそれが1とみなされる。

こういった技を多数駆使すると、それだけで食べて行けるようになるのだ。

額が少ない今のうちが一番恩恵を受けやすいテクニックだ。


「今回の分は、合わせて520アグラだ」

「嬢ちゃん、仕事に困ったらうちに来な。鍛えがいがありそうだ」


受付の男性は可能性を見出したらしく、布石を打っておく。

なお、何も考えず変換した場合の収入は490アグラで、早くも効果が出ている。


変換したお金をしまい終わると、そこにはフェイリアの姿があった。


「情けない話ですが…あなた達に依頼を受けてもらいたいのです」


依頼書には、エクストリーム・クエストと書かれている。

討伐対象は勇者パーティとなっていて、よく分からない詳細が書いてある。

・参加パーティは全員Lv40未満

・【氷の魔女】の情報を持ち帰る事

・勝敗は問わないが、命の保証はしない

・鑑定系のスキルやアイテム使用禁止


エクストリーム・クエストというのは、一言で言えば高難度の依頼である。

適性レベルより上でも苦戦するような内容が多い。

今回はLv35前後が適性のようだ。


「俺たちはまだLv30ですらないんだが、死ぬだけじゃないか?」

「流石にレベル差があり過ぎるので、ティスラと…これを付けます」


そう言うと、フェイリアは何かを取り出し、鑑定結果を見せる。


########

種族:シャドウ・パペット(量産型) Lv30

技能:

 <闇の眷属> 保存した影のスキルを使用出来る

 <自動供給> 自身を所持している対象にマナを供給できる

########


「「「パペット…?」」」

「フィーリに技術を借りて、マナ供給用のものを作ってみました」


とても小さいパペットで、十センチ程度の大きさしかない。

とりあえず相性が良さそうなリコラディアが受け取る。

見た目はフェイリアそのものだが、妙に表情豊かで、よく動く。


「私の所持するマナを自動で吸い取るので、戦闘中は好きなだけ使ってください」


新たなパペットの説明が終わったところで、ティスラが合流する。

今までの流れを説明し、強制的に来てもらう事になった。


「勇者って…さすがに無理が…」

「レベルはあなた達より高いですが、それだけです」

「全力で戦えば丁度良い具合でしょう」


Lv120のボルテック・フォクシーとやり合った者でも拒否反応を示す。

しかしフェイリアは容赦せず、四人とパペットを送り込む準備をする。


「今回は情報が欲しいだけなので、生きて戻る事を優先でお願いしますよ」


一行は覚悟を決めて現地へ移動する…





移動した先は、見た事のない平原である。

前方に四人が待機しているようだ。

その内の男性一人がこちらに近付き、名乗る。


「勇者パーティ代表、ライザ。言うまでもないが勇者だ」


パペット三人組は代表を決めていなかったので、やり取りが上手そうなクエラセルに任せる。


「代表のクエラセルだ。特に名乗る二つ名等は無い」


名乗り終わると、そこに仲間が合流し、構える。

よく分からないまま戦闘に入るようだ。


相手側には、ライザと名乗った勇者と、明らかに近接戦闘の戦士と思われる男性が前に居る。

その後ろに二人の魔法役らしき女性が二名という配置になっている。


こちらはクエラセルとティスラを前に出し、それをサポートする形で行く。


「何か弱そうなやつらだな、あれで一気に終わらせようぜ」

「…ま、いいわ。フリーズ・シール!」


戦士のような男性の剣が光を放つ。

以前、ボルドーとデスピオが使ってみせた技のようだ。


「リコラディア、土を頼む」

「よく分からないけど、アース・シール!」


色々と教授してもらった結果に加え、日々の練習で魔法剣が使えるようになったのだ。

ただし、まだ土しか使えない。


「これでどうだ!」


なんと先にクエラセルが仕掛ける。

当たるはずの無い所で剣を地面に突き立てると、地面から土の棘が現れる。


「チィ、タイミングを失ったわ」


先にダメージ源を見せる事で、相手に回避させ、攻撃を防いだのだ。

シール系の効果は短いため、よほど精通しない限りは一度踏みとどまると効果切れだ。


「…こちらも行くとするか。ウインド・アーマー!」

「それは頂きます!」

「なに!?うわ!」


勇者のライザは、風の鎧を作るが…ティスラに剥がされる。

風の鎧で敵を吹き飛ばして攻撃する手はずが、崩れた。

逆に、ティスラが風属性の槍を作り出し、吹き飛ばす。


「これならどう!ファイア・レイン!」


隙が出来たところで、リコラディアが範囲魔法を使う。

戦士風の男性と後ろの二人をまとめて狙う。


「嘘だろ…やべえ、死ぬ!」

「ヒール・サークル!」


後ろの女性のうち、一人の足元に大きな円状の模様が浮かび…

計三人がその円の中に入るようにする。

ダメージを回復で打ち消しているようだ。

しかし回復が追い付いておらず、ダメージを受けている。


「次はこっちの番だよ!」

「ツイン・アイシクル・ランス!」


巨大な氷の槍が二つ出来上がり、クエラセルとリコラディアの方へ向く。


「よし、これなら攻めれる!」

「や、やば…一旦回避!」


クエラセルはそのまま戦士風の男性に張り付き、ラッシュをかける。

防戦一方の男性は、後ろからの氷の槍を警戒し、思うように攻められない。


「エア・カッター!」

「効きません!」

「サンダー・ライト!」

「それも効きません!」

「バカな…ぐあっ!」


なんと、ライザはあっさり戦闘不能になる。

ティスラの風の槍によって遠くに運ばれ、回復出来ないまま攻め続けられたのだ。


「くそ、氷の槍が来る…一時離脱だ!」

「合わせて回避!」


戦士風の男性とクエラセルはお互い氷の槍をかわす。

リコラディアも距離を取ってかわしたようだ。


「おい、回復を頼むぜ!」

「…出来ないんです」

「はあ?まだ一回しか回復してないだろ?」


回復担当の女性はいつの間にか、実質戦闘不能になっている。

今まで存在感を消していたグリンによって、マナを吸い尽くされたのだ。

ギギとの戦いによって、まず回復役を潰すことを学習した。


「後ろから行きます!」


ティスラが合流し、前後から挟む形になる。


「…これはダメね。負けたわ」

「確かに…」

「ちくしょー!」


一行は勝てるとは思っていなかったのだが、普通に勝ててしまった。

相手が降参すると、フェイリアと知らない人物が現れる。


「まさかこの四人が負けるとは…」

「世界は思ったより広いという事です。それでは失礼しますよ」


フェイリアは謎の人物とあまり語らないまま、一行をギルドに連れて行く。





「どうです?思ったよりは強くないでしょう」

「勇者パーティはあれでも平均Lv45ですが、普通はあんなものです」

「「「「えっ!?」」」」


フェイリアは段違いのレベルを口に出すが、事実として勝っている。

実は勇者パーティはまだ若いメンツで、しかも無茶な戦いを経験していない。

いわゆる"格下狩り"の数をこなした者たちだ。

なので、予想外が重なると崩壊してしまうのだ。


この依頼、本当は勇者パーティの調整戦闘で手頃な人材を要求されたものだったのだが…

そこに【氷の魔女】を調査するメンツを送り込んだのだ。

今回は相手側からすれば、"経験値"にボコボコにされた事になる。


今回分かった事は少なかったが、情報を共有していく。

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