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25.破壊神ロークスと小鬼語教室

「行け、大樹の巨人タイタニア!村を破壊しろ!」

「了承した」


ドガアァァ!


一瞬で村が、"村だったもの"に変貌する。


「素晴らしい破壊力だ」


今日、イスカ領の朝は騒音から始まる。

【迷いの森】近くの村では、二百メートルを超える巨人のような生物が存在している。

その巨人の肩に何者かが乗り、村を破壊するよう指示している。


「最後は、トリナムか」


最近話題の村に進路を向ける。

実はこの人物、よく知る者である。


「タイタニアよ、ロークスの名で命ずる。トリナムの空き家を、破壊せよ!」

「了承した」


なんと領主のロークスである。

実は廃村や使われていない施設等を破壊して回っているのだ。

これで更地を確保し、移民用の住居スペースにする計画だ。

人の手でやろうとすると費用もバカにならないため、魔女から巨人を借りている。


実はロークス、若い頃召喚士を目指していたのでテンションが上がっている。

巨大な生物に乗って指示を出すのが夢だったのだ。

それなりに魔法が使えるのは、召喚士に必要なものだったからである。

本人の希望で、魔法によって肩に接着されている。

逆立ちしても落ちない強度だ。


「お、おい、何だあれ…こっちに来るぞ!」

「急いで逃げれば助かるかもしれん、走れ!」

「スゲー!乗りたい乗りたい!」


近隣住民には事前に通達したのだが、他領から来た冒険者は知る余地もない。

村の子供達はむしろ外に出てはしゃいでいる。


残念ながら他の者は"安全面を考慮して"という建前で乗せてもらえないのだが。


村のはずれにある空き家を破壊し、残るは村中にある一軒だけだ。

この巨人は細かな作業が苦手なのだが、対処法があった。


「リンク!」


なんと意識を同調させて、細かな動きを伝えられるのだ。


巨人は、空き家にそっと手を添え…

そのまま家の無い側に押し出すように、そっと倒していく。


「これで全部か…タイタニア、降ろしてくれるか」

「了承した」


ロークスは少し名残惜しそうに、巨人に降ろしてもらう。

その後、巨人は何かを待っているように待機する。


暫くして大きな木の箱を運んでくる者たちが現れる…


「タイタニア、この中に報酬の砂糖菓子を入れてある」

「了承した」


その後感謝を述べ、見送る。


実は巨体に見合わず、小さなものを愛でる性格で…

この砂糖菓子も自らが食べるのではなく、仲の良い妖精にあげるものだ。

自分では作れないので、お互い得意分野を利用したという訳だ。


なお、喋る言葉は「了承した」「拒否する」「可愛い」だけだ。


------------------------------


一方、【迷いの森】では…


「"ダー"が注意を向けて欲しい時の言葉で」

「"アージー"が敵という意味の言葉なので」

「"ダー アージー"は、敵が来たから気を付けろ、という意味になるのです」


スライムに包まれながら小鬼族の言語を解説しているのは、森の新入り、クルタだ。

同じく新入り、小鬼族リーダーのギギも傍で聞いている。

クルタの解説から、人の言葉を学ぼうとしている。

口は挟まないが、地面に何かを大量に書き、忙しそうだ。


「強調したい時は同じ言葉を続け…」

「"ダーダー アージー"とすると、意味は同じですが注意度や緊急性が高くなります」


クルタは言語を教わったわけではないが、生活を共にして"なんとなく"分かってきたのだ。

魔女もさすがに小鬼族の言葉は知らないので、質問する。


「この間ギギが他の子に話していたのはどういう意味なの?」


森に住む許可を出した時、"ガ ニウ ラ ミネ ガ"という言葉を使った。


「言葉だけならいくつか分かりますが…」

「"ガ"は、物や人をさす時の意味、"ミネ"は与えるという意味です」

「"ニウ"と"ラ"は分かりません」


そう言うと、ギギは何かを書いていた手を止め、声をかける。

地面に小鬼族がよく使うテントの絵を描く。


「ダー ニウ ガ」


指を指してそう言う。


「多分、"ニウ"の意味を教えてくれています。家…かな?」


次に、ギギはその絵の表面をつまみ…


「ニウ ラ ミネ」


クルタにそれを差し出す。


ギギは人の言葉を前から勉強しているので、"なんとなく"言いたい事が分かるのだ。

ただし自身からはまともに話せない。


「家を…渡す?」

「たぶん、あの人は家をくれる…みたいな事を伝えたんだと思います」


クルタが正解に近い訳を出す。

正解は、「あいつがお前らの住む場所をくれる」である。


「ガ ウー!」


ギギはクルタを指差し言うが…また新しい言葉だ。


「"ウー"は肯定やポジティブな気持ちを表す言葉です」


小鬼語学習は続く…





異文化交流が進んでいる中、はぐれて行動する者が居る。

森の道をひたすら進むのは透明なスライム。

以前、鑑定しようとしたグリンを震え上がらせた強力な個体だ。


何かに気が付いたらしく、道の行き止まりにある小さな泉に向かっている。


「…」


泉に到着すると、"あるはずの何か"を見つけられず、悩んでいる。

水を叩いてみたり、自身の形状を変えて器用に水をすくったりしてみるが何も起こらない。


「…!」


意を決して泉に飛び込んでみる。

が、やはり何も起こらない。


そのまま考えていると、泉の底に沈んでいく。

歴戦のスライムは色んな物を体に取り込むので水より重く、沈むのだ。


「…」


そろそろクルタの所に戻るか、と考える。

それと同時に泉の底に着いたと思うと…


「ひゃっ!…オールデリートちゃん?」


クルタの前の地面から、勢いよく飛び出す。

小鬼語学習で集まっていた全員がびっくりした瞬間だ。


「???」


飛び出してきたスライム自身も訳が分からない状態だが…

魔女はこのスライムに興味を持ったようだ。

ゲームでは、小鬼語が必要な所はギギを操作して、人語が必要な時はクルタを操作する妙なストーリーになっています。

対応しない言語の者で行くと、作中で話している小鬼語ような言葉で表示されます。

それ自体を理解すればそのまま進めますが。

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