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30.雨中反省会と水中奇策

本日、イスカ領は急な悪天候に見舞われる。

といっても雨風が強いだけで、家で大人しくしていれば問題ないレベルである。


今日の舞台は、【迷いの森】にある魔女の住居だ。

パペット三人組が丸形テーブルを利用し、何かを書きながら話し合っている。


丁度外に出られないので、前日の戦闘の反省点を確認し…

戦闘方法について見直しを入れているのだ。

幾つかのアイテムも並べられている。


「気付いたんだが、俺達は誰か一人欠けると持ち直しが厳しい」

「「確かに…」」


クエラセルが、今の問題になっている部分を挙げる。

人数が減ればその分厳しくなるのは当たり前だが、一人分の損失がでかすぎるのだ。

前回はグリンが最初に戦闘不能になった事で回復を断たれてしまった。

そこから不意の攻撃を受け崩壊してしまったのだ。


「そこでだ…まず俺自身の対策を考えてみたんだが」


クエラセルは、テーブルの上にある石のような物を持って見せる。


「攻撃と回復、それぞれの魔法石を持てば、安定度が上がると思うんだ」

「それはそうだと思うけど、使う暇あるの?」

「前回のように、皆を守り切れない時に使うんだ」


つまりは、どうせ守れない状況なら、敵の妨害をする事で引き留めようという発想だ。

同時に、リコラディアかグリンが戦闘不能になった時、立て直せる可能性がある。

特に森の外でグリンが戦闘不能になると、すぐに立て直せないと不味い。

この案に反対する者はいなかった。


「それなら、わたしも回復の魔法石を持てば良い?」


リコラディアが案に乗る。

今まで火力役前提だったので、回復や補助の魔法を作っていないのだ。


「無いより良いとは思いますが…」

「ボクからの提案として、状態異常を考えてみては?」


グリンがリコラディアのスタイルを分析した案を出す。

今までは威力重視だったので、前回戦ったギギのような魔法が効きにくい相手では仕事が無くなってしまう。

しかし状態異常付与は魔法の耐性に関係ないのだ。


「そうね、コストが重くなるから避けていたけど…この後作って試してみるわ」

「まずは、毒、麻痺あたり…かな?」


リコラディアはさっと作って試せそうなものを書き出し始める。


「ボクは今でも結構手一杯なんですが…一応攻撃系魔法石を持ってみます」


グリンは開幕鑑定に始まり、マナ吸収、マナ配布、回復、サポート等…

戦闘中の仕事があり過ぎるのだ。

今回で回復の負担が下がる可能性があるので、その隙に攻撃を差し込めるようにする。


「あと、装備とそのスキルも新しい物を考える頃かもしれないな」


クエラセルが冒険者目線で指摘する。

…と同時に何者かが訪れる。


ギュイーン!

チャリチャリチャリン!


