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22.新たな住人とお金の稼ぎ方

先程までトリナムに居た魔女一行は、夕方も近いので【迷いの森】へ戻ってきている。

話が纏まり、大所帯の訳あり難民を受け入れることにしたのだ。

なおトリナムの方は珍しい組み合わせで、イスカ領主のロークスとフェイリアが二人で話している。


森の入り口まで行くと、整列して待機している集団が見える。

腕を肩まで青く塗っている小鬼族と、色黒の魔人族の男性が先頭に立ち、大勢の小鬼族がその後ろに居る形だ。

同行している自称王家の者、クルタが手を振ると、先頭の二人がこちらへ向かってくる。

お互い挨拶と紹介をするのだが、小鬼族とは言語が違うので話が通じない。

この中では一番理解しているクルタが簡単な紹介をしながら、通訳係になる。


「この子はギギといって、小鬼族のリーダーです。腕を青く塗って判別しています」

「場所を提供してくれた事に感謝している…と言いたいみたいです」


ギギは後ろを振り返り、小鬼族の群れに伝わるように話す。

小鬼族の言語は種類が少ないので、ジェスチャーで捕捉しつつ話すのだ。

クルタが少し分かるのは、単純な組み合わせが多いからだ。


「ガ ニウ ラ ミネ ガ」

「「「ウー!」」」


しかしこれは、クルタでも何を言ったか分からなかった。

後ろの小鬼族が嬉しそうにしている所から、今回の話が伝わっているようだ。


と、ここで静かにしていた魔人族の男性が口を開く。

ジェイドと名乗った以降は話を聴いてただけだ。


「派手に暴れても良い場所はあるか?」

「あ、あれはダメですよー!折角の拠点が…」


クルタが止めに入る。

しかし魔女はむしろ気になっているようだ。


「時間をくれれば、場所を用意できるわ。何か問題があるの?」

「実は戦闘用の能力が制御しきれない。その訓練に使える場所が欲しい」


ダンジョンを作るつもりで居たので、その中でなら好きに暴れていいと言うと満足そうにする。

完成後、徘徊する強敵役として放り込まれ、"黒の悪魔"という名で脅威認定される事になるのだが…後の話である。


「さて、そろそろ夕方だから…今日は拠点を作れる広場に案内するわ」


そういって魔女は、迷いの森へ新入りを迎え入れていく。

小鬼族はそれぞれ道具などを持っていて、すぐにでも拠点制作に掛かれそうだ。


-------------------------------------------


一方、マスター不在のギルド【黒爪】では…


「おい」

「…何だ」

「お前は間に合うのか」

「正直、出来てギリギリだな。そっちはどうなんだ」

「貯めていた分を合わせてギリギリと言った所だ」


普段喧嘩しかしないはずの組み合わせが揃っていた。

大剣を使う男性、ボルドーと…魔法を使う男性、デスピオだ。

二人揃って弁償代の返済を行っている最中だ。

今回はデスピオが話しかけたようだ。


「ならば丁度良い。この依頼に付いて来い」

「何でお前なんかと…」


ボルドーは嫌そうな顔をするが、見せられた依頼書には破格の報酬が書いてあり…

それだけでなく、買うとかなり高額な大剣もセットで付けるというのだ。


「な、何だこりゃ!…しかも討伐依頼か。討伐数は三百匹と多いが」

「魔法で一撃の相手だが、これだけの数だ。不意の攻撃を受ける可能性がある」

「つまりお前の壁をしろって事か」

「そういう事だ。来るなら報酬山分けで…大剣はくれてやる」

「ふん…まあ悪くねぇ」


討伐対象はライトニング・ローカストという雑食の昆虫だ。Lv15なので単体ならビギナーでもなんとか倒せる。

麻痺効果を持つ歯で攻撃してくるが、攻撃力・防御力共に大したことが無く、跳ねて接近してくるが移動もそこまで早くはない。

ただ、殆ど大群で現れるため、無策に突撃すると動けないまま餌にされてしまう。


何か必要な道具などは無いか話し合っていると、割り込んでくる者が居る。


「いいもの持ってるじゃん?」

「うわっと!クオさんいつの間に…」

「最近暇でしょうがないのさー。連れてけ!」

「元々あんたのせいで俺が稼ぐハメになってるんだ。分け前取るんじゃねぇ」

