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28.増える謎店舗

「それでは審査を始めます」

「今から申請のあったものを読み上げます」


ここは、イスカ領にある農村トリナムである。


ここに物件を立てる場合は、村に申請して許可を得る事が必須だ。

村の代表数名がまず審査し、合格であれば建築予定地周辺の住民に了解を取る。

その住民からも許可が出れば建築を始める事が出来る。


担当者が今回の申請を見ているのだが…


「一つ目、【ズバシュー屋さん】。商店で、販売物は…」

「"サッとしてスッときてズバシューできるもの"…何だこれ」


よく分からない申請ばかり来ているのだ。


「二つ目、【たましい屋さん】。これも商店で販売物は…」

「"輝かしき魂を育むもの"…怪しすぎる」

「三つ目、【どろみず屋さん】。商店で販売物は"どろみず"」

「四つ目、【シムトピ屋さん】。商店で販売物は"ムエイル"」


読み上げている担当者が投げやりになってくる。

しかし全員が固まっているので問題ないようだ。

復帰した物が声を上げる。


「イタズラでしょうか?」

「いえ、全て申請時に本人が顔見せしているはずです」

「うーむ…そうだ、販売物を見に行きませんか?」

「確かに、何か分かれば判断しようがありますね」


【きらきら屋さん】の実演により、妙な申請でも審査する事になったのだ。

村発展のチャンスを逃さない為なら一丸となる大人達。


申請者は、申請が終わるまで仮設宿で宿泊出来る。

今回の申請者は全員そこに居るようだ。

まずは【ズバシュー屋さん】の申請を行った者の所へ行く。





「おう、俺が申請したタルナンドだ。」


隻眼の男性が姿を見せる。

審議中に判断が出来なかった事を伝える。


「新店舗の商品を見せて貰いたいのですが」

「そういう事か、良いぞ!当面はこいつがメイン商品だ」


そう言って、タルナンドと名乗る男性は、一つの剣を出す。

鑑定スキルがあるようで、その結果を開示する。


#########

品名:ダンジョン用の剣

特性:

 <罠察知> 危険な罠を発見・回避しやすくなる

 <気配察知> 動くものを察知しやすくなる

 <緊急回避> 不意打ち攻撃を察知しやすくなる

#########


「冒険者が好きそうな剣ですね」

「あんた分かってるな。冒険者用の武器を作ってみたくてな」


何を売るかが見えてきた所で気になった事を聞いてみる。


「店名の"ズバシュー"とは何の事ですか?」

「剣で敵に斬りつける時、スバシューとするだろ?それの事だ」


この意味だけは誰も分からなかったが、審査は通ったようだ。





「ハァイ、ヘルリットです」

「店舗申請の件で…ヒィ!」


続いて【たましい屋さん】の申請を行った者の所へ行ったのだが…

そこには、魂を刈り取りそうな者が居た。

怪しげな者が居た時の為に、鑑定アイテムを持っているので使用する。


########

種族:死神 Lv100

状態:死亡(200)

能力:命の逆転

技能:

 <死の先> 自身のLvの二倍の回数、死亡する

 <魂回収> 死亡回数分以下のLvを持つ魂を所持出来るが、死亡回数-10

 <魂の記憶> 所持した魂のスキルを使用できる

 <魂鎌> 物理単体攻撃 Lv90 敵を倒した場合、同Lvの【魂】に変換する

 <自己崩壊> 【死神ルール】を破った場合、能力消失

 <装備鑑定> 武器と防具の詳細が分かる

########


ヘルリットと名乗った者は、気にせず会話を続ける。


「アハハッ、別に無理やり魂取ったりしないから安心してよ」

「折角来たんだ、中に入りなぁ」


ビクビクしながら中に入る大人達…

中には小瓶が大量に置いてあり、キラキラ輝く物が入っている。

しかしそれは売り物ではないようだ。


「まずはこれを売ろうと思ってネェ」


やはり鑑定スキルがあるようで、その結果を開示する。


#########

品名:対異常の鎧

特性:

 <毒無効> 毒状態にならない

 <麻痺無効> 麻痺状態にならない

 <先見の備え> 状態異常を無効にした時、体力を少し回復する

#########


「生存率重視の防具…ですかね」

「ソレ!それだよ!長生きしてもらわないと」


ヘルリット曰く、生物が生き残って高Lvの魂になると、魂回収が楽になるのだそうだ。

勘違いされがちだが、死神はアンデッド等に魂を不正利用されないように管理している存在だ。

死神族全体で制定されたルールがあり、破ると死んでしまう。


「店名から、魂を売買するのかと思いました」

「そんなコトしたら存在を消されてしまうのさぁ」


理由は妙だが、住民にとってはプラスになるので、審査は通ったようだ。





「はい、イリスですが…?」

「おお…」


【どろみず屋さん】の申請を行った者の所へ行ったのだが…

思わぬ美女の登場と、謎の良い匂いに、大人たちは気が緩んでいる。

これだけで申請が通ってしまいそうな勢いだったが、目的を思い出す。


「店舗申請の件で質問が…"どろみず"とは何でしょうか?」

「私達は泥水にしか見えないのでそう呼んでいますが…」


言いかけて、実物がある事を思い出す。

カップに"どろみず"を入れて持ってくる。


「これです、特に人間族の方には人気らしいのです」

「どれどれ…」


見た目は確かに泥水である。

木の実を煎った物を煮出した汁に、少量のハーブを加えたもので…

香ばしい匂いと独特の旨味がある飲み物だ。


「これは!…癖になりそうです」


恐る恐る口にした者は、途端に心を奪われたようだ。

別の意図もありそうな気はするが、審査は通ったようだ。





「さて、最後ですが…」

「…」


【シムトピ屋さん】の申請を行った者の所へ行ったのだが…

そもそも会話が出来るのか疑問の相手である。

人ではないので鑑定アイテムを使う。


########

種族:サンダー・スライム Lv100

能力:シムトピ

技能:

 <放電> 雷属性範囲魔法 Lv100

 <複数指定> シムトピのムエイルを対多数に送る事が出来る

########


なんと、スライムである。

実はクルタの周囲に居た低レベル個体なのだが、特殊な能力を持っている。

"スライム会議"で許可が出たので、はぐれて行動している。

低レベルといっても、スライムの中ではの話だ。


「会話、出来ますか?」

「【シムトピ屋さん】の販売物を確認したいのですが…」


すると、その場の全員の頭に、手紙のイメージが出て来る。

そこには文字が書かれている。


『これ 売る 伝言 早い 遠く 届く』


つまりは通話能力の強化版で、遠距離相手に一瞬で手紙を送れるようなものだ。

送る毎に料金を取っていくスタイルで行くようだ。


「今回の申請された商店で一番重要な気がしますね」

「手紙運送の業者が潰れるんじゃ…」


それはそれ、これはこれという事で、審査は通ったようだ。


結果、本日は全ての申請が通り…謎の四店舗が建つ事になった。

謎のお店シリーズですが、使う予定でない物も勿体ないので登場させました。

まだまだありますが…そこはタイミングを見てですね。

ちなみに【どろみず屋さん】はプレイヤーが直接利用する施設ではないのですが、多数の材料を売ってあげると売り上げの一部が貰え…最終的にドン引きするレベルで稼いできます。

ミツグ君が多かったのでしょう。

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