この住居の呼び出しシステムである、ドーム状の装置が反応し、音を出す。

扉の取っ手に特定周期でマナを流すと、装置の中に風が起こり…

中の硬貨が飛び上がって音を出すのだ。

これを起動出来るのは魔女の知り合いだけなので、安心して扉を開ける。


「こんにちは、皆さんお揃いで」

「よく分からないですが、私も居ますよー」


フェイリア…と、スライムが付いていないクルタだ。

この珍しい組み合わせで、どうやら魔女を訪ねてきたようだ。

しかしパペット三人組も見ていないのでそう伝える。


「留守でしたか。まあ、大丈夫でしょう」

「もう一つの用件ですが、今日もグリンさんを借りて良いですか?」

「ボクは大丈夫ですが…」

「今日は、新たな体験と、面白い実験をする予定です」


フェイリア、クルタ、グリンという謎の組み合わせでどこかへ出発する。

クエラセルとリコラディアは残っている。


「なあ、ちょっと恥ずかしいんだが…今だから言いたい事がある」

「ん、なに?」


クエラセルがちょっとモジモジしながら本を取り出し…

ページを少しめくり、挿絵がある部分を見せる。


「魔法剣…って出来そうか?」

「は…え?剣から氷出したりするあれ?」

「そ、それだ…」


今まで異常なやり取りが多数あったので、

これなら頑張れば出来るんじゃないかという考えである。

もし出来れば、戦術に幅が出る。


「やろうとした事が無いから何とも…」

「だよな、変な事を聞いて悪かった」


気を取り直し、引き続き二人で戦闘スタイルの見直しを行う。


-------------------------------------------


一方こちらは、フェイリア、クルタ、グリンの謎パーティである。

まずクルタに"裏世界"を見せている。

グリンは一度来ているので、周りをよく観察している。


「な、何ですかここは…ひゃっ!足場が無い!」

「大丈夫です、見えない床があります」


クルタが常人のリアクションをする事で、グリンはほっこりする。

フェイリアがひとしきり説明した後、少し休憩して新たな世界について話し始める。


「これでお二人は"裏世界"を知りました」

「今日見せたいのは、"裏の裏世界"です。行きますよ」


フェイリアがそう言うと、上空に見える元の世界だったところから巨大な黒い爪が出現し…

思いきり腹を突き刺される。

痛みはないが、グリンのほっこり成分は弾け飛んだ。





「起きてください、着きましたよ」


クルタとグリンは揺すられて目を覚ます…


「「!?」」


しかし言葉が出ない。

別世界過ぎる所に出たのでコメントすら出て来ないのだ。


「ここが、"裏の裏世界"です。息は出来ますよ」


そう、いきなり全面水中のような所に居るのだ。

水はキラキラ輝きとても眩しい。

フェイリアが言うように息は出来るようだ。


「この水のような物は、全てマナです」

「今回重要なのは…足元を見てください」


クルタとグリンは言われるままに下を見る…

謎の巨大すぎる、黒い塊がある。


「見えましたね。あれが今日の実験対象…"邪神"です」

「「はい!?」」


とんでもない単語が出て来た。

フェイリアが言うには、森の魔女と手を組んで邪神を破壊しようとしているそうだ。

しかし計画が行き詰っているので色々試している。

森の魔女は大魔法を組み上げてこれを取り除く道を選び…

フェイリアはその協力と、別の案を試すという担当分けなのだ。


「細かい話は後にして、まずクルタさんから行ってみましょう」

「え、まさかアレを…手懐けろと…」

「ダメなら別の案です。とにかくやってみてください」


クルタはスライムと心を交わした時のようにやってみるが、当然上手く行かない。

スライムの時は拒否されても、"あんた誰だ"のような反応が返るのだが…

反応すらないようである。


「全くダメですね…応じる気が無いというか」

「ふむ…ありがとうございました。では次、グリンさん」

「は、はい」

「あれのマナを全て吸い取れるか、やってみてください」

「ええ…」


無茶過ぎる要求であるが…一応やってみる事にした。


「ダメですね、全く吸い取れないみたいです」

「なるほど、ありがとうございました」

「今日は一旦戻りましょうか」


言うと、やはり爪のようなものが出現し、腹を貫かれる。

グリンはもっと何か無いんだろうかと思いつつ気を失う。





「戻りましたよ、起きてください」

「追加で試したい事が出来たのですが」


またフェイリアに起こされた二人は、森に戻っていた。

フェイリアは腹を押さえるような動作をした後、【黒爪】を展開する。

右肩から巨大な黒い鉤爪が現れ、異様な雰囲気を放つ。


「ひゃっ!何ですかそれは!」


クルタが驚くのは当然だが…

グリンは一度見ているのだが、この雰囲気は慣れない。


「先程と同じ事を、これに試してみてください」


クルタは恐る恐る、爪のようなものと心を通わせる…

同時に、グリンもマナを吸収してみる。


「あら?…その爪ちゃんとお友達になりました」

「マナも吸い取れるようです」


とりあえず結果を報告するが、二人は意図が分かっていない。


「ありがとうございます。貴重なデータが増えました」

「お二人には話しておきますが、実は私も邪神です」

「「はあ!?」」


とんでもない情報を持たされた二人であった。

しかしまだ追加情報がある。


「先程の巨大な邪神を破壊しないと、この世界が汚染されて終わってしまいます」

「一緒に策を考えて行きましょう」


フェイリアはそう言って一礼した後、消えて行く。

残された二人は呆然とするしかなかったという。

ゲームでは黒爪ギルド最後のフェイリア編で明らかになる話ですが、話の進行上で不都合が起こるので順を入れ替えています。

ちなみに別勢力で邪魔をすると、フェイリアと戦えるようになります。

詳しくは書きませんが、倒してしまうと胸糞エンドになります。

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