「黙っててくれれば、今日はタダ働きでいいよん」


このクオという女性はギルドのサブマスターなのだが、ギルド内で一番言動が軽い。

勿論実力があるのでその地位に居るのだが…やはり問題児である。

ボルドーに硬貨を踏ませて転倒させたのがこの女性なのだ。


「「まあ、いいか…」」


不安要素を大量に抱えつつも、戦力として頼もしいので納得させる力を持つ、珍しい人物である。

戦闘では様々な道具と小剣を使いこなす、いわゆる冒険者スタイルだ。

各自用意を整え、【夢幻の湿地】へと向かう。





現地に着くと、依頼人が待っている。

今回は依頼人が討伐数をカウントするので、気にせずに戦って欲しいという。

少しでも討伐効率を上げるための考慮である。

依頼人の住んでいる村が近くにあり、そこへライトニング・ローカストの大群が飛来して作物を荒らすので、とにかく数を減らして欲しいのだそうだ。


ボルドーを先頭、そこからデスピオ、依頼人、クオの並びで奥へ進んでいく。

少し歩くとクオが指示を出す。


「ちょいちょい、あれ見て」


脇道で葉をかじっているライトニング・ローカストを見つける。

よく見ると近くの草の影や…木の枝の上にも潜んでいる。


「こんなにすぐ見つかるって事は、相当居やがるな」

「魔法で一気に片付ける。距離を取ってから石を投げておびき出せ」


ここは全員デスピオの案に乗るようだ。

後退して距離を取る。


「トウセキ・アタック!」


クオがノリで技名を言うが、そんな技はない。

暫く待つと、先ほど潜んでいた集団と…実は木の上に居た大量のライトニング・ローカストが飛来する。


「うわ、キモい!寒気してきた!」


余裕があるのかクオは緊張感のない台詞ばかり発する。


「うるさい、今魔法で始末してやる」

「ファイア・レイン!」


道が火の海になり、こちらに到達出来なかった虫の死骸が出来上がる。

横から数匹飛んできたがボルドーが叩き潰した。

これで百匹ほどは倒しただろう。この調子で行けばすぐに終わりそうだ。


「流石ですね。この数をものともしないとは」


依頼人の評価が上がった。

しかし問題児は評価ではなく金勘定で動いているのだ。

続けてクオの指示で発見次第始末していくとすぐに依頼が終わった…のだが。


「ねえねえ、あれ欲しい」


クオが指差す先には…鈍く反射する卵のようなものが何個かある。

実はこれ、キノコの一種で、高価な薬の材料になるものだ。

敵を見つけてくれる功労者なので採取を許可する。


そして再び帰り道を歩いて行くと…


「ちょっと、あれ欲しい」


ツタからぶら下がっている豆の房のような物を指差す。

時間的余裕があるので、採取を許可する。


「あれも…」


最終的にかなりの量を採取して帰還した。

依頼人は苦笑いしていたが、迅速に依頼達成してくれたのもあって、評価は高いようだ。

この後は最寄りのギルドに寄って報告と報酬受け取りだ。





「ライトニング・ローカスト三百匹討伐、確認しました。報酬をお受け取りください」


カウンターにそこそこ重みのある袋をドンと置かれる。

ボルドーとデスピオは約束通り報酬を山分けし、大剣はボルドーがもらった。


「続いて、レインボー・マッシュルーム納品依頼の報酬がこちらです」

「それから、エイプ・ビーンズ納品依頼の報酬がこちらで…」


「「えっ?」」


先程の袋が小遣いのように、どんどん報酬の袋が出て来る。


「ふふん、やり方が甘いのだよ、若人達よ」


クオは満足げに腕組している。

実は珍しいアイテムの採取依頼を持ってきて、行きにチェックした後、帰りに採取出来るように仕組んだのだ。

【夢幻の湿地】の依頼は不人気最上位なので、"とりあえず依頼を受けておく"と言う事が出来るのだ。


ボルドーとデスピオは、やられた!と思っていた。

ゲームでは、ちょこちょこライトニング・ローカストの依頼があります。

範囲殲滅力と燃費のバランスチェッカーとして機能したとかなんとか…

大量発生イベントでは戦闘中にもガンガン入ってきて意外と苦戦します。

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