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34.お宝の眠る地

「エルマはジア、ドラタはソーンにして。明日アグラにするわ」

「はいよ。…お前本当に新人か?」


早朝から謎のやり取りが行われる。

ここはギルド【黒爪】の、為替カウンターである。

窓口の男性と会話しているのはリコラディアだ。

通貨に関する知識があるようで、交換レートを先読みして、共通通貨のアグラに変換する。

うまくやれば便利な共通通貨に纏められ、かつ儲けで手数料を無かった事に出来る。


「さっきからレートの表を見てるが…俺はさっぱりだ」

「交換するたびに手数料が発生するのに黒字…?」


男性陣は無欲なので金勘定が苦手だ。

一応頑張ってはみるものの撃沈する。

とりあえずは通貨の名前を憶える努力をした。


すぐ近くにある依頼カウンターで、いつの間にか見た事のある顔が喋っている。

好みの依頼が無いかを聞いているようだ。


「デスペラードをくれ」

「今日はこんなのがあるよ。お姫様誘拐」


凄い言葉が出て来た。

依頼を受け取るのは、歓迎会で魔王を自称していたザウドだ。

今日はどこにでも居そうな青年スタイルだ。

クエラセルが質問してみる。


「誘拐って…そのままの意味でか?」

「もちろん。ああ、一応言っておくけど公式な依頼だからな」


デスペラード・クエストというのは、無法者を演じる"必要悪"納品依頼である。

今回の依頼は、強そうな魔物の姿で姫を誘拐し、宣戦布告するのが内容だ。

依頼主は敵を討伐する為という理由を作れ、兵士の教育等を高水準で行う事が出来る。

タイミングを見て強そうな魔物の死体を買い取れば、民衆が勝手に踊ってくれるという作戦のようだ。

なお誘拐された姫は、こっそり返却される。


「俺は外見や声まで好きなように変えられるから、向いてるって訳さ」

「「「はあ…」」」


世の中には知らない事がたくさんあるということを再認識する。


一行は目的を思い出し、今日のオススメ依頼を聞くためにカウンターに並ぶ。

前にはすでに会話している者が居る。


「近くて高い依頼をくれ」

「…どうぞ」

「便所が近い高齢者の介護依頼…くっ、行くぞ!」


どう見ても冒険者用でない依頼もある。

しかし一時凌ぎ用としてはそこそこ需要があるのだという。

報酬があまりに安い場合は、飲食スペースの食事無料券などが付いてくる。


「あら、新人さんたち。今日はこんなのがありますよ」

「この時期珍しい、【メテオリット砂漠】の依頼です」


先読みしているかのようにマルチタスク・クエストの依頼書を寄越す。

この依頼書の中の条件を一つ以上満たせば達成だ。

・【横暴鉱】生物鑑定結果の納品

 →110リーネ

・【メガバイツ・ラット】四体討伐

 →170ストリア

・【燃える氷】一つ納品

 →10,000ストリア

・【ミラー・ウイング】一体討伐

 →24,000リーネ

・【メテオリットの破片】一つ納品

 →400,000グラシア


########

種族:メガバイツ・ラット Lv21

技能:

 <鋭い歯> 物理単体攻撃 Lv14

 <進化する歯> 自身の攻撃回数分、攻撃力アップ

########

種族:ミラー・ウイング Lv100

技能:

 <光反射> 敵の視覚を使う攻撃の命中率を大幅低下

 <砂嵐> 風/土属性全体魔法 Lv60 【命中率低下】付与

 <速度増加> 命中率・回避率が上昇する

 <属性耐性増加> 全属性耐性が増加

########


「マスターからの伝言ですが、最後の依頼は無視してください」

「存在しない物の納品依頼…と聞いています」


一行は不思議に思うが、前回のボルテック・フォクシー討伐依頼の十倍以上の値段が付いているので、そもそも達成不可能だと見当をつけている。

初めての地なので同行者を探していると…


「いいもの持ってるじゃん?」

「「「びっくりした!」」」


筆頭問題児、クオが後ろから現れる。

知った仲ではあるので、初めての地に不安がある事を話すと、あっさりついて来る。

個人的に受けたい依頼を追加するようで受付に行く…


「は、はあ!?バカなんですか!」

「なんだよー 誰もやらないから良いじゃんよー」


よく見えないが、ろくでもない予感がする。

一行は簡単な目的を達成して帰る事を決意する。





新たな地、【メテオリット砂漠】に着いた。

やはり不人気スポットであるが…

地中の珍しい鉱石が表に出て来ているので、拾うだけで資源を得られる珍しい場所だ。


「何だこの砂漠…寒くて暑いぞ」

「足元凍ってるんですけど…」

「この砂、魔力を含んでいるようです」


やはり様々な意見が出る。

氷の魔力を含んだ砂によって地表は冷やされ…上から砂漠そのものの直射日光が降り注ぐ、体調を崩しやすい場所だ。

自然にこうなったとは考えられないので隕石説が有力なのだが…

証拠がないので、隕石の証拠を持ち帰る依頼があるのだ。


「んじゃ後はよろしく!空は見ちゃダメよん」

「「「ええ…」」」


当たり前のように空中を走っていくクオ。

遠くに飛んでいる鳥のようなものへ向かっているようだ。

いきなりパペット三人組は置き去りにされる。


「ま、まあ…落ち着いて片付けて行こう」


クエラセルは特殊な地形に慣れるため、少し動いてみて感覚を掴む。





あまり生物を見かけないが、そのまま歩いていると何かを見つける。


「ねえあれ、メガバイツ・ラットじゃない?」

「みたいですね。どうしますか?」


離れた所にある岩陰にターゲットを発見する。

地面が冷えているせいか、毛がモコモコしている鼠のようなものが居る。

何かを掘っているようだ。


「なあ、この場所なら、足元の砂を使って氷魔法を使えないか?」


クエラセルが妙案を出す。その通りならマナの節約になる。

しかし、リコラディアは首を振る。


「…確かに魔力は感じるんだけど、上手く使いこなせない感じ」


グリンは密かに魔法石として使えないか試すが、ダメだったようだ。


「それならいつも通り行こう。まず離れた所から魔法を撃って削ってくれ」

「俺は走ってきたやつを食い止める」


そう言って戦闘しようとした瞬間、何かが起こる。


ゴキゴキゴキ…


「「「キー!」」」


なんと岩が動き、メガバイツ・ラットを捕まえたと思うと、それらを一つの塊にする。

逃走成功した個体がこちらに向かってくる。


「鑑定するので、メガバイツ・ラットを頼みます!」

「分かった、任せろ!」

「範囲でやるから、ちょっと耐えてて!」


役割を分担し、まずは鑑定する。


########

種族:横暴鉱 Lv60

技能:擬態

 <強制労働> 鉱石を発見できる対象に【用】付与

 <採掘指示> 【用】が付与された対象に鉱石を採掘させる

 <解雇> 採掘した対象の【用】を解除する

 <用無し> 【用】が解除された個体を【栄養玉】に変換する 

########


「これが依頼の対象…凄まじい生態でした」


グリンが情報をメモしている間に、もう一方も方付いたようだ。

逃げ出すのに精一杯で、好き放題出来たのだという。

岩の化け物に狙われないよう、距離を取りながら来た道を戻る。





「そういえば、クオさんどこ行ったのかな」

「ここでーす!」


砂の中から飛び出してくるクオ。

いつも突然現れ、びっくりさせるのだが…今回は違う意味でびっくりする事になる。


「新人達よ、これに刮目せよ!」


クオは、薄赤い氷を取り出す。

光にかざすと燃えているように見えるものだ。


「これが【燃える氷】。なかなか綺麗でしょ?」

「そしてこれが、【ミラー・ウイング】の翼でーす」

「さらにさらに、意外とレアな【湖の薄氷】がこれで」


バッグからどんどんアイテムが出て来る。

クオが最初に向かって行った鳥のような生物が、ミラー・ウイングだ。

しかし、既に素材になっている。


一行はレアアイテムの実物を見せてもらった後、ギルドに戻る。





「これを見るのだ、愚かな受付係よ!」


クオはバッグの中身を全て取り出し、依頼カウンターの女性に見せつける。


「はあ!?何て言うか…コメントが出てきません」

「特にミラー・ウイング、私の時は一日掛かりでやっと勝てたんですけど」

「だから大丈夫だって言ったじゃん?さあ、支払いを済ませたまえ」


パペット三人組は、共通通貨支払いで、百二十万アグラという信じられない額を見る。

なお、三人組の収入を換算すると、およそ四百アグラだ。

これでも破格の報酬なのだがショボく見えてしまう。

ゲームでは、クオ編で凄まじい金額を稼ぐイベントをやるのですが…

殆ど何かの弁償代になるので手元に残るのは常識的な額になります。

たまにギャンブルとかのしょうもない無駄遣いで稼ぐハメになったりもします。

数値がガンガン上がっていく系が好きな人は向いてそうなストーリーでした。

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